「縦横無尽」 フローレ21社長のコラム

花の仲卸フローレ21社長小池潔がつれづれに語ります 快調に更新中

「月とガスタンク」

2012-10-09 11:20:45 | Weblog
「寄り添い支える」の著者で医師の菅野武先生。この本でいくつもの感銘する話が出てくる。その一つに「月とガスタンク」の話があった。
夜空の向こうに満月が見えて、手前に大きなガスタンクがある光景。形は同じ球体ですが、手前のガスタンクは巨大で、月はすごく小さく見えます。
でも、実際は月のほうがはるかに大きい。「目前に大きく見える事象があっても、本当に大切なものはもっともっと向こうにある。自分の生きる目的を見失ってはいけない」という話です。
実際に自分で一番輝いている、一番丸い、一番大きい、一番綺麗なお月様を見てみる、そしてその美しいお月様から何を感じるのかそのことが大切なような気がした。
それは十五夜の月以外にない。まして今年の十五夜(9月30日)は満月だと聞いていた。29日はきれいな夜空に大きい月がぽっかり浮かんでいた。
さて次の日はご承知のように巨大台風が日本列島を縦断、全国的に大きい被害が出て、浸水や家屋の倒壊もあり、被災された方々にはお見舞い申し上げ、一日も早い復旧を願っています。
お月様どころではない。夜空は星も月も見えない真っ暗闇で「月とガスタンク」の話は来年までお預けだと思って、床についた。翌朝4時少し前に起床、暗い夜空にお月様を探した。「ない」北の空、東の空、南の空、「あった」西の空にひときわ光り輝いているまん丸のお月様を見つけた。
昨夜の台風が大空の掃除をしてくれたように、くっきりと美しい姿を映し出していた。

目の前には無数の難問、課題が次から次と現れる。その処理に明け暮れ自分自身の目標や夢を見失っている。
そのことを「月とガスタンク」の話にたとえた。人は物心が付いたころから夢を持ち始める。
私はプロ野球の選手だったり、やがて新幹線が開通して「こだま」が走ると、「こだま」の運転手だったり。子供のたわいのない夢だが、どの夢も実現できなくて忘れ去っていった。
恥ずかしながらこの年になり、初めて自分にとってのお月様は何なのかがはっきりしてきた。しかしガスタンクがお月さまの存在を揺るがす。いやガスタンクも大事である。
ガスタンクにもしっかり目配せしながら、お月さまを見続ける。そしてお月様へ一歩でも二歩でも近づく。

菅野先生はこう言われた。「月というのは自分自身の人生をどう生きたいか、という信念であり、それがしっかりしていれば人生を歩むに当たって自分の進むべき道を月が照らしてくれる。
3.11 津波が志津川病院を襲った。5 階建ての4 階の天井まで水がきた。先生は今までにない自分の死を身近に感じたと言った。看護婦はそれぞれの腕に自分の名前を書き合う、先生も勤務では付けない結婚指輪を指にはめた。それぞれが濁流に飲まれ、どのような姿になろうと家族が自分を確認できるように。
そして「これ以上誰も死んでほしくない」たとえ死が避けられなくとも医師として後悔しないときを過ごすと覚悟を決めたと言われた。
医師を志、医大生だったとき、恩師から決して大切なもの、月を見失うなと教えられた。死と向き合ったときにも、医師としての志を持ち続けた。
4 歳になる可愛い娘に「美月」と言う名前を付けたのもこの月を思い浮かべたのかもしれないとも言われた。

通勤時の1日の早朝に見たお月様は、今まで見た中で最も光り輝いていた。きっとわき目も振らず、真直ぐこちらへ向いなさいと言っているようであった。

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