2018年も終わりに近づきました。
平成最後の年末です。
この期にあたり、「日本は世界一の金持ち国」という素晴らしい笑い話をしましょう。
笑う門には福来る。
車内に動画の広告がありますね。
先日電車に乗って動画広告を見ていたら、ニュースが流れました。
「大企業のボーナス平均90万円超で、昨年を超えて過去最高額」というのです。
ちょっと見ると、へえ、ずいぶん景気も回復してきたんだなと思うでしょう。
政府も「いさなぎ越え」とか「ゆるやかな回復基調にある」とか繰り返していますし。
でも、そんな実感はありませんね。
ところが、「大企業の」というところに注目してください。
日本の大企業は全企業の0.3%しかありません。
従業員数で言うと、3割。残りは中小企業です。
だから大企業のボーナスが高かったからといって、それは景気を占う指標にはなりません。
こういう目くらましニュースを流させているその総本山はどこなのか。
答えは明らかですね。
そう、経団連です。
財務省も裏で結託しているかもしれません。
それでは今年のボーナス支給の実態はどうか。
株式会社ウルクスが2018年12月に、若手・ミドル層の会社員241名に実施したアンケート結果があります。
それによると、56.4%が「支給なし」と回答。
そもそもボーナスが支給される人よりされない人のほうが多いのです。
また、「支給あり」と答えた43.6%の支給額平均は42.4万円で、大企業の半分未満です。
従業員別で、もっと詳しく見てみましょう。
1000人以上 43.8万円
300人以上1000人未満 32.5万円
100人以上300人未満 30.0万円
100人未満 30.2万円
ただし100人未満の企業では、「ボーナスあり」の割合が、38.2%に落ちます。6割以上が支給されていないのです。
https://wezz-y.com/archives/62359
暴言王・麻生財務大臣が、記者会見で、記者に対して「少ないというのは君の感性だ」とうそぶいたとか。
ちなみに麻生大臣のボーナスは、一部返納後で352万円です(前記事)
「いさなぎ越え」と「ゆるやかな回復基調」と麻生発言と3点セットで、もう笑っちゃうしかないですね。
このように、マスコミ報道と実態との間にはものすごい乖離があります。
GDPが対前年比で2.5%下がり、実質賃金は低迷、実質消費支出は下がり続けています。
にもかかわらず、日本は世界一の金持ち国とよく言われます。
これは全体として見れば間違いではありません。
以下、元国税庁調査官で作家の大村大次郎氏の記事「なぜ日本のサラリーマンの年収はいつまで経っても低いままなのか」(2018年12月17日)から、要点を抜粋します。
https://www.mag2.com/p/news/379730?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_1217
日本の個人金融資産残高は、現在1800兆円、赤ちゃんも含めて1人当たりにすると1400万円、アメリカに次いで2位です。
1990年には1000兆円でしたから、この28年間で80%も増えたことになります。
これに土地建物などの資産を加えれば、さらに莫大なものになるでしょう。
また対外準備高は全ヨーロッパの2倍、国民1人当たりだとダントツの1位。
さらに対外純資産は約3兆ドルで、これも世界第1位。
しかも、世界的な金融グループ、クレディ・スイスの2016年のレポートによると、日本のミリオネア(100万ドル以上の資産の持ち主)は280万人超で、前年より74万人増え、増加率は世界一です。
これは全人口の2%にあたります。
この激増している億万長者の大半は、かなり以前から大企業の株をたくさん持っていた人です。
以下は、上場企業の配当金の総額の推移です。
2005年 4.6兆円
2007年 7.2兆円
2015年 10.4兆円
2017年 12.8兆円
2005年の3倍近く、2007年の2倍近くに増えていますね。
つまりこの大半が、大企業の株をたくさん持っていた人に流れ込んだことになります。
(大村氏記事抜粋ここまで)
さて一方、平成29年版・少子化社会対策白書によれば、1997年には、給与所得の価格帯の最頻値(モード)が500万円~699万円だったのに対し、2012年には300万円~499万円に落ちています。
また厚労省の統計によれば、この13年間の実質賃金の推移はご覧のとおりです。
さらに、国税庁の民間給与実態統計調査」によれば、年収200万円以下のワーキングプアは、安倍政権になってから1100万人を超え、その推移はご覧のとおりです。90年代後半に比べて300万人も増えていますね。
しかもワーキングプアは、ひとり親家庭(多くは母子家庭でしょう)が圧倒的に多いのです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2014/CK2014101502000195.html
https://toyokeizai.net/articles/-/221708?page=2
生活保護世帯も2000年代に入ってから急増し、安倍政権になってから160万世帯で高止まりしています。
これは90年代後半の2.7倍です。
子どもの貧困率は、2012年の統計で、先進7か国ではアメリカ、イタリアに次いで3位、
OECD諸国では9位で、平均を上回っています。
先ほどの2016年までのワーキングプアの推移のグラフを見れば、もっと悪化しているに違いありません。
ある人の話によれば、食事も満足に食べさせてもらえない子どものために、地域で「子ども食堂」を開設する案があり、公立高校生600名にアンケートを取ったところ、希望者70名。
さまざまな記事に見られる、6人に一人か7人に一人が「貧困家庭の子ども」に数えられるという分析と符合します。
もう十分でしょう。
「日本は世界一の金持ち国」ですが、そのお金はミリオネアに集中して、中間層は脱落し、多くは貧困層に転落したと言っても過言ではありません。
つまり、これが今世紀に入ってからの実態なのです。
急激な格差社会化と呼ばずして何と言えばいいのでしょう。
もちろん、その原因は、金融グローバリズムが経済の大きな部分を占めるようになったことにあります。
そして、その危険に対して、政府がそのトレンドに追随するばかりで、実体経済を活性化させる有効な対抗手段を打ってこなかった点にあります。
97年のデフレ突入から20年以上が経ちました。20年といえば、生まれた赤ちゃんが大人になるまでの、長い長い期間です。
その間、いくらでも打つ手はあったはずです。
グローバル資本やグローバル金融市場への規制を強め、一方では内需拡大に向けて、国内産業の保護やインフラ整備のための大規模な投資をすべきでした。
経済に関する限り、「日本ファースト」に徹するべきでした。
それなのに、ヘンな「自由」イデオロギーとヘンな倹約思想にかぶれて、結局何もしてこなかった。
政府関係者よ、「いざなぎ越え」などと悪い冗談を続けるのは止めて、この悲惨な経済実態を直視せよ。
それでも来年は消費増税、やる気ですか。
移民受け入れ、水道民営化、やる気ですか。
国民いじめにさらに邁進する気ですか。
以上、世界一の金持ち国の政府は、世界一のバカ政府、というお話でした。
ワッハッハッハ。
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