「縦横無尽」 フローレ21社長のコラム

花の仲卸フローレ21社長小池潔がつれづれに語ります 快調に更新中

「森は海の恋人」

2010-09-07 21:14:25 | Weblog
気仙沼に畠山重篤と言う漁師がいる。
父親から漁師を引き継ぎ、牡蠣と帆立の養殖を営む。
1960年代に入ると気仙沼の牡蠣の養殖が思うように育たなくなる、海が濁り、赤潮が発生、牡蠣の身までが赤く染まり売り物にならなくなる。
60年代に多くの気仙沼の漁師が牡蠣の養殖をやめてしまった、牡蠣の本場フランスでは全滅した牡蠣を復活させるため気仙沼の牡蠣をフランスへ輸出、見事宮城の牡蠣がフランスで蘇ったと聞き畠山さんはフランスの牡蠣養殖の視察へ出る。
フランスで見た光景は畠山が見た1950年の気仙沼だった、潮が引いた後の干潟で小さなカニやえびがうごめいていた、自分が小さい頃の気仙沼と同じ海がフランスにあった。
ロワール川の上流へ行ってみるとそこは落葉樹の森がどこまでも広がっていた、何となく森と海が深く環境にかかわっていることを認識、帰国後、気仙沼の大川上流を調査、雑木林は杉の山と変わり、川の沿岸はコンクリートに変わり、田んぼは静かで農薬や除草剤で生き物が田んぼに住めなくなっていた、汚染された生活排水が川へと流れ出て、フランスで見たロワール川とは比べ物にならなくなっていた。
1988年「森は海の恋人」(漁師80人で広葉樹を山に植え森と海を考える)を立ち上げ落葉広葉樹を大川上流の山に植える運動を始める。
後に科学的根拠が証明される訳ですが、落ち葉が腐葉土となり、豊かな森に降り注いだ雨水はたくさんの植物プランクトンを海へ運ぶ、1キロの魚は10キロの小魚を食べる、その小魚は100キロの動物性プランクトンを食べる、100キロの動物性プランクトンは1トンの植物性プランクトンを食べるそうです。
植物性プランクトンが大量にに作られるには「フルボ酸鉄」が必要で、それを作り出すには腐葉土が欠かせないということです。

数年前まではどこかの海から運ばれてくるプランクトンを食べているか、激しい潮の流れでもまれているかが美味しい魚の定説でした、現在では豊かな森が川を伝って植物性プランクトンを大量に運んでくるからという事がわかりました。

かつて東京湾で取れる江戸前といわれた海産物がどれだけ豊富であったか、美味であったかは想像がつくところです、利根川の水域や荒川多摩川の豊かな川が、素晴らしい江戸前の魚を育てていた訳です。

たった一人の漁師畠山重篤さんの運動が気仙沼の環境だけを変えたのではなく植物の生態系、自然の循環、食物連鎖の大切さを教えてくれました。

この春、名古屋名港花き市場のオープニングセレモニーがあり出席した折、神田愛知県知事がこの10月名古屋で開かれるCOP10の意義について、また植物を生業としている市場関係者にわかりやすく説明をしてくれました。
「生物多様性」をテーマに、各国が持つ課題やその解決の方法、世界的な枠組みづくり等について討議するもので、私たちそして未来の世代に対して、大変重要な意義を持つ会議だそうです。

気仙沼の漁師畠山の取り組んだ「森は海の恋人」もまさに生物の多様性の原点のような運動です。
現在も千人規模の運動として発展し続けています。










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