『TPP交渉参加影響は 国内農業に打撃与える』(愛媛新聞「えひめニュースウエーブ キーパーソン」、平成23年10月30日付より抜粋)
自民党衆院議員 山本公一さん(64)
TPPの参加には反対の意を含めた慎重という立場だ。TPPは原則、全品目の関税撤廃が求められる。世界貿易機関(WTO)や自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)と違い、保護が必要なセンシティブ(繊細な)品目を基本的に認めてもらえない交渉だ。
特に農業はセンシティブな課題。米韓のFTAではコメは関税撤廃除外となった。今回、日本は交渉の過程で認めてもらえるのか。日本の場合は、農業分野で譲らざるを得なくなるのではないか。
アメリカの1戸当たり平均農地面積は日本の100倍。価格、費用両面で対等に競争するのは難しい。北海道など大規模農業をやっている所は攻めの農業に転換する発想もある。しかし、中山間地域の農地が多い本県では大規模化は難しく、TPP参加で産業として成り立たなくなる恐れがある。ニュージーランドは酪農で勝負してくる。西予市の酪農家とは規模が違い、コストで太刀打ちできない。
確かに貿易立国の日本に自由化の利点はある。しかし、食料自給率向上が食料の安全保障の観点からも重要視される中、国内農業に打撃を与えるような協定には参加すべきではない。また、政府はTPP参加で農産物価格が下がった分だけ個別所得保障で補填(ほてん)する方針だと一部で報道されたが、財源も担保されておらず乱暴な議論だ。
日本の農政は曲がり角に来ており、われわれ自民党も反省すべき点はある。稲作では東北から九州まで全国一律で振興策を行なってきた。今後は、地域の実情に合った細やかな施策が必要になる。
「平成の開国」で農業は崩壊の危機に直面する。民主党の前原誠司政調会長が外相在職時、「日本の国内総生産における第1次産業の割合は1.5%。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」と発言した。逆に問いたい。98.5%のために1.5%をつぶしていいのか。
その1.5%は国家が国家であるための重要な産業。経済効率だけで物事を考える風潮は考え直すべきだ。