昼食はローマ市内にあるレストランが予定されていた。バスの駐車場から徒歩で向かう
がどうみても繁華街ではなく雰囲気は工事現場に近い。10人ほどの列の先頭が地下に
下りていき、私たちも付いていくとそこはレストランになっていた。壁は石垣のようになっ
ている以外、普通のレストランと変わりなくテーブルと椅子が並べられている。
つまり、この店は遺跡を改装したものだった。原型を残したままという条件付きだろうか、
遺跡の活用方法としてはかなりユニークだ。
これは遺跡の上に都市が出来たローマならではのアイデアか苦肉の策なのか、いずれ
にしても日本なら個人に許可されないのではないかと思った。イタリアで古いと言えば何
百年以上のものでないと、その部類に入れて貰えないと言っていた。しかし遺跡となると
紀元前なんてこともあり得るが、レストランは何時ごろのものか説明はなかった。
この日のパスタは私たち夫婦にとって初めてのラザニア、幅が2cm、長さ10cmくらいのパ
スタ。日本の「蕎麦がき」の変り種のようなパスタだ。材料の小麦粉の味が残るため薄いソ
ースだと粉っぽいものになってしまいそうだった。この日まで、毎食パスタが出てきたがパ
スタの種類、ソースは異なるため飽きることはなかった。尤も、私たちは家ではパスタよりラ
ーメンかうどんの方が圧倒的に多く、しかもパスタソースは市販の限られたものばかりだか
ら、今回の旅行でパスタ開眼といったところだ。お土産に色々なパスタを購入したことは言
うまでもない。バスで移動中に「ローマの休日」で有名な真実の口を車窓越しに見ながら、
向かう先コロッセオはローマを代表する遺跡の一つだ。私たちは外から見るだけの観光だ
ったが入口から内部を見ることができた。すると中から大きな声でしゃべりながら数人の団
体が出てきた。どうも中国系で周囲のことにはお構いなし、場の雰囲気で自分たちが浮い
ていることにすら気がついていない。以後の他の海外でも同様のことを何度も経験をしたか
ら、中国系の人は大きな声で話をするとインプリントされてしまっている。コロッセオは風化
によりかなり傷んでおり修理を続けているそうだ。ただの娯楽のためにこんな大きなものを作
らせた時の権力者の力を見せつけられる反面、庶民の苦労は大変だったろうと気の毒に思
えた。私たちは観光気分で、コロッセオをバックに記念写真を撮る身分、何かの間違いで私
がコロッセオを作る側にいたのかもしれない。