小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

エリートたちの思考停止

2019年10月11日 13時34分38秒 | 思想



2019年10月8日、遠藤金融庁長官が、厳しい経営環境が続く地銀について「他力本願的だ」と指摘し、主体的な改革推進を求めました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191008-00000013-jij-pol&fbclid=IwAR0cYwfhmTgvK_gBb10SJlrX8IlWIOouMyF6T6Qzuwmq1dlKAUNVwCMnFMo
 遠藤長官は、地銀の収益改善策について「顧客と中長期的な信頼関係を結ぶビジネスを真剣に考えれば資金利益は確保できる」と強調しました。
また、預金口座の維持手数料を利用者から徴収する議論が浮上していることに対しては「サービスが変わらないまま、収益向上のためだけに手数料を取るのであれば顧客が納得しない」と指摘し、利便性を高めるなど、現行取引に付加価値を加えることが大事だと語りました。
一見正しいことを言っているように見えます。

しかし地銀の経営が厳しさを増している背景には、安倍政権のデフレ政策の誤りがあります。
そしてその根源には、金融緩和さえやればOKというリフレ派の考え方があったのです。
日銀は、いまだにこれを続けています。
この政策のために金利が極端に低下し、銀行はいま青息吐息です。

銀行の主な利益は、貸出金利と預金金利の差額、それに取引に伴う手数料です。
しかし肝心の金利がこんなに低くなってしまっては、経営が圧迫されるのは当然でしょう。
おまけに需要が冷え込んでいる地方企業が、銀行からお金を借りて投資に踏み出そうとしません。
それは、このデフレ状況では、将来的に儲かる見込みが立たないからです。
そういうわけで、地銀はどこも断崖に立たされています。
島根銀行が一番に破綻しましたね。
この状況は、政府が大胆なデフレ対策を打たない限り、解決不可能です。

そんなことは一目瞭然なのに、金融庁長官はその根本原因に言及する代わりに、地銀に対して、効果のないスポ根型精神論をひたすら押し付けているわけです。
知っていながら知らないふりをしているのか、マクロ経済に蓋をして、ミクロ経済の問題にスリカエているのですね。
間違った前提をそのまま受け入れて、自分の役職の範囲内でしかものを考えたり発言したりしないのです。
ここには、全体的な流れやプロセスを見ようとしない思考停止の典型が現れています。

しかもこれには後日談があります。
信頼できる筋からの情報ですが、今度は、自民党の金融調査会で、国会議員が同じ論調で当の金融庁を責めていたそうです。「金融庁の指導が足りない」「地銀はもっとニーズに合ったサービスをしないからダメなんだ」という具合に。
真相から目を背ける人々の、見苦しい「罪のなすり合い」ですね。

このように、手を汚さないで済むエリートや財界人たちのなかで、いま思考停止による無責任な言動が横行しています。

もう一つ例を挙げておきましょう。

一日後の10月9日、ファーストリテイリング会長の柳井正氏が日経ビジネスのインタビューに答えています。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/?fbclid=IwAR0q2FElDohYtgGKOwaZE4OykqTNXOKN70joIMZ7zM0ypMj-U4AftKtixUk
このインタビューで、柳井氏は、日本はこのままでは滅びるから、大改革が必要だというのです。
ではその大改革とは何かといえば、次のようなトンデモ政策です。

まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。それを2年間で実行するぐらいの荒療治をしないと。今の延長線上では、この国は滅びます。
 参議院も衆議院も機能していないので、一院制にした方がいい。もっと言えば、国会議員もあんなに必要ないでしょう。町会議員とか村会議員もそう。選挙制度から何から全部改革しないと、とんでもない国になります。


これは、維新が掲げている政策と酷似していますね。
アメリカで盛ん(だった)「小さな政府」論への盲従です。

柳井氏は、日本の公務員が人口比で世界一少ないということも知らないらしい。
これ以上公務員を減らしたら、公共サービスの劣化はますます進むでしょう。
災害時などの繁忙期に、公務員がいかに心身をすり減らして死にたくなるまで働いているか、氏は想像したことがあるのか。
公務員は少なくとも、いまの2割は増やさなくてはならないのです。
また、歳出を半分にして、デフレ脱却、社会福祉の充実、インフラ整備、教育、医療、防災、国防その他、いま日本にとってぜひ必要とされる案件をどうやって解決しようというのか。
何よりも、こういう「大改革」をすれば、どうして「滅びゆく日本」を少しでも食い止めることができるのか、その理路がまったく立っていません。
いまの日本の衰退のおおきな原因が、柳井氏のアイデアとは真逆の、緊縮財政路線にあるということも、彼はまるで分っていないようです。
要するに、ふだんから、「小さな政府」を実現して、自分たちのビジネス領域を拡大しようとしか考えていないので、何の根拠もない思い付きをフカしているだけなのです。

儲けることに専念して(それはそれで結構なことですが)経営に成功してきた者が、ちょいと偉くなって政治に口出しなど始めると、バカなことしか言えない、その無残な例がここに現れています。
日本の衰退を政治的に問題にするなら、もう少し政治について勉強してはどうでしょうか。
あなたのような人がいるから、日本は滅ぶのだと言いたい。

御用学者のたぐいにも無知をさらしている人はたくさんいますが、それはこのブログで何度も取り上げてきましたので、今日は控えておきましょう。
いずれにしても、これら著名人の発言が、じつは私的利害や主観的信念や自己保身のためだけなのに、公共的な体裁のもとになされている例が氾濫しています。
こういう無責任な言論状況が積み重なることもまた、「滅びゆく日本」をいっそう前に進めるでしょう。
一国が滅んでゆく最大の原因は、その国の国民が、自国の滅亡過程を自覚しないことです


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リベラリズムの退廃

2019年10月02日 11時41分11秒 | 思想



9月27日、「チャンネル桜」放送、我那覇真子氏の「おおきなわ」で、ジェイソン・モーガン氏が「アメリカン・バカデミズム」(育鵬社、9月10日発売)という自著について紹介していました。
https://www.youtube.com/watch?v=HNITQkAwlis&t=136s
筆者はこの本は未読ですが、内容を聞いてびっくりしました。
いまアメリカのリベラル系の大学では(すべてではないでしょうが)、アイデンティティ・ポリティクスが大流行で、氏によれば、個人のアイデンティティが100以上あるそうです。
アリゾナ州立大学大学院の博士課程の院生が「私はカバです」とか「私は犬です」などと大真面目に主張していて、犬を自分のアイデンティティにしている人は、実際にお椀で食べたり犬のベッドで寝たりしているとか。
木と結婚するとか、石と関係するなどということも実践されているらしい。
メンタルの病にかかっているとしか考えられません。
「そりやいくら何でもバカバカしいよ」などと言おうものなら、直ちに差別として告発されます。
代名詞もheとshe以外にいくつもあり、ニューヨーク州では、ある人を間違った代名詞で呼ぶと罰金を取られるという法律が堂々と成立しているそうです。

モーガン氏は、リベラル色濃厚なウィスコンシン州立大学に論戦を挑むべく、あえて歴史学部に入学したのですが、まったくこちらの議論に耳を貸してくれませんでした。
ある時、全学生に州知事に反対するデモに参加せよとのメーリングリストが回ってきて、そのスローガンが「州知事は皇帝ネロだ」というものでした。
氏は、学問の府を政治の舞台にするのはどうかと思い、一人で全員に反論メールを出しましたが、無視されました。
また氏は、慰安婦問題について秦郁彦氏や平川祐弘氏に学び、韓国が間違っているとの確信を得て、それを歴史学会のニューズレターに投稿したところ、反論者はたったの一人でした。
しかしその背後で、500人もの人が「日本が悪い、安倍(首相)は韓国に謝れ」といったお祭り騒ぎを演じました。
氏の指導教授は、他教授と「モーガンが大騒ぎの張本人だ」というメール交換をする一方、氏に対しては、「超多忙」を理由に何にも取り合ってくれなかったそうです。
どうやら韓国からの裏金が動いていたらしい。
そうした事実をもっと日本人に知ってもらいたくて、『アメリカン・バカデミズム』を書いたと、モーガン氏は述べていました。

この話を詳しく紹介したのには、2つの理由があります。

一つは、徴用工問題、韓国への輸出規制、韓国のGSOMIA破棄など、最近の一連の日韓関係の悪化について、日本の一部保守派の反応を見ていると、対韓国との関係で「ざまあみろ、自業自得だ、日本の勝ちだ」といった感情的な炎上が少なからず見られる点に疑問を持つからです。
といっても、筆者は、この関係の悪化はまずいことだから、何とか仲直りする道を探すべきだなどと言いたいのではありません。
問題は、日本の一部保守派が、韓国一国との関係だけで一喜一憂している点です。

周知のように、現代の戦争は、ドンパチだけではなく(むしろそれは少なくなっており)、情報戦、経済戦の様相が色濃くなっています。
日本は、韓国および中国とは、すでに長いこと情報戦と経済戦を戦っているのです。
そしてことに情報戦において、日本は中韓に大差をつけられています。
それは、国連や欧米諸国で、中国のいわゆる「南京大虐殺」や韓国のいわゆる「従軍慰安婦」などの問題が当たり前のこととして受け取られている事実を見ればわかります。
彼らは、国際的な情報戦に勝つために、膨大なエネルギーを注いできました。
しかし日本は、一部有志の努力があったものの、外務省をはじめとして、この問題を、国連や欧米諸国で日本がどう受け止められるかという地球規模の問題として扱ってきませんでした。
現在のところ、勝敗は決したも同然で、このままほおっておけば、「日本の悪」が国際的な正史として定着してしまうでしょう。
覇権戦争のさなかにある米中は、日本の主張の正当性をけっして認めないという意味では、皮肉なことに、かつての「戦勝国」として連携していると言えるのです。
モーガン氏の話は、そのことを象徴しています。

もう一つは、モーガン氏の話が、アメリカのリベラル左翼がいかに硬直したイデオロギーに染まっているかを示しているという点です。
個人のアイデンティティを当の個人が勝手に決めて、それを笑ったりバカにしたりしたら差別だというのは、リベラリズムが行きつく退廃の極をあらわしています。
その点で、日本の左翼のほうがまだしも健全な常識の範囲内にあると言えますが、しかしここには、左翼がたどる、笑うだけでは済まされない一つの道筋がくっきりと示されています。
日本の左翼も、現在、LGBT、アイヌ、女性、障害者など、特殊性を持った「記号としての弱者」のカテゴリーをあらかじめ決めておく傾向が顕著です。
そしてその傾向に少しでも違和をあらわす言動がなされると、すぐ差別とか人権蹂躙とか排外主義と言ったレッテルを貼りつける風潮が目立ちます。
これは、左翼が本来の任務を放棄している証拠なのです。

左翼の本来の任務とは、中央政府が一般国民の生活の豊かさと安定を保証せず、かえってないがしろにする方向に走っている時に、その事実を指摘して改めさせるような政治行動を起こすことです。
その基盤にあるのが、ふつうの労働者のための組合運動ですが、80年代くらいからそれがすっかり鳴りを潜めてしまいました。
しかし現実には、いまの日本の政権は、グローバリズムに完全にいかれてしまった結果、ふつうの国民生活をさんざんに苦しめています。
日本国民が貧困化している証拠は山ほどあります。
つまり労働組合や左翼政党が活躍すべき条件が十分に復活しているのです。
にもかかわらず、一部の突出した人気政治家を除いて、その条件を活かす兆候は見られません。

このところ、行き過ぎた金融資本の自由化を是正し、政府の財政政策を積極的に肯定しようとする新しい経済学の理論が盛り上がっています。
その潮流の担い手の一人である経済学者を日本に招聘しようと努力していた人(Aさんとしましょう)が、思わぬ苦労を経験しました。
Aさんは一応保守派を標榜しているのですが、現政権の経済政策のとんでもない誤りを少しでも日本国民に知らしめるべくその経済学者を呼ぼうとしたのです。
ところが一部の左翼勢力が、Aさんの主宰するメルマガに掲載されたある人の論考を探り出して内容をその経済学者に知らせたそうです。
その論考は、モーガン氏が論戦を挑んだのと同じように、いわゆる「従軍慰安婦」問題や「徴用工」問題や「南京大虐殺」問題についての日本の主張の正しさに触れたものでした。
同時にこれらの情報戦における、日本の対応のふがいなさにも触れています。
これを知った経済学者は、その論考を削除しなければ訪日しない旨を伝えてきたそうです。
Aさんは、イデオロギーで人を入れたり切ったりすることを嫌うプラグマティストですから、粘り強く経済学者を説得して、訪日OKにまでこぎつけました。
もちろん、削除要求に対しては拒否しました。
左右イデオロギーを超えて、正しい理論を少しでも広めることができるのですから、それはそれで大変よいことだったと思います。

以上の経緯が示していることは何でしょうか。
筆者は、正直なところ、この経済学者の対応に驚きました。
英語圏では、学者までもが、かくも特定イデオロギーに染まってしまっているのですね。
日本の憲法学者や御用学者などを見ていると、人のことは言えた義理ではありませんが、学問や言論の自由を最大限尊重する英語圏の学者なら、まさかそんなことはないだろうという幻想を筆者も持っていたのです。
筆者はそこに、モーガン氏が経験したのと同じリベラリズム全体の政治的偏向と退廃を見る思いがしました。
もう一つ、残念なのは、やはり先に述べたように、英語圏の人たちの多くは、東アジアのもつれた関係についてよく知らないのに、「悪いのは日本だ」と信じ込んでいるらしいことです。
ここにも中韓の情報戦の圧倒的な勝利の証拠を見ることができます。
韓国のほうだけを見て一喜一憂している場合ではないのです。
筆者もモーガン氏にならって、世界では「悪いのは日本」が常識になってしまっているという事実を知ってもらいたくて、これを書きました。
くだんの経済学者個人を批判したくて書いたのではないことをお断りしておきます。


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自由と個人化のつけ

2019年09月22日 20時16分59秒 | 思想



ある人に教えられて、御田寺圭氏の『矛盾社会序説』を読みました。
その人に、20年前に書いた拙著『弱者とはだれか』との共通点を指摘されました。
筆者は御田寺氏の本を、2018年11月に出版されてからまもなく買ったのですが、一年近く積読になっていました。
それで、急いで読んでみたのです。
なるほど拙著の問題意識と一部共通点を持ちつつも、それをさらに現代のシーンにふさわしく洗練させ、思想的に鮮明化させているという印象です。
気づかせてくれた「ある人」に感謝です。

御田寺氏はまだ30そこそこと想像されますが、ネット上では前から有名だったようです。
たいへん鋭い分析力と繊細な感性を持ち合わせた人です。
氏は社会学的知見を駆使しながら、表通りの「正しさ」や公認された「弱者」マークによって、かえってそのために見えなくされているいろいろな人たちにスポットを当て、その不可視化、透明化が、私たちの社会で疑い得ない価値とされている「自由」から生まれてきていると指摘します。
そこには「かわいそうランキング」が成立していて、その上位者だけが脚光を浴びる仕組みになっているというわけです。
不可視化、透明化された対象は、孤独死する独居老人(特に男性)、ワーキングプア、結婚できない男たち、非モテ、地方に拘束される若者、ひきこもり、失業者としてカウントされない「ミッシングワーカー」などです。

「助ける対象を自由に選べる社会」とは「助けない対象を自由に排除できる社会」と同時発生的である。
否が応でも周囲に気を配ったり、親切にすることを求められていたような時代は終わり、個人がそれぞれに関心のある、または肩入れしたいものごとに対してのみ力を注いでよい時代を迎えた。それはつまり、自分がかかわりたくないもの、ごめんこうむりたいものに対する「拒否権」が拡大した時代となったともいえる。》(太字は、原文では傍点)
《(相模原障害者施設殺傷事件の――引用者注)被告が殺害しようとしていた対象(被告がいうところの「無価値」な人間)には、彼の言葉を共感的に見ていた人びと自身も大なり小なり当てはまってしまっているのではないだろうか。

「~への自由」と「~からの自由」とを区別し、前者を肯定しなかったのはバーリンです。
先進社会が普遍的価値として押し出す「自由」という抽象語には、たしかにこのアンビバレンツが含まれ、前者が強調されると、御田寺氏の言うように、「助けない対象を自由に排除できる自由」を必然的に抱えることになります。
「自由な社会」が抱える矛盾は、共同体が成り立たず「個人化」が進んできた傾向と不可分です。

ちなみに、ここで「個人主義化」と呼ばず、あえて「個人化」と呼ぶのは、次のような理由からです。
個人主義という用語は、それぞれの人の生き方のモットーを指すために使われ、それは保守派の一部からしばしば「エゴイズム」と混同されて批判の的とされます。
しかし生き方のモットーとしての個人主義は、他人の生き方をも尊重し、互いの生活にむやみに干渉しないという意味合いを含むので、それ自体はけっして悪いニュアンスではありません。
近代、特に都市社会では、これはなくてはならないマナーの一部となっています。
メールが栄えて、電話による声の迷惑を控えるようになったのなどは、いいことですね。
これに対して「個人化」とは、よくも悪しくも家族や社会の紐帯が崩れ、生活の協同が成り立たなくなった全体的な傾向を指します。
ですから、これは「主義」の問題ではなく、そこに抽象的な「自由」理念がイデオロギーとして深く浸透してしまった事態と呼応関係にある、いわば全社会的な構造の問題なのです。
そして厄介なのは、この構造的な問題が、誰から強制されたわけでもなく、私たちみんなで選んできた結果なのだという点です。

これを少し政治的な文脈に置き直してみましょう。
かつては、国民のほとんどに共通する経済社会的不公正があると、労働組合がその課題を集約し、それを支持基盤とした政党が、野党として相当の勢力を示して中央政府に対峙していました。
それは広範な国民大衆に共通する「明日の暮らしをどうするか」を中心課題としていたからです。
実際、中央政府もこれを無視するわけにはいきませんでした。

しかし評論家の中野剛志氏が指摘するように、70年代後半から80年代にかけて、「労働者の暮らしを豊かにすること」を中心課題とする労働組合のこの結束は衰退し解体していきました。
これは、直接には、日本が豊かになり、一億総中流などと呼ばれた時代を反映しています。
山崎正和氏の『柔らかい個人主義の誕生』がベストセラーになったのが84年です。
この情勢をそのまま受けて、野党は、「国民生活の豊かさを保証する」という課題を喪失し(放棄し)、代わって、その政策課題を「差別」「人権侵害」「排外主義」など、特定集団が被っているとされる「被害」の撤廃に集中させるようになりました。
ポリティカル・コレクトネスなる概念が世界中を覆い、わが国でもそれが中央政権に立ち向かうための根拠となったのです。

中央政権もこの口当たりのよい「正義」概念に面と向かって逆らうことはできなくなりました。
この概念の仲間に入れてもらうためには、LGBT、移民、アイヌ、女性など、特殊なマークを持つことが必要とされます。
生活者一般の苦労、困窮という見えにくい指標は、特定の個人のアイデンティティという見えやすい指標に取って代わられたのです。
「すべての人に自由と平等を」「一億総活躍社会」「すべての女性が輝く社会」――そんなことが無理なのは大人なら誰でもわかるはずなのですが、そういうあたりさわりのない標語を中央政権も、臆面もなくかざすようになりました。
反権力的な勢力の政治課題がこのように転換したことは、結果的に政府にとって都合のよいことだったかもしれません。
というのは、特定の個人のアイデンティティを政治課題の中心に据えることは、その影で、どんな間違った経済政策を採ろうが、野党がそれを見逃してくれることになるからです。

さて中央政府の経済政策の致命的な失敗によりデフレが20年以上も続き、いまや実質賃金は下がり続け、格差は開き、中間層は脱落し、年収200万円以下のワーキングプアは1100万人超、貯蓄なしの世帯は半数近くに達し、生活保護世帯は安倍政権発足以来ずっと160万世帯で高止まりしています。
10月からは消費税が10%に増税され、国民にとっては「踏んだり蹴ったり」の状態が実現されようとしています。
かつての労働組合が担っていた課題は、いま確実に復活しているのです。
にもかかわらず、消費増税にはろくな反対運動も起きていませんし、政府の経済政策のひどさを根底から批判する政治勢力はほとんど力を蓄えていません。
ごく少数の人たちが、さすがにいまの日本の危機状態を訴えていますが、いまいち「笛吹けど踊らず」の感があります。
増税されても文句を言わずに我慢する「自由」が浸透しているからです。
個人化の深まりが、当然なされるべき結束の動きを阻んでいるのです。

豊かさの実現が、人々をして「自由」を普遍的価値と思いこませ、個人化の傾向を促進させたのですが、その豊かさが消え去っても、いったん出来上がった意識はなかなか元に戻りません。
足元で苦しい生活に耐えながら、それでも人々の意識は、これらの欺瞞的な価値と傾向から抜け出すことができないのです。
危機待望論ではないですが、おそらくもっと事態がひどくならなければ、この意識は変わらないでしょう。

御田寺氏の著書のまなざしは、主として「かわいそうランキング」の下に位置するがゆえに、不可視化され透明化されてしまった人々に注がれています。
それはそれで「自由」という価値が持つ矛盾と欺瞞性を見事に照らし出すものでした。
しかしいまや、一見、別に「かわいそうランキング」にランクされていないような「ふつうの人々」のふつうの忍耐の日常の中に、不可視化と透明化の核心が存在するような時代になったのではないでしょうか。


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MMTの就業保障プログラム vs ベーシックインカム

2019年09月18日 22時52分11秒 | 思想



現代貨幣理論(MMT)を体系的に論じたランダル・レイ氏の『MMT現代貨幣理論入門』には、政府が雇用の安定と貧困の解決を目的として提供する「就業保障プログラム(JGP)」というアイデアがやや詳しく紹介されています。
これは簡単に言えば、政府自らが最低賃金を決めて労働者を雇い入れ、不況時に失業者が増大しないようにするシステムです。
政府の提供する仕事は、インフラの整備や社会福祉事業など、公共性の高いものが中心となるでしょう。
しかしそれだけではなく、ふだん民間が行なっているさまざまなプロジェクトについても、不況時には政府もタッチして、失業者に就業機会を提供することになります。
世界恐慌時代のニューディール政策がそのモデルの一つです。

こういうと、いわゆる「小さな政府」論者は、すぐクラウディングアウト(金利高騰による民間需要の圧迫)を心配するでしょう。
しかしJGPはあくまでその時々の最低賃金で雇用することが条件ですから、もし少しでも景気が回復して、それよりも高い賃金で雇う企業が現れれば、労働者はそちらに自動的に移っていきます。
そしてまた景気が悪化すれば、政府が財政支出を行なって、失業者を吸収するわけです。
いわばJGPは、景気循環の波をできるだけ抑えて完全雇用の実現を目指すための労働者のプールなのです。

このアイデアは、いくつかの点で優れている、と筆者は思います。
レイ氏の説明に従って、その利点を挙げてみましょう。

一つは、このアイデアが、「小さな政府」がよいのか「大きな政府」がよいのかといったイデオロギー的な対立の不毛さから自由な、柔軟なシステムだという点です。
JGPの雇用は、景気後退時に増加し、景気拡大時に縮小します。
景気過熱時にはインフレ圧力を弱め、不況時にはデフレ圧力を弱めます。
つまり景気後退時には、「大きな政府」になり、景気拡大時には「小さな政府」になるわけです。
その意味で、アメリカで言えば、民主党だけではなく共和党にも受け入れられる要素を持っています。

また、これは政府が直接雇用しますから、医療、育児、社会保障、病気休暇など、きちんと整った福利厚生とセットになっています。
ここに属する労働者は、パートタイム労働や季節労働を含め、その期間、一種の公務員になるわけですね。

次に最低賃金ですから、民間の雇用者は、これより少しでも高い賃金を支払えば労働者を引き抜くことができるので、雇用者どうしの低賃金競争を制限することができます。
また一般企業は、福利厚生や労働条件の面でも、少なくともこのプログラムと同程度の水準を提示しなければならなくなります。
ブラックな扱いを受けている労働者は、そこから逃れてJGPを選択することができるわけです。

為替レートとの関係ではどうでしょうか。
貧困層に所得をもたらすと、消費が増え、その結果輸入が増えるので、輸入物価が上昇して通貨安となり、インフレが加速することを心配する向きもあるでしょう。
しかしこの心配は、フィリップス曲線を盲信した主流派経済学の一部からくるものです。
フィリップス曲線では、失業とインフレとがトレードオフの関係になりますから、一国の経済の安定のためには、ある程度の失業やむなしという考え方になります。
しかしレイ氏はこれに対して、次のように答えます。
物価と為替レートの安定を達成するための主要な政策手段として貧困と失業を利用することに対しては、強い倫理上の反対論がある。》
また、《むしろ、就業保障プログラムは国内外における通貨価値に(最低賃金という――引用者注)土台を提供するがゆえに安定させ、実際にはマクロ経済の安定性を高める
為替レートへの圧力が万一強まって、それを最小化したいのであれば、国は貿易政策、輸入代替政策、ぜいたく税、資本規制、金利政策、取引高税などを依然として利用することができる
つまり、貿易赤字の増加を解決するために、貧困層や失業者にすべての負担を押し付けるのはおかしいということですね。

このアイデアに対しては、このほか二つの批判があるようです。

一つは、政府の雇用の増減の幅が大きくなりすぎて、制御不能になるのではないかというもの。
不況時に多くの雇用を創出したのに、好況になったらそれがみんな民間の雇用に流れてしまうのでは、多くのプロジェクトを中止しなくてはならなくなるのではないか。
これはもっともな心配です。
しかし、アメリカでは、労働者プールにおける雇用の一般的な増減幅は、好況時の800万人から不況時の1200万人までの400万人と推定されており、好況時でもほとんどのプロジェクトが継続できるように、労働者プールに十分な数の労働者を確保しておくことは可能であろうと、レイ氏は述べています。

もう一つは、例によって「財源」をどうするのかという議論です。
政府が福利厚生とセットで賃金を払って労働者を直接雇用するとすれば、当然、相当の財政出動を覚悟しなくてはならないからです。
しかし、MMTをよく知る人なら、この議論は「うんざり」でしょう。
というのも、MMTは、自国通貨を発行できる国では、財源を税収に求めることを認めていないからです。
原則としてインフレ率以外に財政支出には制約がなく、債務の累積によって財政破綻することはありえないというのがMMTの最も重要な指摘です。
債務残高は、過去の財政支出のうち、税金で取り戻せなかった分の記録に過ぎず、それはそっくり民間の貯蓄になっています。

また、税の機能は、歳出を賄う点にあるのではありません
それは、国民経済を安定化(インフレ、デフレのコントロール)させること、所得の再分配によって極端な格差をなくすこと、自国通貨納税によって一国の経済活動に信用をもたらすこと、公共性を害する経済活動を処罰することの四つです。

さらに進んで、中央政府は、中央銀行の準備預金口座に必要金額を電子記録として書きつけるだけで財政支出が可能となるので(つまり貨幣の創造)、MMTでは、利払いを伴う国債の発行すら、あまり思わしくないとされています。
国債とは、準備預金口座に必要な支出を書き込む作業の代替機能に過ぎないのです。
「ザイゲン、ザイゲン」と騒ぐ人たち(ほとんどの行政関係者、政治家、エコノミスト、マスコミがこれに当たりますが)は、これらのことをまったく理解していません。

さて、MMTの就業保障プログラムとは別に、ベーシックインカムというアイデアが一部で盛んに議論されています。
これは、個人単位で、全国民に一定額を支給するというものです。
働いている人も働いていない人も、子どもも高齢者も、富裕層も貧困層も、ハンディのある人もない人も、一律同じ金額が支給されます。
政府が、生活できるだけの最低保障をするから、あとは自由に生活設計をしろというわけですね。

この考えはどうでしょうか。

メリットとして、貧困対策、少子化対策、地方の活性化(地方のほうが物価が安いので)、多様な生き方の実現、非正規雇用問題の緩和、社会保障制度の簡素化、行政コストの削減、などが挙げられていますが、どれも説得力がありません。

まず、真剣に貧困対策を考えるなら、富裕層にも支給するというアイデアはおかしいですね。
また、子どもにも支給されれば結婚や出産へのハードルが外されるというもっともらしい理屈は、これまでの子ども手当などの対策が一向に効果を上げていないことで反証済みです。

地方の活性化は、インフラの整備というポジティブな政策によってこそ実現するので、物価が安いぶんだけ活性化につながるなどというのは、なんとも屁理屈めいています。
物価の安さは、同時に生産活動の沈滞をも表しています。

また、多様な生き方といえば聞こえはいいですが、引きこもりやニートもその一つということになりますから、そういう生き方を助長してしまうでしょう。

非正規雇用やワーキングプアの問題は、デフレのために雇用者が人件費を削減する動機から出ているので、デフレを前提とした上で、ベーシックインカムがその緩和に役立つという発想は、本末転倒です。
支給された金額が消費に使われずに貯金されてしまったら、デフレ脱却はいっそう遠のくでしょう。

社会保障制度の簡素化と行政コストの削減。じつを言えば、これがベーシックインカムという発想が出てくる本音の部分をあらわしています。
というのは、このアイデアは、もともと社会保障を極小にせよという新自由主義的な考え(小さな政府)から来ていて、高齢者、障碍者、病者など、特殊条件を抱えた人々に対するきめ細かな対応をやめて一本化してしまえばよいという粗雑な発想に基づいています(左派系の人たちは、一応社会保障制度との抱き合わせを主張しているようですが)。
ミルトン・フリードマンの「ヘリコプター・マネー」と共通していますね。
貧困? 失業? カネをばらまきゃいいじゃないか、というわけです。
じっさいフリードマンは、「負の所得税」という言い方で、ベーシックインカムとよく似たことを提案しています。
それぞれに特別な条件を抱えていて、ベーシックインカムではとても足りないという人はどうすればいいのでしょうか。
新自由主義得意の、「あとは自己責任で」というのでしょうか。
また、行政コスト云々については、MMTがそれを心配する必要がないことを証明してしまったのですから、何らメリットにはなりません。

ベーシックインカムのメリットとして、ブラック企業の抑止効果を唱える人もいるようですが、おいおい、それは反対だろう、と言いたいですね。
「お前は最低限食っていけるんだから、ウチじゃあ、そんなに給料出す必要はねえ。それでも働きてえなら、こんだけの仕事をいついつまでにこなせ」と考えるのが、ふつうの雇用者心理ではないでしょうか。

このアイデアの最もまずい点は、人々の勤労意欲を殺ぐことです。
楽をしたがるのが人性というもの。
もし働かなくても最低生活が保障されるなら、好き好んでつらい労働に従事する人はいなくなるでしょう。
ローマ時代末期の「パンとサーカス」と同じような状態が出現します。
筆者は、楽をすることが道徳的によくない(「働かざるものは食うべからず」)と言いたいのではありません。
働かなくても食っていけるのなら、多くの人が生産現場から手を引き、当然、社会全体の生産力、生産性は低下します
つまりかえって貧困化が進み、亡国への道を早めるでしょう。

MMTの提唱する就業保障プログラムと、ベーシックインカムとの決定的な違いは、前者が必ず政府による雇用を条件としているのに対して、後者が、働くか働かないかを問題にしていない点です
もちろん、どれか一つの政策に固執する必要はないので、状況に応じて、複合的に組み合わせて用いることは可能であり、それを許容する寛容さを持ち合わせることは大事なことです。
たとえば、給付型奨学金制度などは、ベーシックインカムの部分的な適用と見なすことができますから、大いに推奨されるべきでしょう。

ただ、思想として見た場合、どちらが優れているかといえば、就労を条件とするJGPのほうが、人間的自由の獲得の条件としてやはり立ち勝っていると言えるでしょう。
ベーシックインカムは、かつて救貧のために方法を見出せなかった時代の、富裕層による上からの慈善事業の現代ヴァージョンです。
もし誰もが勤労の対価を受け取り、それによって社会に参加しているという実感を抱けるなら、それが結果的に一人一人の誇りを維持する一番の早道と言えるのではないでしょうか。

昔の偉い思想家も、次のように述べています。
各人が自分の欲求を満たすという主観的な動機にもとづいておこなった労働の投与が、全体としては、たがいに他人の欲求をも満たす相互依存の生産機構を作り出す。これは、「共同の財産」である。もしそういう共同の財産のネットワークが市民社会にきちんと整っているなら、それによって、だれもが自分の労働を通じて社会から一人前であるとして承認される。それは、慈善や憐憫に頼るような奴隷的なあり方とはちがった、人間的な自立と自由とを実感できる道である。》(ヘーゲル『法哲学講義』――ただし一部筆者改訂)
人生の要訣はただ働くにあり》(福沢諭吉『民間経済録』


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コメント

横浜のカジノ誘致に反対すべき本当の理由

2019年09月05日 21時08分52秒 | 政治



横浜市が8月22日、山下埠頭へのIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致を表明しました。
また9月3日の横浜市議会で、市はIR誘致に向けた34億円の補正予算案を提出しました。
林文子市長は質疑で「横浜の将来への危機感からIR誘致を決断した」と言及し、観光や地域経済をけん引する事業だ」とし、市独自の調査を進めると語りました。

これに対しては、すでに様々なニュースが流れています。

最も目立ったのは、横浜港運協会会長で「ハマのドン」と異名をとる藤木幸夫氏が「顔に泥を塗られた」と怒りをあらわにしたことです。
藤木氏が会長を務める横浜港ハーバーリゾート協会は、カジノはいらないとして、国際展示場、F1、ディズニークルーズの拠点化計画を提出しています。

これだけ聞くと、地域を巡る利権争いのように見えますが、ことはそれにとどまりません。

もともとIRの候補地は3か所に絞ることになっていて、これまでに大阪市(府)、和歌山市、佐世保市で首長による誘致の正式決定が発表されていました。
ところが、これに加えて、苫小牧市、岩沼市、千葉市、東京都、常滑市、北九州市などが誘致に前向きで、それに横浜市が加わったわけです。
3か所に対して10都市ですから、これから誘致競争はますます激しさを加えるでしょう。
しかし、横浜が名乗りを上げたとなると、首都圏内の伝統ある大港町ということで、大いに有力視される可能性が高いでしょう。

じつは横浜が有力視されるのには、そうした表面的な理由とは別に、次のような背後事情があると言われています。

地元有力企業のトップであり、故小此木彦三郎元建設相ら政治家との太いパイプで知られた同氏(藤木氏)への配慮が市当局の決断を阻んでいた。
それが一転したのは、横浜選出の菅義偉官房長官が誘致にゴーサインを出したからだとされる。小此木氏の秘書経験が、菅氏の政治家としての原点であり、藤木氏もまた長年にわたる支援者でもあった。
今や大官房長官である菅氏は、藤木氏との決別も辞さずの決断をしたというのだ。この決断が林市長の背中を押したのではないか。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190827/pol1908270003-n2.html

また、次のような記事もあります。

横浜へのカジノ誘致の仕掛け人をあげるとするなら、菅官房長官ということになろう。週刊新潮 2015年ゴールデンウイーク特大号に以下の記述がある。

 昨年夏前、東京・永田町からほど近いホテル内の日本料理屋で数人の政界関係者による会合が催されていた。
 座の主役は、2012年12月以来、安倍内閣において官房長官の重責を担い続ける菅義偉氏だ。(中略)
 その場にいた政界関係者の1人によれば、会合の途中、雑談の流れの中で「統合型リゾート整備推進法案(カジノ法案)」の話になった。
 「やっぱり、候補地はお台場が有力なんですかね?」政界関係者の問いに、菅氏は顔色を変えずに応じた。
 「お台場はダメだよ。何しろ土地が狭すぎる」(中略)「横浜ならできるんだよ」

この会合が開かれたのが2014年の夏。ちょうど同じ年の8月16日の日経新聞に以下の記事が載ったのは偶然ではないだろう。
京浜急行電鉄は15日、カジノやホテルなどで構成する統合型リゾート(IR)を整備する構想を正式発表した。横浜市の山下埠頭を最有力の候補地と考えているもようで、実現すれば数千~1万人単位の雇用が生まれそうだという。

https://www.mag2.com/p/news/412835/2

そういえば、この9月17日から、京浜急行電鉄は、品川から横浜のみなとみらい地区に「京急グループ」として本社が移転します。
横浜を貫いて走る京急なら当然と思うかもしれませんが、拠点を横浜に置くことが、IRに重点を置くことと無関係とは言えないでしょう。
そしてこの移転に、横浜に縁の深い菅官房長官の息がかかっているという推測も成り立ちます。

さらに、菅官房長官のすぐそばには安倍首相とトランプ大統領との関係が控えています。

非営利・独立系の米メディア「プロパブリカ」が報じたところでは、2017年2月、ワシントンにおける日米首脳会談で、トランプ大統領から安倍首相にカジノを日本につくるよう要請があった。
ラスベガス・サンズを経営するカジノ王、シェルドン・アデルソン氏も同じ業界のCEO二人とともにこの首脳会談にあわせてワシントン入りし、安倍首相と朝食をともにしていた。(中略)
カジノ会社にとって日本は、世界で最も魅力的な「未開拓市場」の一つである。アデルソン氏は2014年5月にサンズ社が運営するシンガポールのカジノへのツアーを安倍首相のために手配するなど、日本政府に働きかけを続けてきた。

https://www.mag2.com/p/news/412835

林横浜市長は、こうした事情を聞かされて自分でも乗り気だったに違いありません。
しかし2017年の市長選挙の時は、選挙に勝つために「カジノは白紙撤回」と訴えました。
ところが、2年後の今年、手の平を返したように、住民の意向を無視して、平然とIR誘致を決定したのです。
じつは2018年に出された横浜市中期4か年計画には、すでにIR誘致の可能性が言及されていました。
筋書きはすでに出来上がっていたのですね。

ライターで編集者の石田雅彦氏は、次のように語ります。

そうした市の姿勢に対し、市民の間には不信感が募る。中期計画に関するパブリックコメントの約2割がIRに関する内容で、その94%がカジノを含むIRや市民の声を無視したIR計画推進に否定的なものになった。
横浜市はその後、IR誘致の情報収集や業者選定と委託などを行い始める。5月にはIR検討調査報告書を公表した。林市長は7月上旬、政府のIR整備の政令発表と同市の報告書の結果を受けた形で、もし仮に横浜にIRを誘致した場合、カジノを含むのは当然のこととし、誘致に関する住民投票で賛否を問うことはないと明言する。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20190831-00140545/

筆者は、横浜市の西区で生まれ育ちました。
北部に移ったいまも横浜在住者です。
IRの候補地とされている山下埠頭の周辺に小さいころから何度も行ったことがあります。
周辺には、山下公園や港の見える丘公園、元町商店街や山手の丘など、懐かしい場所がたくさんあります。
ですから、一市民としても、このよくなじんだ地域に富裕層をカモにした公認のカジノ(賭場)が出来て、依存症が増えたり、反社会的な勢力との結びつきが育つのを座視しているわけにはいきません。
市長は住民投票をやる気はないと言っているのですから、そう言い張る限り、リコール運動に一票を投じるつもりです。

しかし筆者は、そうした愛郷心から出た行動もさることながら、本当に問題とすべきはそこではないと思っています。
言い換えると、横浜にカジノが出来さえしなければいいのか、他なら構わないのかと問うべきなのです。
依存症が増える危険とか、反社会的勢力と結びつく危険といった問題点は、どこにカジノを置こうが転がっています。
またこれまでも、パチンコ、競輪、競馬、競艇など、およそギャンブルと名の付くものには、そうした危険がいつもつきまとっていました。

この問題の本質は、日本政府が、緊縮財政に固執して国内供給に見合う需要を作り出すことに失敗し、諸規制の緩和によって、あらゆる種類の外資を参入させてしまったことにあります。
つまり国内産業を健全に育てることを怠ってきたために、ガイジン様の資本やインバウンドに頼らざるを得なくなった情けない後進国状態を象徴しているのです。
これはIR法だけではなく、水道民営化法、移民法、種子法廃止……など、みな同じです。

カジノは、そのあがりの7割を営業主体であるカジノ経営者(ラスベガスのサンズ社など)が取り、15%を国が、残りの15%を自治体が取る、という約束になっています。
またも国富(国民の稼ぎ)が外国資本にチューチューと吸い取られていくさまがありありと見えるようですね。
15%のおすそ分けに与って、横浜市は財政難を克服できるのか!
また他国の例を見ても、水道民営化と同じように、カジノ経営は失敗する可能性がある。
その場合でも、外資はさっさと逃げ出すでしょう。
コストパフォーマンスのつけは、自治体がもっぱら背負うことになるでしょう。

林さん(菅さんと言った方がいいのかな)、きらびやかに「ミナトヨコハマ」を飾り立てることばかり考えず、地道に投資や消費を伸ばすことを考えたらどうでしょうか。
聞けば山下埠頭の向こう側の本牧埠頭では、今年の5月、2年10か月ぶりに、世界最大のコンテナ船が寄港して荷役を行なったそうです。
こちらの方の港湾整備にもっともっと力を入れてほしいですね。



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コメント (1)

日本の学者・エコノミストのほとんどはMMTを理解していない

2019年08月29日 14時07分14秒 | 経済

MMTの主唱者・ランダル・レイ教授

前2回の記事「MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する」では、いずれの患者たちもあまりの重症であるために、ついつい診察と診断が長くなりすぎました。
そこで、前2回で展開した記事のダイジェスト版をお送りします(少しだけ訂正と補足があります)。

詳しくお知りになりたい方は、下記を直接ご参照ください。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/5e55dccd53e80b1ffd733b2d407832e9
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/a87a7f5dd4c895ad790de8997b58c9c6

【症例1】MMTを実践すれば、インフレを止められず国債が紙切れ同然になって、財政が立ちいかなくなる可能性は否定しきれない。(中略)安倍政権では(中略)消費増税も2度先送りされてきた。いざという時に、果敢に利上げや増税ができるのかは疑わしい。財政主導の経済で生産性が落ち、中長期には日本経済の成長力が落ちる恐れはある。
(ダイヤモンド編集部・西井泰之 ダイアモンドオンライン 2019/7/17)

【診断】MMTでは、財政赤字はそれ自体悪ではなく、財政出動が行きすぎないようにする歯止めはインフレ率であると何度も断っています。
それに、消費増税の実施こそは、デフレの長期化を作り出してきたのです。
これまでの増税の延期がなぜ、高インフレ期になった時の増税を困難にする根拠になるのでしょうか。
また、財政主導の経済でどうして生産性が落ちるのですか。
逆に、政府がさまざまな公共部門に投資することによって、技術開発も進み、企業も活気を呈し、生産性があがるのです。
あなたは、おそらく日経新聞読みによくある「表層型ADHD」に罹患しています。

【症例2】MMTにおける中央銀行はこうした目標(物価上昇率2%)も出口(金融緩和の終わり)もない。政府の出す財政赤字をひたすら埋める役割を担うにすぎない。(中略)
逆説的だが、MMTによれば、政府が財政収支を気にしなくてよいのは、その気になればいつでも増税できるからだ。(中略)
MMTは政府に無限の課税権を認めているようにも思われる。
MMTが目指すのは脱デフレではなく、いわば「大きな政府」だ。

一橋大学経済学研究科・政策大学院教授・佐藤主光 プレジデントオンライン 2019/7/19

【診断】MMTはデフレ脱却ができない時には、お金を積み上げるだけの金融政策のみに偏したこれまでの政策を、もう少し実体経済を直接活性化させる財政政策主導に切り替えるべきだと主張しているにすぎません。
あなたは、いったいに、税の話ばかりしていますが、消費増税を強制してきたのはMMTではなく、政府財務省ですよ。
あなたは消費増税には反対らしい。
それなら、政府を責めるべきであって、なんで現代の貨幣や国債のしくみと回り方(「政府の赤字は民間の黒字」)を解明している「理論」に、増税の責任を押し付けるのでしょう。
MMTは「無限の課税権を認める」などと言ったことは一度もありません。
むしろ逆に、税とは政府の歳出の唯一の財源(であるべき)だという、誰もが陥っている考え方がそもそも間違いだという本質規定をしているのです。
MMTは、脱デフレのためには、金融政策偏重よりも積極的な財政政策にシフトした方がよいということをたしかに言っています。
ところでその場合、「大きな政府」(曖昧な言葉ですが)と脱デフレとは何が違うのでしょうか。
20年以上続くデフレで国民が苦しんでいる時に、「慢性的な需要不足を埋め合わせる」ために一時的に政府が「大きな政府」を演じることは悪いことでしょうか?
あなたは、まだ実施されてもいない「理論」を、すでに実施されている「政策」と勘違いして、それが招く高インフレとその結果として政府に「無限の課税」を許す事態に、極度におびえているようですから、「インフレ・フォビア」です。

【症例3】今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。(中略)ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。(中略)MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。
元財務省大臣官房審議官・有地浩 アゴラ 2019/7/21

【診断】あなたは、MMTについてだけではなく、お金についての知識もまるで持ち合わせていません。
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などというのは根も葉もない妄想です。
あなたは、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
事実は言うまでもなく、政府がたとえば10兆円の国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです。
お金とは、借用証書に過ぎません。
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません。
あなたのような無知な人が、かつて大臣官房審議官という職に就いていて、いったい大臣に何を進言したのでしょう。それが今日の政治家たちの緊縮脳の育成に一役買っているかもしれません。
あなたは、重度の「被害妄想狂」です。

【症例4】彼女(ケルトン教授――引用者注)の提唱するケインズ主義的な財政運営については、わが国は苦い経験がある。それは90年代、バブル崩壊後の財政運営で、120兆円規模の減税と公共事業の拡大が、景気対策という名目で行われた。しかし失われた20年が経過し、いまだデフレ脱却すらできていない。
公共事業が、その効果や効率を考えずに行われた結果、経済の大きな非効率を生じさせ、維持・補修コストに四苦八苦しているというのが現状だ。
わが国一般会計の歳出・歳入のギャップは「ワニの口」と呼ばれているが、これが大きく開くのは、バブル崩壊後とリーマンショック後の景気対策としての公共事業の追加(歳出の拡大)と減税(歳入の減少)が行われたためで、いまだ「ワニの口」は開いたままだ。

中央大学法科大学院教授・東京財団政策研究所主幹・森信茂樹 ヤフーニュース 2019/7/25

【診断】あなたは、デフレ脱却ができていない現在の状態の原因が、あたかも「120兆円規模の減税と公共事業の拡大」にあるかのように論じていますが、これはまったくのデタラメです。
一般的に減税を行なえば、企業はその浮いた分を投資に回すことができるし、また家計は消費や貯蓄に回すことができるはずでしょう。
また公共事業は、97年をピークとして、それ以降下がりっぱなし、いまでは当時の五分の二に減らされています。
そのため老朽化したインフラによって、災害に備えることができなくなっているのです。
自治体がこれらの「維持・補修コストに四苦八苦している」のは当然で、あなたの言っているのとは逆に、政府が公共事業費や補助金・地方交付税を削ってきたからにほかなりません。
歳入と歳出のギャップが「ワニの口」として開いているのを是が非でもPB黒字化という手法で埋めなければならぬというわけですね。
このたびの消費増税も、そのためにぜひ必要だと考えているのでしょう。
しかしMMTでは、政府内部のお財布事情、つまり「財政収支の健全化」に重きを置きません。
民間経済がいかに健全に機能しているかに重きを置くのです(「政府の赤字は民間の黒字」「政府の債務残高は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」)。
「ワニの口」が開いていることばかり心配するのは、税収だけを財源とみなすという錯覚に陥っているからです。
この錯覚が、デフレ、緊縮財政、消費増税、PB黒字化死守、「財政破綻の危機」扇動、政府の会計と家計との混同、公的資金が必要な時にすぐ「財源をどうするか」と問う態度など、すべてを縛ります。
税によってワニの口を埋める必要など、もともとないのです。
ところであなたは、財務省が言ってきたこと、行なってきたことをそのままオウムのように繰り返していますね。
そこでプロフィールを調べてみました。
「血は争えない」とはよく言われる言葉ですが、「出自は争えない」ものです。
「元財務官僚」とありました。あなたは「ザイム菌感染型脳障害」に深く侵されています。

【症例5】ケルトンは何もわかっていない。インフレが起きない国でこそ、MMT理論はもっとも危険なのだ。(中略)
日本ではインフレが起きにくい。(中略)MMT理論の最大の問題点はインフレになることではない。インフレにならない場合に起こる、過剰な財政支出による資源の浪費(中略)なのだ。
インフレが起きるのはむしろ歓迎だ。(中略)早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい。(中略)
ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはない、と言っていることから、彼女こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らかだ(中略)。
異常な低金利で財政支出を過度にすることは、現在の民間投資を阻害するクラウディングアウトを起こすのであるが、さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。

慶応義塾大学大学院准教授・小幡 績 ニューズウィーク日本版 7/25

【診断】まず、どうして日本ではインフレが起きにくいのですか。
戦争直後は別としても、戦後日本は少なくとも2回、インフレを経験しています。
一つは60年代の高度成長期、もう一つは80年代のバブル期。
デフレが20年以上続くと、たしかに日本ではインフレが起きにくいのだという錯覚に陥りがちです。
しかし、インフレが起きにくいような構造にしてしまったのはいったい誰でしょう。
それこそは、企業家や投資家の利益最大化だけを考える新自由主義イデオロギーの仕掛け人たちです。
あなたは、そうした歴史を見ずに、日本では一般にインフレが起きにくいという普遍化を行なって、彼らの罪悪を隠蔽しています。
次に、仮にあなたの珍説を認めたとして、なぜ、MMTはインフレの起きにくい国において最も危険なのか。
あなたは「過剰な財政支出による資源の浪費」と答えています。しかし誰も「過剰な」などとは言っていませんので、この形容詞をまず取ってください。
さて政府が財政支出を行なうと、本当に資源の浪費につながるでしょうか。
政府が何らかの財政支出を行って事業を発注し、民間がそのお金を使って何らかの事業を受注し、そこで初めて財政支出の意味が具体的に実現に向かう。
これが普通の「財政支出」の道筋ですね。
そうだとすると、政府の財政支出は、そのまま民間の経済活動を積極化することにつながるのではないでしょうか。
次にあなたは、「早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい」と、信じがたいことを言っています。
ちなみにこれまで繰り返してきたように、「自国通貨建ての国債発行で、政府がデフォルトすることは100%ありえない」というのは、MMTならずとも、古くからの私たちの共通了解事項であり、しかもこれは財務省のHPにも掲載されている常識です。
あなたは、そのことも理解せずに、MMTについて「ケルトンは何もわかっていない」などと大言壮語するのですから、こちらとしても答えようもない。
しかし、何が言いたいかはわからないでもありません。
それは、あなたの頭の中が、政府の投資と民間の投資とは非妥協的な二項対立であり、パイの決まった経済資源の奪い合いだという考えに固着してしまっているということです。だから、政府のデフォルトは、そのぶんだけ民間の取り分を増やすことにつながるはずで、だから、「日本経済」の再生のためには、望ましいことである、と、こういう論理になりますね。
ガキの陣取り合戦みたいに一国の経済を考えている。
たとえばあなたが、地方で土木建設会社を経営していて、政府の財政支出(つまり「財政赤字」)によって、道路などの公共施設の建設を受注したとします。
そうしてその建設によって、あなたが利益を得るだけでなく、その道路を利用する人たちが大いに増え、その結果、いままで沈滞していた地方の街が活気を帯びることになります。
このプロセスに、政府と民間の二項対立が存在しますか?
その前に政府がデフォルトしてしまっていたら、インフラ整備による地方活性化のこの試みは、まったく成立しないのではありませんか?
またあなたは、「ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはないと言っている」などと、自分の誤った思い込みを勝手にケルトン教授に投影させていますが、彼女はそんなことは一言も言っていません。
それは先ほどあなた自身が言ったことでしょう?
しかも「心配することはない」とは逆に、「だからこそ危険なのだ」とヘンなリクツをつけて。
MMTでは、財政支出に制約があるとすれば、それはインフレ率だ、と何度も明確に述べています。
統合失調症の一症状に、自分で作り上げた妄想観念をそのまま他人に投影するというのがあります。
「あいつは頭がおかしくなって〇〇病院に運ばれた」というように。
あなたは、ここで、それと等しいことをやっていますね。
ここへきて、ようやくあなたの錯乱症状の根本原因が明確になりました。
「異常な低金利で財政支出を過度にする」などということはMMTと何の関係もありません。
異常な低金利は、むしろ日本政府が過度な金融緩和を、それもマネタリーベースの範囲内だけで行ったために市中にお金が流れなかったことと、デフレマインドがこの政策によっては一向に解消しないことから起きたことです。
積極的な財政支出(つまり民間を直接に刺激する)を適切に行なえば、マイルドなインフレが生じて、企業の貸し出しも増え、おそらく金利もそこそこ上がるでしょう。
銀行も一息つくことができます。
このように、あなたは間違いだらけを並べたてた後で、将来にわたって民間投資を阻害するのが、クラウディングアウト(大量の国債発行による金利の上昇によって民間の資金需要が抑制されるという説)によるものだと決めつけています。
これは、財政支出こそすなわち民業圧迫だという単純なリクツに金縛りになっていることを表しています。
このリクツは、政府を極小にせよ、というネオリベ(新自由主義)イデオロギーを子どもみたいに信じたところからきています。
全体の文章が支離滅裂ですが、一度このイデオロギーに取りつかれると、そんなことはどうでもよくなってしまうのですね。
あなたを、「ネオリベ・ウィルスの侵襲による錯乱症」と名付けておきましょう。

MMTの上陸によって生じたさまざまな患者の症状を見てまいりました。
この後も、同じような患者は増え続けています。
しかしいちいち診察している時間がありません。
またの機会に譲らせていただきます。

私の中に残るのは、やはり、まともな理論、まともな事実を指摘されると、日本のおえらいさんたちは自分のこれまでの立場が脅かされるのに怯えて、こんなにも感情的な拒絶反応を引き起こすのかという、深い慨嘆です。
しかしめげてはなりません。
ちょうど明日(8月30日)には、MMTの主唱者であるランダル・レイとビル・ミッチェルの共著『MMT現代貨幣理論入門』が発売になりますし、なんと10月には、レイ教授が、そして11月には、ビル・ミッチェル教授が来日することが決定しています。
正しい理論についての理解を粘り強く広め、日本の官僚、学者、エコノミスト、マスコミが罹患している深い病気を少しでも治していきましょう。


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コメント (1)

MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する(その2)

2019年08月18日 19時11分27秒 | 経済



【症例4】インフレは突然やって来るが、増税は突然には発動できない。バブル期の土地税制の経緯を見ても、土地バブルが問題になり土地基本法が制定された89年から、地価税が導入される92年まで3年以上かかっている。そもそもあらかじめ決める増税は、所得税なのか消費税なのか、あるいは法人税なのか、だれがどのように国民の合意を求めるのだろうか。
もう一つ、彼女(ケルトン教授――引用者注)の提唱するケインズ主義的な財政運営については、わが国は苦い経験がある。それは90年代、バブル崩壊後の財政運営で、120兆円規模の減税と公共事業の拡大が、景気対策という名目で行われた。しかし失われた20年が経過し、いまだデフレ脱却すらできていない。
公共事業が、その効果や効率を考えずに行われた結果、経済の大きな非効率を生じさせ、維持・補修コストに四苦八苦しているというのが現状だ。
わが国一般会計の歳出・歳入のギャップは「ワニの口」と呼ばれているが、これが大きく開くのは、バブル崩壊後とリーマンショック後の景気対策としての公共事業の追加(歳出の拡大)と減税(歳入の減少)が行われたためで、いまだ「ワニの口」は開いたままだ。
(中央大学法科大学院教授・東京財団政策研究所主幹・森信茂樹 ヤフーニュース 2019/7/25)

【診断】あなたもまた、治癒の難しい症状に侵されているようです。
長い診察になります。
インフレは突然やってくる? インフレは大地震などの自然災害ではありませんよ。
人間社会のさまざまな要因が重なって起きる純然たる社会現象です。
だからこそ行き過ぎが見られた時には、政府が適切なコントロールをすることが可能なのです。

また、土地バブルとインフレとを混同してはなりません。
土地バブルは、金融市場に過剰な資金があふれたために、金融機関や土地ころがしが不動産の爆買いをして暴利を狙った末に起きた現象です。
インフレとは、供給が需要に(たとえわずかなりとも)追い付かない状態一般を指します。
これが緩やかに生ずることで、実体経済への投資が行なわれ、生産活動が活発となり、賃金も上昇しますから、消費が息を吹き返し、デフレ不況から脱却できるのです。

安倍政権は、この20年間つづいたデフレからの脱却を目指しながら、その方法を金融緩和にだけ偏らせ、おまけにデフレ脱却を阻む最大要因である緊縮財政に徹してきたため、見事に失敗したのです。
しかしその目標は2%程度のインフレを目指すというものでしたから、目標自体は間違っていなかったのです。
でも方法が悪かったのですね。
それなのに、あなたは、インフレそのものが悪であるかのように考えている。

あなたは、MMTがインフレ抑制の手段として増税しか提唱していないかのように論じていますが、これも間違っています。
政策金利を引き上げるという手もありますし、日銀が国債の売りオペを行なって過剰な流動資金を吸い上げるという手もあります。
また、仮に増税手段に訴えるとすれば、何税を引き上げるかは、自明です。
高所得者の所得税の累進率を高め、グローバル企業が不当に安い法人税しか払っていない状態を改めさせ、株式などに適用されている分離課税制度をやめればよい。
これらによって、貧富の格差をできるだけ小さくすることができます。
日本は(一応)民主主義国ということになっているのだから、政府がこれらの効用についてきちんと説明しさえすれば、大方の国民の合意が得られるに決まっています。

またあなたは、デフレ脱却ができていない現在の状態の原因が、あたかも「120兆円規模の減税と公共事業の拡大」にあるかのように論じていますが、これはまったくのデタラメです。
一般的に減税を行なえば、企業はその浮いた分を投資に回すことができるし、また家計は消費や貯蓄に回すことができるはずでしょう。
また公共事業は、97年をピークとして、それ以降下がりっぱなし、いまでは当時の五分の二に減らされています。
そのため老朽化したインフラによって、災害に備えることができなくなっているのです。
自治体がこれらの「維持・補修コストに四苦八苦している」のは当然で、あなたの言っているのとは逆に、政府が公共事業費や補助金・地方交付税を削ってきたからにほかなりません。
「失われた20年が経過し、いまだデフレ脱却すらできていない」のは、減税や公共事業の拡大のせいではなく、財務省の緊縮財政路線とその一環としての消費増税のせいです。

最後の一節には、あなたの本音がいみじくも出ています。
歳入と歳出のギャップが「ワニの口」として開いているのを是が非でもPB黒字化という手法で埋めなければならぬというわけですね。
このたびの消費増税も、そのためにぜひ必要だと考えているのでしょう。
しかしMMTでは、政府内部のお財布事情、つまり「財政収支の健全化」に重きを置きません。
民間経済がいかに健全に機能しているかに重きを置くのです(「政府の赤字は民間の黒字」「政府の債務残高は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」)。

「ワニの口」が開いていることばかり心配するのは、税収だけを財源とみなすという錯覚に陥っているからです。
この錯覚が、デフレ、緊縮財政、消費増税、PB黒字化死守、「財政破綻の危機」扇動、政府の会計と家計との混同、公的資金が必要な時にすぐ「財源をどうするか」と問う態度など、すべてを縛ります。
政府はもともと、集められた税収を使って国費に充当するのではありません。「スペンディング・ファースト」と言って、まず政府短期証券などの形で日銀当座預金からお金を引き出してから(といっても記載するだけですが)、税を集めて国費の一部を補てんするのです。
これは、純然たる会計上の事実です。
税によってワニの口を埋める必要など、もともとないのです。

ですから、無税国家は理念としては可能ですが、徴税の四機能(国民経済の安定化、所得の再分配、自国通貨納税による経済活動の維持、公共性を害する経済活動に対する処罰)を無しにしてしまうと、一国の経済政策のタガが外れて、政府の統制が壊れ、アナーキーな状態に転落します。
徴税の意味は、そこにこそあります。

ところであなたは、財務省が言ってきたこと、行なってきたことをそのままオウムのように繰り返していますね。
そこでプロフィールを調べてみました。
「血は争えない」とはよく言われる言葉ですが、「出自は争えない」ものです。
「元財務官僚」とありました。
もしかして、財務省自身があからさまに言えないことを、言ってくれるように財務省に頼まれているのかもね。
それはともかく、あなたは「ザイム菌感染型脳障害」に深く侵されています。
治癒までには、一生かかるかもしれないことをご覚悟ください。


【症例5】:ケルトンは何もわかっていない。インフレが起きない国でこそ、MMT理論はもっとも危険なのだ。
インフレが起こる国であれば、MMT理論(中略)は問題ない。支出が多すぎれば、インフレをもたらし、すぐに財政支出の拡大が経済に悪影響をもたらすことが認知され、財政支出が極端に過度になる前に止まる。
しかし、インフレが起きにくいとしたらどうだろう。
財政支出は無限に膨らみかねない。だから、日本でMMTは危険なのだ。
日本ではインフレが起きにくい。だから、財政支出が課題となっても、現在世代の人々はそれが経済を傷めていることに気づかない。MMT理論の最大の題点はインフレになることではない。インフレにならない場合に起こる、過剰な財政支出による資源の浪費(中略)なのだ。
インフレが起きるのはむしろ歓迎だ。ハイパーインフレにならないほうがいいが、まったくインフレが起きず、永遠に無駄遣いが続き、日本経済がゼロになってしまうよりは、早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい。企業が最後まで無理をして、破産するよりも生きているうちに倒産して、新しい経営者の下で再生を図ったほうが良いのと同じである。(中略)しかし、彼ら、つまりMMTを主張する人々が気づいていないのは、インフレになるかどうかではなく、その財政支出が効率的なものであるかどうか、財政支出をするべきかどうか、というところが最大のポイントだということだ。しかも、其の点においてMMT理論は理論的に破綻していることに気づいていない。
ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはない、と言っていることから、彼女こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らかだ(中略)。
すなわち、MMT理論から出てくる財政支出を拡大すべきだ、という主張は、その支出が有効なものか立証されていない。(中略)MMT理論自体が、財政支出が効率的な水準になることを阻害するどころか、そのメカニズムを破壊するところから理論をはじめているところに致命的な欠陥がある。すなわち、国債は中央銀行が引き受けるメカニズムになっており、国債市場が機能しないようになっているところである。(中略)
異常な低金利で財政支出を過度にすることは、現在の民間投資を阻害するクラウディングアウトを起こすのであるが、さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。

(慶応義塾大学大学院准教授・小幡 績 ニューズウィーク日本版 7/25)

【診断】失礼ながら、あなたは錯乱の度がひどいので、あなたを正気に立ち返らせることができるかどうか、正直なところ私にも自信がありません。
でも、どういうふうに錯乱しているかだけはちゃんと指摘しておきましょう。

まず、どうして日本ではインフレが起きにくいのですか。
その根拠を、慶応大学大学院准教授、説明してもらえませんか。
戦争直後は別としても、戦後日本は少なくとも2回、インフレを経験しています。
一つは60年代の高度成長期、もう一つは80年代のバブル期。

次に、仮にあなたの珍奇な説を認めたとしましょう。
ではなぜ、MMTはインフレの起きにくい国において最も危険なのか。
「過剰な財政支出による資源の浪費」とは、政府が資源の浪費を行なうという意味ですね。
誰も「過剰な」などとは言っていませんので、この形容詞をまず取ってください。
でも政府が財政支出を行なうと、本当に資源の浪費につながるでしょうか。

政府が何らかの財政支出を行って事業を発注し、民間がそのお金を使って何らかの事業を受注し、そこで初めて財政支出の意味が具体的に実現に向かう。
これが普通の「財政支出」の道筋ですよね。
公共機関の職員がそのまま出ていって、じっさいに「えんやこら」をやり出すなんてことは万に一つもあり得ないでしょう。
さてそうだとすると、政府の財政支出は、そのまま民間の経済活動を積極化することにつながるのではないでしょうか。
これは、民間にデフレマインドが染みついていて、誰も積極的な投資を行わない時に、政府が刺激を与える効果を生みますから、別に民間の経済活動を邪魔することにはならないでしょう。

次にあなたは、「永遠に無駄遣いが続き、日本経済がゼロになってしまうよりは、早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい」と、信じがたいことを言っていますが、どうして政府がデフォルトする方がいいのですか。
ちょっと「トンデモ」という以外、形容のしようがないご説です。

ちなみにこれまで繰り返してきたように、「自国通貨建ての国債発行で、政府がデフォルトすることは100%ありえない」というのは、MMTならずとも、古くからの私たちの共通了解事項であり、しかもこれは財務省のHPにも掲載されている常識です。
あなたは、そのことも理解せずに、MMTについて「ケルトンは何もわかっていない」などと大言壮語するのですから、こちらとしても答えようもない。

しかし、何が言いたいかはわからないでもありません。
それは、あなたの頭の中が、政府の投資と民間の投資とは非妥協的な二項対立であり、パイの決まった経済資源の奪い合いだという考えに固着してしまっているらしいということです。
どうもそれが、この錯乱の核心をなしているようです。
だから、政府のデフォルトは、そのぶんだけ民間の取り分を増やすことにつながるはずで、だから、「日本経済」の再生のためには、望ましいことである、と、こういう論理になりますね。

でもこんな机上の単純論理で「日本経済」は回っていません。

たとえばあなたが、地方で土木建設会社を経営していて、政府の財政支出(つまり「財政赤字」)によって、道路などの公共施設の建設を受注したとします。
あなたは入札に成功したのです。
あなたは、さっぱり不景気だったのに、久しぶりに仕事が入ったと喜んで、建設に必要な資材、労働力などを駆り集め、さっそく作業に入ります。
もちろん、利益がどのくらい出るかは、あらかじめ計算済みです。
そうしてその建設によって、あなたが利益を得るだけでなく、その道路を利用する人たちが大いに増え、その結果、いままで沈滞していた地方の街が活気を帯びることになります。

このプロセスに、政府と民間の二項対立が存在しますか?
その前に政府がデフォルトしてしまっていたら、インフラ整備による地方活性化のこの試みは、まったく成立しないのではありませんか?

次に、財政支出が「効率的」なものかどうかが最大のポイントだ、とあなたは言っていますが、ここにはしなくもあなたの新自由主義ゴリゴリのイデオロギーがにじみ出ています。
もちろん、ケルトン教授は、政府の財政支出に関して、優先順位を決めることの重要性を強調していました。
しかしそれはあなたの主張するように、「効率的かどうか」(いったい何にとって、誰にとっての?)を尺度とするものではありません。
一般国民の安全や豊かさを確保するために、いま何を優先させるべきかを、その都度政治的に決定していくことが要求されるのです。

またあなたは、「ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはないと言っている」などと、自分の誤った思い込みを勝手にケルトン教授に投影させていますが、彼女はそんなことは一言も言っていません。
それは先ほどあなた自身が言ったことでしょう?
しかも「心配することはない」とは逆に、「だからこそ危険なのだ」とヘンなリクツをつけて。
これによって、あなた「こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らか」です。

MMTでは、財政支出に制約があるとすれば、それはインフレ率だ、と何度も明確に述べています。

統合失調症の一症状に、自分で作り上げた妄想観念をそのまま他人に投影するというのがあります。
「あいつは頭がおかしくなって〇〇病院に運ばれた」というように。
あなたは、ここで、それと等しいことをやっていますね。

さらにあなたは、「財政支出を拡大すべきだ、という主張は、その支出が有効なものか立証されていない」などと批判していますが、ある支出が有効なものかどうか(何にとって、誰にとって?)、あらかじめ立証できる人がいたらお目にかかりたい。
あなたならできるんでしょうね。
効率のことしか頭にないあなたに、ぜひ立証してみせてほしいものです。

あなたのMMT批判はますます錯乱の度合いを深めています。
「MMT理論自体が、財政支出が効率的な水準になることを阻害するどころか、そのメカニズムを破壊するところから理論をはじめている」とは、財政支出を一切排して、すべてを民業にまかせれば、いつでも経済の効率性は最大限に実現されると主張するのでもなければ、意味不明な文章です。

次に続く文章も明確な間違いです。
中央銀行が必要に応じて国債を引き受けることができるのは事実ですが、そのために、「国債市場が機能しないようになっている」などということはありません。
現に市中の金融機関が国債を大量に買い込み、そこから、民間の預金を創造しているではありませんか。
もっとも、この6年間、過剰な金融緩和により、金融機関保有の国債の割合が激減してきたことは事実ですが、それは安倍政権が勝手に取った金融政策の結果であり、MMTにその責任を押し付けるのは、ひどい濡れ衣というものです。

最後です。
ここへきて、ようやくあなたの錯乱症状の根本原因が明確になりました。
「異常な低金利で財政支出を過度にする」などということはMMTと何の関係もありません。
異常な低金利は、むしろ日本政府が過度な金融緩和を、それもマネタリーベースの範囲内だけで行ったために市中にお金が流れなかったことと、デフレマインドがこの政策によっては一向に解消しないことから起きたことです。
積極的な財政支出(つまり民間を直接に刺激する)を適切に行なえば、マイルドなインフレが生じて、企業の貸し出しも増え、おそらく金利もそこそこ上がるでしょう。
銀行も一息つくことができます。

このように、あなたは間違いだらけを並べたてた後で、将来にわたって民間投資を阻害するのが、クラウディングアウト(大量の国債発行による金利の上昇によって民間の資金需要が抑制されるという説)によるものだと決めつけています。
これは何が言いたいのでしょう。
財政支出は、すなわち民業圧迫だという単純なリクツに金縛りになっていることを表しています。

このリクツの出所がどこかは明らかですね。
政府を極小にせよ、というネオリベのイデオロギーを子どもみたいに信じたところからきています。
全体の文章が支離滅裂ですが、一度このイデオロギーに取りつかれると、そんなことはどうでもよくなってしまうのですね。
あなたをとりあえず、「ネオリベ・ウィルスの侵襲による錯乱症」と名付けておきましょう。

MMTの上陸によって生じたさまざまな患者の症状を見てまいりました。
私の中に残るのは、やはり、まともな理論、まともな事実を指摘されると、日本のおえらいさんたちは自分のこれまでの立場が脅かされるのに怯えて、こんなにも感情的な拒絶反応を引き起こすのかという、深い慨嘆です。
この兆候を最近は「センメルヴェイス反射」と呼ぶそうですが、すでにフロイトが100年以上も前に、「否認」という概念で説明しています。

ケルトン教授の講演後の記者会見で出なかった質問が二つあります。
一つは、JGP(雇用保障プログラム)についてです。
もう一つは、安倍政権が取り続けているPB黒字化政策の是非についてです。
これらは、さっきの話をちゃんと聞いていて、しかも日本経済の現状を多少とも憂慮しているなら、当然出てきてしかるべき質問です。
代わって出てきたのは、ほとんどがインフレ懸念ばかりでした。
私は、これまで取り上げてきた学者、エコノミスト(錯乱症の小幡氏を除く)と同じように、日本の経済ジャーナリズム全体が、デフレのただ中にありながら、強度のインフレ恐怖症に侵されているという、まことに残念な印象を持ちました。

しかしめげてはなりません。
11月には、「MMTの教科書」の執筆者、オーストラリアのビル・ミッチェル教授が来日する予定です。
正しい理論についての理解を粘り強く広め、日本の官僚、学者、エコノミスト、マスコミが罹患している深い病気を少しでも治していきましょう。

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MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する(その1)

2019年08月09日 00時26分13秒 | 経済



ステファニー・ケルトン教授が来日してから、3週間以上が経ちました。
その間、日本の経済学者、エコノミストなどの発言がいくつも出ましたが、わずかな例外を除いて、大部分がMMTについての無理解と、日本経済の現状に対する無知をさらすものでした。
筆者は経済学なるものを正式に学んだことはありませんが、その素人の目にも、これはほとんど病気だとしか思えないような発言が目立ちます。
MMTがどうのという前に、この人たちは、専門家面をしていながら、マクロ経済の基本がわかっていません。
それらしき専門用語を使っていながら、人を煙に巻くだけではなく、頭が病理的な段階に入っていて、自分でも何を言っているのかわかっていないのではないでしょうか。
こういうひどい「経済言説」がはびこっている日本の現状を深く憂慮します。
せっかくケルトン教授に来てもらった以上、こうした頭のおかしい言説群を少しでも吹き払うのでなければ、彼女に申し訳が立ちません。
「やっぱり日本て、ダメね」と思われて悔しく、また恥ずかしくないでしょうか。

そこで、ここでは、これらの《症例》を発表順にいくつか挙げて、それに対して厳しい診断を下すことにします。

【症例1】MMTを実践すれば、インフレを止められず国債が紙切れ同然になって、財政が立ちいかなくなる可能性は否定しきれない。(中略)安倍政権では首相の意に沿う日銀総裁やリフレ派の審議委員が任命され、日銀が事実上の財政ファイナンスに踏み出し、消費増税も2度先送りされてきた。いざという時に、果敢に利上げや増税ができるのかは疑わしい。財政主導の経済で生産性が落ち、中長期には日本経済の成長力が落ちる恐れはある。(ダイヤモンド編集部・西井泰之 ダイヤモンドオンライン 2019/7/17)

【診断】MMTでは、財政赤字はそれ自体悪ではなく、財政出動が行きすぎないようにする歯止めはインフレ率であると何度も断っています。
それをコントロールすることが政府日銀の役割であり、それには増税だけではなく、さまざまな方法が考えられるとされています。
どういう実体経済の現場から高インフレの兆候が出てきているのかをまず具体的に精査することが必要だと、ケルトン教授は記者会見で答えていました。
あなたはそれを聞かないで書いているようですね。
それに、消費増税の実施こそは、デフレの長期化を作り出してきたということがまるで分っていません。
これまでの増税の延期がなぜ、高インフレ期になった時の増税を困難にする根拠になるのでしょうか。
また、財政主導の経済でどうして生産性が落ちるのですか。
逆でしょう?
政府がさまざまな公共部門に投資することによって、技術開発も進み、企業も活気を呈し、生産性があがるのではないですか。
前後で論理がまるで通っていませんね。
あなたは、おそらく日経新聞読みによくある「表層型ADHD」に罹患しています。

【症例2】平時における財政赤字には、金利上昇やインフレにつながるリスクがないだろうか? MMTは「心配ご無用」という。自国通貨建てで国債を発行する政府は、これをいつでも自国通貨に換えることができるからである。(中略)MMTにおける中央銀行はこうした目標(物価上昇率2%)も出口(金融緩和の終わり)もない。政府の出す財政赤字をひたすら埋める役割を担うにすぎない。
中央銀行が国債を引き受けるなら、財政赤字はそのまま貨幣の増発になる。いずれインフレを誘発しないのだろうか?
しかし、MMTによれば、貨幣が増え過ぎても、その価値が毀損することはない。
逆説的だが、MMTによれば、政府が財政収支を気にしなくてよいのは、その気になればいつでも増税できるからだ。
MMTは高い成長を見込んでいるわけではない。自然増収ではなく増税なしには貨幣を回収できない。
MMTは課税を貨幣(タンス預金)の回収とみなすが、回収の仕方に配慮がないようだ。仮に消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だろう。(中略)MMTは政府に無限の課税権を認めているようにも思われる。
MMTが目指すのは脱デフレではなく、政府が主導する(慢性的な需要不足を埋め合わせる)経済の再構築、いわば「大きな政府」だ。金融政策を補完する(助ける)ための財政政策でもない。MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている。
(一橋大学経済学研究科・政策大学院教授・佐藤主光 プレジデントオンライン 2019/7/19)

【診断】あなたは一橋大教授という高い地位にありながら、かなりの重症に侵されています。
少し時間をかけて診察しましょう。
まずあなたは、MMTを実施する政府による歯止めのない財政出動が、中銀を奴隷化することを心配されているようですが、政府と中銀はもともと統合政府です。
しかし財政政策と金融政策という役割分担はおのずとあって、このことはMMTでも何ら変わりありません。
MMTはデフレ脱却ができない時には、お金を積み上げるだけの金融政策のみに偏したこれまでの政策を、もう少し実体経済を直接活性化させる財政政策主導に切り替えるべきだと主張しているにすぎません。
高インフレをコントロールするのは、統合政府が二人三脚で行えばよいのです。
つぎに、「MMTによれば、貨幣が増え過ぎても、その価値が毀損することはない」とありますが、そんなことは、MMTは一言も言っていません。
インフレが行き過ぎれば貨幣価値が毀損するのは当然のことで、MMTは、財政赤字の制約をまさにそこに置き、そのためのプランをいくつも提示しています。
つぎに、MMTは、デフレからの脱却や高インフレの抑制のために、政府と民間との経済的関係の事実を解き明かしているだけであって、資本主義であるかぎり、成長(国民が豊かになること)のためのヒントを提供しているのは当然です。
仮にMMTが高成長を望んでいるとあからさまに言明していなくても、経済成長が実現するような政策を政府がとるなら、税の自然増収が期待できますから、増税をあえて強制する必要はなくなるでしょう。
あなたは、いったいに、税の話ばかりしていますが、消費増税を強制してきたのはMMTではなく、政府財務省ですよ。
「消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だ」と言っているところを見ると、消費増税には反対らしい。
それなら、政府を責めるべきであって、なんで現代の貨幣や国債のしくみと回り方(「政府の赤字は民間の黒字」)を解明しているだけの「理論」に、増税の責任を押し付けるのでしょう。
MMTは「無限の課税権を認める」などと言ったことは一度もありません。
むしろ逆に、税とは政府の歳出の唯一の財源(であるべき)だという、誰もが陥っている考え方がそもそも間違いだという本質規定をしているのです。
ケルトン教授は、財政赤字をそんなに気にする必要はないということを説明するために、次のように言いました。
「政府の債務残高(例の1200兆円云々)は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」
これは、裏を返せば、まさに税の機能が政府の歳出のためにあるのではなく、別のところにあることを示唆していることになります。
それは、ビルトインスタビライザー(経済の安定化装置つまりインフレやデフレの調整)、所得の再分配機能、自国通貨納税による経済活動の維持、公共性を害する経済活動に対する処罰の四つです。
そういうわけで、あなたは、反論のピントがまるでずれているのです。
さらに、たしかにMMTは脱デフレを「目指して」はいませんが、現在の日本のようにデフレがこれほど続いている時に、政府が取るべき政策の間違いについては指摘しています。
MMTは、脱デフレのためには、金融政策偏重よりも積極的な財政政策にシフトした方がよいというヒントを与えているからです。
ところでその場合、「大きな政府」(曖昧な言葉ですが)と脱デフレとは何が違うのでしょうか。
20年以上続くデフレで国民が苦しんでいる時に、「慢性的な需要不足を埋め合わせる」ために一時的に政府が「大きな政府」を演じることは悪いことでしょうか?
しかし、そもそもMMTは、「小さな政府」か「大きな政府」のどちらがよいかなどというイデオロギーの選択を迫るような「政治思想」ではありません。
民間の景気がよい時には、政府の役割は小さくて済みますから、その時には「小さな政府」がよいと言ってもあながち間違いではないでしょう。
これはMMTの一環であるJGP(雇用保障プログラム)のアイデアを見ればよくわかります。
繰り返しますが、MMTは国民が豊かになるためには、どういう考え方をしたらよいかを示す「理論」です。
最後に、「MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている」とはいったい何のことでしょう。
意味不明ですね。
大規模な財政出動をした時に、高インフレが生じ、その尻拭いを日銀がする羽目に陥るという意味でしょうか。
しかし日銀ばかりでなく、政府が赤字財政を少し抑えることはいくらでもできますよね。
それにしても、まだMMTはどこでも「使われてい」ませんよ。
あなたは、まだ実施されてもいない「理論」を、すでに実施されている「政策」と勘違いして、それが招く高インフレとその結果として政府に「無限の課税」を許す事態に、極度におびえているようですから、「藁人形恐怖症」です。

【症例3】今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。(中略)MMTによれば、政府の財政需要をまかなうために、日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買うわけだから、円は供給過剰となって価値が下がるに決まっている。これは私だけでなくヘッジファンドなど世界中の投機家も円安を見越して円売りドル買いをするだろうから、ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。(中略)紙幣の価値が、中央銀行が持つ銀や金で裏打ちされている時代と違い、現在はどの国も国の信用(徴税力)だけが裏付けとなっている。MMTを実施すると言った瞬間に、この信用が根底から揺るがされるのだ。(中略)MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。(元財務省大臣官房審議官・有地浩 アゴラ 2019/7/21)

【診断】あなたについては、前々回のこのブログでも取り上げたのですが、あまりに無知なので、もう一度診察室に来てもらいました。
あなたは、MMTについてだけではなく、お金についての知識もまるで持ち合わせていません。
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などというのは根も葉もない妄想です。
次に、「日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買う」などといっていますが、財務省出身のくせに、日銀が国債を買う(貸す)際に紙幣など刷らないということを知らないのでしょうか。
この人は、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
事実は言うまでもなく、政府が国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです。
現金紙幣なんて、そんなに動いていないのですよ。
私たちは、日常生活で現金紙幣を用いていますから、「お金」と聞くとすぐに現金紙幣を思い浮かべてしまいますが、日銀当座預金に書き込まれた数字も、政府小切手も、企業・組織の預金通帳に書き込まれた数字も、すべて「お金=借用証書」なのです。
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません。
通貨とは、不換紙幣だけではありません。
それはごく一部であって、日銀当座預金や銀行預金に書き込まれた数字(万年筆マネー)も、カードで買い物をして記録された数字も、政府小切手もみな一種の通貨です。
MMTが財政出動を促す場合にもこのことは変わりありませんから、「信用が根底から揺るがされる」などということは、200%あり得ません。
あなたは、財務省時代、大臣官房審議官という職に就いていて、いったい大臣に何を進言したのでしょう。
あなたのような無知な人が、政治家にもっともらしく何か吹き込んだとすれば、それが今日の政治家たちの緊縮脳の育成に一役買っているかもしれません。
あなたは、重度の「インフレ被害妄想狂」です。
(次号に続く)


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ウォルター・シャイデル『暴力と不平等の人類史』書評

2019年08月04日 00時08分18秒 | 思想


以下に掲げるのは、産経新聞文化部より依頼されて寄稿した、ウォルター・シャイデル著『暴力と不平等の人類史』の書評です。
この書は、トマ・ピケティ『21世紀の資本』、ダグラス・マレー『西洋の自死』などと並んで、現代の世界状況に対する極めて重要な問題を提起しています。
字数の関係もあって、意を尽くしていませんが、いずれこの書に関しては、もう少し詳しく批評を展開したいと思っています。


 本文六百頁に及ぶ大著。
 著者は、ジニ係数と資産や所得の総額に対する割合とを用いて、人類史上経済的な不平等がどんな時に抑えられたかを浩瀚かつ克明に調べ上げる。
その結果「四人の騎士」と称して、戦争、革命、国家の破綻、疫病(ペストの流行)の四つが不平等を軽減したという結論を得る。
しかも古代アテナイを例外として、前近代における戦争や革命は、平等化に大して貢献しなかったと説く。
二度の世界大戦とロシア革命や中国革命だけが不平等を抑える大きな力を示したというのだ。
しかしこれらの力もそう長くは続かなかった。

 近代以後の戦争や革命が恐るべき犠牲や破壊を伴ったことは自明だから、著者は、平等の達成と膨大な死や破壊とは後者が前者の条件をなすと言っているに等しい。
雑駁に言えば、平等化の実現とは、みんなが豊かになったのではなく、みんなで貧しくなったことを意味する。ということは、裏を返せば、曲がりなりにも「平和な秩序」が保たれている時期には、資産や所得の格差は一貫して増大していたことになる。
著者の筆致はあくまで冷静で、いろいろなケースに慎重な配慮を巡らしてはいるが、論理的にはどうしてもそうならざるを得ない。

 そしてこの指摘は、自由貿易や金融資本の自由化が進み、グローバル化が行きつくところまで行った今日、私たちに明確な思い当たり感を与える。
グローバル化が進むのは平和な時期に限られるからだ。
事実、アメリカに代表される極端な富の集中という現実がグローバリズムによってもたらされたことは、否定しようがないのである。

 読者の中にはかつてトマ・ピケティが『21世紀の資本』を著して、資本収益率が経済成長率を上回る場合には常に貧富の格差が開くと説いた事実を思い起こす人も多いだろう。
これも踏まえて議論すべきは、巨大な暴力なしに「一%対九九%」問題を解決する道はありうるかという一点なのだ。
著者シャイデルは多くの社会改良案を紹介しつつ、それらに懐疑的な眼差しを注ぐ。
筆者もこの懐疑に暗澹たる気持ちと共に共感する。

 ちなみに日本の場合には、「騎士」の仲間に「大災害」を加えてもらうべきだろう。

コメント

MMTの正しさ、リフレ派の誤り、誤解のひどさ

2019年07月24日 09時08分24秒 | 経済



7月16日にMMT(現代貨幣理論)の主唱者であり、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が来日しました。
衆議院議員会館で講演し、多くのメディアの記者会見にも応じました。
筆者も講演を聞くことができましたが、明快な論理と巧みな比喩を用いて、MMTの本質を展開してくれました。
また三回にわたって三橋TVに出演し、その理論と日本が抱える経済問題についてわかりやすく解説してくれました。
ケルトン教授の説くところは、これまで中野剛志氏、藤井聡氏、三橋貴明氏ら、一部の人たちによってさんざん言われてきたこととほとんど変わりませんが、これを機会に、MMTの主張も含めて、日本経済についての正しい議論をまとめておきたいと思います。

①自国通貨建ての国債発行額には原則として制約がない。政府はその限りでは、財政赤字を気にする必要はない。
②ただし、インフレ率という制約があり、政府・中銀は、過度なインフレになる兆候が見えた時には、コントロールする必要があるし、それは金利調整や増税などによって可能である。ただしインフレの場合でも、消費増税である必要は全くない。富裕層に優しく、貧困層に厳しい逆進性を持つ消費税は廃止すべきである。
③リフレ派は、金融緩和を続けることで市場に「予想インフレ率」が高まり、それが投資意欲に結びつくので、デフレ脱却が可能だと主張してきたが、資金需要は高まらなかった。また過度な金融緩和が金利を大幅に引き下げ、金融業界にダメージを与えてきた。
④企業の投資意欲を生み出すには、金融政策に特化するのではなく、同時に、政府が国債を発行して積極的に財政政策を打つことが、直接に需要創出につながり、生産活動に結びつくので、有効である。これはアベノミクスの二本目の矢を意味するが、二本目の矢は放たれなかった。


③と④についてちょっと解説を付け加えます。
リフレ派の理論に従って安倍政権(日銀)は6年半にわたり膨大な量的緩和を行ってきたにもかかわらず、「予想インフレ率」は高まりませんでした。
その結果、デフレ脱却はおろか、国民の生活はかえって困窮を招いてしまいました。
これには、量的緩和によって積み重なったお金が、日銀当座預金という特別の口座のお金(マネタリーベース)に過ぎず、一般の企業が引き出すことのできる市中銀行の口座ではないという必然的な事情があります。
だから日銀当座預金に滞留したお金と、マネーストック(金融部門総体の通貨供給量)との間には越えがたい壁がもともとあったのです。
したがって、このデフレ下では、よほどの投資意欲を持った奇特な借り手でも現れなければ(現れなかったのですが)、市中にお金が流れません。
リフレ派経済学者たちは、その壁についての自覚がなく、その無自覚を「予想インフレ率」という空しい期待によって覆い隠してきたわけですね。

⑤政府の赤字は民間の黒字。つまり、政府の負債が増えることは、反対側で、民間の預金が増えることを意味する。したがって、国民は、「国の借金」などをまったく気にする必要はなく、むしろ喜ぶべきである。政府・日銀は通貨発行権を持っているので、PB黒字化をしないとやがて政府が財政破綻をきたすなどという財務省の脅しには何の根拠もない。
⑥民間に資産が十分にあるから、国債発行の余地があるのではない(「お金のプールは存在しない」――この表現は、三橋貴明氏だけでなく、ケルトン教授も期せずして同じ表現を使っていました)。したがって、民間に十分な資産がある間は国債を発行できるがそれが尽きたら財政破綻するという論理は、完全に間違っている。
⑦これは一般の銀行が企業や個人にお金を貸すときにも当てはまる。国債の場合も普通の借金の場合も、銀行に潤沢な資金(政府の場合は日銀当座預金)があるから借金できるのではなく、金融機関は、ただ借り手に返済能力があるかどうかを査定したうえで、通帳に金額を書き込むだけである(万年筆マネー)。
⑧経済の話をするときには、政府・日銀の「お財布」の話ばかりしないで、生産のリソースが十分に獲得可能か、企業や消費者にとって政府の政策が適切かどうか、労働者が豊かに暮らせるだけの経済体制になっているかどうかなどに、話題の中心を移すべきである。財政ではなく、経済全体こそが問題なのだ(ケルトン教授は、このことを「眼鏡をかけ替える」と表現しました)。
⑨MMTには、JGP(雇用保障プログラム)という構想がある。これは、不景気で失業者が増えた時には政府が最低賃金で雇用し、景気が回復すれば、労働者は自動的に高賃金の民間企業に移行するという考えである。つまりデフレ期には、政府が失業者に救済の手を差し伸べるために積極財政策をとり、好景気の時には、その必要がなくなるので、政府の財政もそのぶん縮小することができる。


このJGPについては、ケルトン教授が講演で強調していたにもかかわらず、記者会見でこれに注目した記者はいなかったようです。
また、その後の報道記事でも、ほとんど問題とされませんでした。
メディアが関心を持ったのは、好意的、悪意的両方を含めて、自国通貨を持つ政府には国債発行額の制約はないという一点にもっぱら集中していました。
記者や論者たちの関心がここに集中していたのは、財務省の緊縮路線が人々の頭に刷り込まれてきたために、この「事実」の指摘によほどショックを感じた証拠です。
ですから、MMTについての論評やケルトン教授へのインタビューでの質問では、インフレになったとき抑制できないのではないかという、一種の「インフレ恐怖症」の症状を示すものがほとんどでした。
これに対してケルトン教授からは、「デフレから脱却しなくてはならない時にどうしてそんなにインフレを心配するのですか」と皮肉を言われる一幕もあったようです。
じっさい、日本政府は、デフレの時にインフレ対策というトンデモ政策をやって事態をますます悪化させたくらいですから、もともとインフレ対策については、得意中の得意なのです。
こうした記者や論者は、悪夢を見続けることに慣れ切ってしまって、「目を覚ませ」という声を聞き取ることができず、「たいへんだ、MMTによってデフレから脱却したらハイパーインフレになってしまう!」と錯乱状態に陥ってしまったのでしょう。

ところでJGPですが、これはとてもいいアイデアだと筆者は評価します。
というのは、このアイデアは、アメリカの民主党、共和党の間で盛んな、「大きな政府か小さな政府か」という不毛な二元論を克服する可能性を持っているからです。
不況の時には政府が公共事業を惜しまず提供して失業者を救済し(その財源については、国債発行で十分賄えます)、好況になったらより高給で雇用できる民間企業に彼らを吸収させる――つまり、不況の時には「大きな政府」、好況の時には「小さな政府」というように、柔軟に政府の規模と役割を調整できることになります。
そこには、右か左か、小さな政府か大きな政府かといった、イデオロギー支配が介在する余地はなく、経済の実態に合わせてただプラクマティックな対応機能を政府が備えるだけで十分だという思想が見られるわけです。

ところで、新しいものが出てきた時には、誤解の嵐にさらされるのが常です。
人々は、惰性的な感覚、感情からなかなか自由になれないからです。
MMTは90年代からケインズ派の流れをくむものとして既に存在しており、別に新しい理論ではありません。
ところが財務省のトリックによって、私たちがあまりに家計と政府の財布とを混同する習慣を身につけてしまっていたので、これが上陸した時に、「黒船」のように新しく見えてしまったのです。
この事態に適応できず、さまざまな誤解が生まれましたが、最近、ある人から得た情報で、これぞバカな誤解の決定版という代物に接しましたので、典型例として俎上に載せることにしましょう。

《今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。
(中略)
MMTによれば、政府の財政需要をまかなうために、日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買うわけだから、円は供給過剰となって価値が下がるに決まっている。これは私だけでなくヘッジファンドなど世界中の投機家も円安を見越して円売りドル買いをするだろうから、ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。
(中略)
私は、MMTは法定通貨(不換紙幣)が国民の信用で成り立っていることをあまりに軽視していると思う。紙幣の価値が、中央銀行が持つ銀や金で裏打ちされている時代と違い、現在はどの国も国の信用(徴税力)だけが裏付けとなっている。MMTを実施すると言った瞬間に、この信用が根底から揺るがされるのだ。
(中略)
円にしてもドルにしても、インフレによる減価で、2019年の1万円や100ドルの価値は1965年の価値のそれぞれ4分の1、8分の1にも満たなくなっている。しかしこの減価は長い時間をかけて徐々に起きたから経済に混乱はあまり生じなかった。それを、MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。》
http://agora-web.jp/archives/2040455.html

これを書いたのは、元財務省財務大臣審議官の有地浩という人ですが、よっ、さすが財務省、と声をかけたくなるほど、デタラメを振りまいています。
よくもここまで突っ込みどころ満載の文章を書けたものだと、思わずのけぞってしまいます。

まず冒頭から、この人は、MMTについての知識などまるで持ち合わせていないことがわかります。
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などという妄想の発生する余地はありません。だいたいどうして1時間後に300円なんて数字が出てきたのでしょうね。

次に、「日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買う」などといっていますが、財務省出身のくせに、日銀が国債を買う(貸す)際に紙幣など刷らないということを知らないのでしょうか。
そんなことをすれば、国立印刷局広しといえども、すぐに建物の中が一万円札でいっぱいになり、従業員の居場所もなくなってしまうでしょう。
仮に10兆円刷ったら、10億枚という想像を絶する量の紙幣で埋もれることになります。
この人は、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
事実は言うまでもなく、政府が国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです。

こうして政府は額面10兆円の政府小切手を切り、これを、ある事業を受注した企業や組織に渡します(国債発行は、公共事業、社会福祉事業など、必ず何か具体的な公共投資としてなされるのですから)。
小切手を受け取った企業・組織は、市中銀行にこれを持ち込み、預金通帳に同額の数字を書き込んでもらいます。
銀行は受け取った政府小切手を日銀に持ち込み、日銀当座預金に同額の数字を書き込んでもらいます。
日銀と政府は統合政府ですから、これで政府小切手は、「お金=借用証書」としての役割を終えます。
一方、企業・組織は、労賃、原材料、設備資金などの支払いのために、預金から取引先、従業員などの預金通帳に必要金額の振り込みを行います。
取引先や従業員は、振り込まれた金額を必要に応じて現金紙幣に替えます。

さてこの一連の過程で、現金紙幣が現れるのは、最後の段階だけです。
現金紙幣なんて、そんなに動いていないのですよ。
私たちは、日常生活で現金紙幣を用いていますから、「お金」と聞くとすぐに現金紙幣を思い浮かべてしまいますが、日銀当座預金に書き込まれた数字も、政府小切手も、企業・組織の預金通帳に書き込まれた数字も、すべて「お金=借用証書」なのです。
現金紙幣も、日銀が私たちから借りている借用証書です。
いろいろな形の「お金=借用証書」があるのですね。
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません

有地氏は、このことがまるで分っていません。
いや、ほとんどの人が金本位制の観念を残滓として頭に残しているために、このことを理解していないと言えるでしょう。
テレビ朝日のニュース・ステーションで、ケルトン教授の講演の際に、MMTについて説明をしていました。
紹介してくれることはけっこうなことですが、そのために、現金紙幣の模型を使って、それをぐるぐる回していました。
これでは人々が、紙幣だけをお金と考えたとしても無理はないでしょう。
困ったものです。

有地氏は、MMTの採用を検討しているというニュースが流れただけで、「円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替える」そうですが、勝手にやれよと言いたくなります。
この人は、MMT(つまりこの場合は多少大胆な財政出動)が実施されると、たちまち過度なインフレが起きて円が暴落すると信じ込んでいるようですが、MMTがそんなちゃちな理論でないことは、すでに述べたとおりです。

また、「通貨が国民の信用で成り立っている」のは事実ですが、いま述べたように、通貨とは、不換紙幣だけではありません。それはごく一部であって、日銀当座預金や銀行預金に書き込まれた数字(万年筆マネー)も、政府小切手もみな通貨です。
MMTが財政出動を促す場合にもこのことは変わりありませんから、「信用が根底から揺るがされる」などということは、200%あり得ません。
それは有地氏のインフレ恐怖症の重篤症状のなかだけでしか起こりえないことです。

さらに有地氏は、「MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが『それを言っちゃあ、おしまいよ』ではなかろうか。」などとつまらぬ冗談を吹かしていますが、MMTがどこで「これから不換紙幣をどんどん刷ります」と宣言したのでしょうか。
こういうデマを平然と流すのは、単に誤解や歪曲といったレベルの話ではなく、わざわざ来日してMMTの本質をていねいに説いてくれたケルトン教授に対する失礼極まる愚弄と称すべきでしょう。
日本の「経済識者」の無知ぶりをさらけ出して、世界に対して恥ずかしいと感じるのは、筆者だけでしょうか。
嘆かわしきは、有地氏に代表されるような重症のインフレ恐怖症に罹患した、日本の知的(痴的)病人どもです。
MMTの健全な主張を正確に理解して、このひどいデフレ状況から一刻も早く脱却したいものです。


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コメント (1)

熊さん、増税に大いに憤慨

2019年07月10日 23時41分10秒 | 文学



♪テンツンシャン、トコトントン♪

熊さん へい、ご隠居さん、ごめんなすって。
ご隠居さん おや、熊公か。どした。
 へい。ちょいとわからねえことがありやしたんで、うかがいやした。
 わからんこと。ま、突っ立ってないで上がんなさい。
 失敬しやす。
 何だね、そのわからんことってのは。
 へえ。じつは不景気のことなんすがね。
 ほう、不景気。なんだ、借金で首でも回らなくなったか。
 いえ、そうじゃねえんで。たしかにあっしも酒屋に借金してるし、家賃も滞ってますが、何とかしのいでるんで、その辺はご心配なく。
 ご心配なくって、おめえ、借金して家賃滞納して、何とかしのいでるはねえだろ。
 いや、これまでいつもそうでやしたから。
 しょうがねえ奴だな。
 いや、酒屋や大家なんぞてえしたこたぁありゃしません。
 そんなこと言うと、ばちぃ当たるぞ。
 ばちなんぞ怖れとっちゃ生きちゃあいけませんや。それより、昨今、世間に不景気風が吹きまくってるみてえですけど、それについてうかがいてえんで。
 じゃ、何かい。おめえ一身のことじゃねえってのか。
 へえ。どうもこの世間一般の不景気についちゃぁ、わからねえことがいろいろあるもんで。
 ほほお。向学心起こしたってわけだ。どういう風の吹き回しだ。ま、しかしおめえにしちゃ感心なこったな。何でも言ってみなさい。
 へえ。いま世間見るてえと、どこもかしこも貧乏人が増えとりますな。ウチの長屋でも去年亭主に死なれたお菊さんてえのがね、これまで仕立て屋から仕事もらって何とか食いつないでたんすが、こないだ、家の前とおったら、シクシク泣いてるじゃありませんか。聞いてみるてえと、このごろめっきり注文が減って、これから先どうやって暮らし立てていったらいいかわかりませんてんで。あっしゃ、つい不憫になって、お菊さんの肩にこう手を置いて、お菊さん、いまにきっといいことあるから辛抱、辛抱て、ながながと慰めてやったと、こういうわけでさ。いや、これがいい女でね。
 おめえ、肩に手を置いただけだろうな。
 そ、そりゃ、それ以上何にもしてませんよ。嬶にばれたらてえへんだ。
 まあいい。たしかにおめえの言うとおり、昨今は貧乏人がぐんと増えてる。それももう何年も続いてるな。で、何が聞きたい。
 ところがお上は、景気はだんだんよくなってるとか言ってるそうじゃありませんか。こりゃいったいどういうわけなんで。
 うーん、おめえ、いいところ突いてくるな。こりゃこの季節に桜が咲く。
 ヘンな褒め方しねえでくだせえよ。
 よし教えてやろう。それはな、お上ってのは、昔からそういうウソを平気でつくもんなんだ。
 そりゃまたどうして。
 そりゃな、てめえたちがやってきたことの間違いを認めたくねえからよ。てめえたちのおかげで貧乏人が増えちまったってこと認めたら、民百姓が黙っちゃいねえだろうが。
 でもご隠居さん。民百姓が暮らしに困ってるの援けるのがお上ってもんじゃねえんすか。
 それはあの連中の建前ってもんでな。ほんたあ、金持んところにますますカネが集まるようなことばっかりやってる。ほれ、こんどまたモノ買うごとに取り立てる税が厳しくなるだろ。このまんまだと幕府の借金がかさんで、もたねえとかなんとかウソついてな。
 え? ありゃウソなんすか。幕府がつぶれっちまっちゃまずいと思って、しょうがねえけど我慢すっかって思っとったんでやんすがね。
 ウソもウソ、大ウソさ。税なんか取り立てなくたって、幕府は印旛沼の干拓でも何でも、なんかやりたきゃ、お抱えの両替商んとこ行って、何千両借りるぞって書きつけりゃいいだけの話。まあ約束手形みてえなもんだな。手形もらった業者はふつうの両替商にそれ持ってって、大判小判に代えて仕事に使う、と。こりゃいくらでもできる。そうやってこそ、民百姓の暮らしが潤うのさ。ただこれ、あんまりやりすぎるとコメの値段が高くなって、貧乏人は買えなくなっちまうけどな。そこんとこお上がよく見て気ぃつけてりゃいいだけの話よ。
 へえ、幕府が借金するほど、あっしらの暮らしがよくなる。初めて聞いたな。こりゃ世間に触れ回って瓦版にでも書いてもらうとよござんすね。
 ただその瓦版がこのリクツを全然わかってねえのよ。お上の言い分をそのまま垂れ流してるだけだからな。
 なんだかわかったようなわからねえような話だけど、するてえと、何ですかい。そのお抱え両替商ってのは、別に千両箱ため込んでおかなくてもいいし、幕府も借金するのに、世間にいくらカネがあるか気にしなくていいってことでやんすか。
 熊、おめえ、今日は妙に頭冴えてるな。こりゃ、この季節に梅が咲く。
 ヘンな褒め方しねえでくだせえってば。
 しかしおめえの言う通りさ。そもそもふつうの両替商が業者にカネ貸すんだって、お蔵にカネため込んどく必要ねえのさ。ただ借りに来たやつよく見て、こいつはちゃんと期限までに利子払って返しそうかなって見込みつけりゃいいのよ。
 へえ、そうなんだ。んじゃ、あっしもお菊さんのために一肌脱ぐかな。
 だからおめえはバカだってんだ。酒代も家賃も払えねえ奴に、どこの両替屋が貸してくれるてえんだ。
 なある。それがあっしら貧乏人の悲しいとこっすね。ところでご隠居さん、お上はそういうからくり知っててウソついてんのか、それとも知らねえで税上げるぞ、税上げるぞって言ってんのか、どっちなんす。
 それはな、知ってる連中もいれば知らない連中もいる。知らない連中のほうがずっと多いけどな。だから困るんだ。
 しかし知っててあっしらから税むしり取るってのは、ひでえじゃねえすかい。誰っすか、その知ってるやつってのは。
 まあず、勘定方だな。たぶん連中はほんとは知ってるくせにあたしらに知らせないようにひた隠しにしてる。それでとにかくケチくせえから、自分たちの台所の帳尻合わせることばっかり考えて、これからこんなにカネかかるんで、税よこさねえと幕府の財政があぶねえって脅しかけてるのさ。これ、ずーっとやってきたんで、幕府の他の連中もみんな騙されちまったってわけよ。
 んでも、世間にゃおつむのいい学者とかいっぱいいるんでしょう。そういう人たちが、みんな集まって、勘定方、おかしいぞって騒ぎゃいいじゃねえすか。
 それがな、学者ってのもお上にくっついてりゃ安心だから、物事の道理をきちんと考えようとしねえのよ。あの連中も、自分の財布と幕府の財布とをごっちゃにしてる。自分の財布の中身は限られてるけど、幕府の財布はいくらでも増やせるんだ。そこんところの違いもわからんらしい。学問やってる連中の鈍感さだな。だから勘定方に騙されるのさ。
 なんか、こう無性に腹立ってきたな。だけど勘定方は、どうして知ってながら、やり方改めねえんすか。
 そこがお役人のしょうもねえところよ。連中は自分たちだけで仲間作って、いったんこうしようって決めると、ご時世が変わっても何でも、絶対改めようとしねえ。要するに石頭ぞろいなんだな。
 あっしが、ねえ頭で考えるに、税取り立てるんじゃなくて、その約束手形でも何でもどんどん振り出せばいいじゃねえすか。
 熊、おめえ今日は異様に勘がいいな。こりゃこの季節に雪が降る。
 ヘンな褒め方しねえで……。
 いやしかし、そのとおりなんだ。いまのご時世はな、モノ作っても買う人がいなくて困ってるご時世だ。だから誰も作ろうとしねえし、そのためにカネ使おうともしねえ。そうすっと働く連中にもカネが回ってこねえ。そこであたしら庶民はしょうがねえから節約しようとする。そうすっとますます買う人がいなくなるから、モノ作るためにカネ出す人がますますいなくなっちまう。
 ふむふむ、なあるほど。……そうすっと働く連中にますますカネが回ってこねえから、ますます節約する。そうすっとますます買う人がいねえから、モノ作るためにカネ出す人がますますいなくなっちまう。そうすっと働く連中にますますカネが回らなくなるから……。
 いつまでやってんだ、熊。もういいよ。とにかくこうやって回り回って貧乏人が増えてるのさ。ところがお上は何やってるかってえと、そういうご時世に、庶民からカネ吸い上げて、使えるカネ少なくさせて、悪いご時世をさらに悪くさせてる。みんながカネ出す気なくしてるときにお上がやるべきなのは、自分たちが借金して、干拓でも作物の栽培でも何でもいいからどんどん民のために仕事作ってやることなのに、逆をやってるってわけさ。
 ご隠居さん、出刃包丁一本貸しておくんなせえ。
 なんだ、やぶからぼうに。
 あたぼうよ。その勘定方のおエラいさんてえ奴めっけ出して一発かますのよ。
 ちょ、ちょっとぶっそうなこと考えるんじゃねえ。おめえには女房も子どももいるじゃねえか。つかまって手打ちんなったら、おめえはいいかもしれねえが、路頭に迷うのは女房子どもだぞ。
 じゃ、こういう理不尽、許しといていいんすか。
 よくねえさ。あたしもそれは十分承知してる。しかし、いかんせん、お上に逆らったって手打ちにされてそれでおしめえだ。
 じゃ、あっしら弱いもんはどうすりゃいいんすかね。
 血の気の多いおめえにゃあ、我慢ならないかもしれねえが、お上の考えが間違いだってことをできるだけ多くの人に伝えてだな、だんだん仲間作って、その力使って、お上に改めさせていくしかねえだろうな。
 そりゃあ、何年かかるんすかね。
 さあ、こればっかりはあたしにもわからん。十年、二十年……。
 その間にお菊さん、飢え死にしちまいますぜ。
 なんだ、やっぱりお菊さんのことだけしか頭にねえのか。
 へえ。キクは知るの初めなりって申しやすから。

♪ツレトンシャン、トントトトン♪

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 社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
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長編小説が完成しました

2019年07月07日 18時03分38秒 | お知らせ



アメブロに連載していた長編小説『ざわめきとささやき』が今日で終わりました。


社会批評小説とでもいったものですから、文学的な評価に耐えるかどうか、わかりませんが……。
でもロマンスもありますよ。


ご関心のある方はどうぞ。
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★思想塾・日曜会からのお知らせ★

2019年07月01日 18時28分15秒 | お知らせ
病む心・病む社会
――滝川一廣・小浜逸郎 公開対談――

先にご案内しました公開対談の参加お申し込み方法が確定しましたので、改めてお知らせいたします。

●11月2日(土) 13:30開場 14:00開演~16:30終了
●JR大井町駅隣、きゅりあん5F第2講習室
●アクセス:http://www.shinagawa-culture.or.jp/…/page0…/hpg000000268.htm
●参加費2000円
●参加申し込み方法
 ①以下のメールアドレスにお申し込みください。
 nichiyokai_event@yahoo.co.jp
 ②メールに、「11月2日の対談に参加します」とお書きください。
 ③お名前、メールアドレス、お電話番号を明記してください。
 *この個人情報は、「思想塾・日曜会」のご案内その他、小浜からの情報発信以外には
  使用いたしません。
 ④参加費のお支払いは、銀行振り込みにてお願いいたします。
  お申込みいただいた方に、参加費の振込先をメールでお知らせいたします。
 ⑤定員は60名です。先着順ですので、お早目のお申し込みをお勧めします。
  当方でお申し込みメールを受信した時点をもって、お申し込みの確定とさせていただきます。
  参加費の振り込み順ではありませんので、ご安心ください。

************************

【対談趣旨】

現代日本は、さまざまな不安定と予測不可能性に満ちています。
政治の屋台骨が揺らぎ、経済はいまだにデフレを脱却できていません。
若者は低賃金と臨時雇用ときつい労働にあえぎ、将来の見通しが立たず、結婚もままならないありさまです。
高齢者は年金の削減や医療・介護の負担を抱え、老後の不安はいや増すばかりです。
現役世代は、分厚い高齢世代の生活を背負わなくてはならず、教育にも多額の費用が必要とされ、厳しい生活維持に追われています。
貧困家庭のみならず、中流家庭でも、しばしば「虐待」やDVと呼ばれる現象が起きています。また、いわゆる「引きこもり」による殺人事件や、それを恐れて息子を殺害する事件などが世間を騒がせ、8050問題などという言葉も生まれました。
いま日本人は、戦後最大の危機に直面しているのだと思います。
それは、ひとりひとりの「こころ」の問題としても現れ、同時に「社会」全体の解決困難な課題としても現れています。

こうした現実を踏まえ、思想塾・日曜会では、子どもや青少年の精神発達に詳しい精神科医・滝川一廣氏をお迎えし、結婚や家族問題を専門としてきた評論家・小浜逸郎と対談をしていただきます。
この対談では、日本人の病むこころから、それを生み出している社会病理に至るまで、広い視野のもとにその背景を探り、適切な処方箋を見出していきたいと思います。

たとえば、いわゆる「虐待」事件が報道されると、マスメディアはこぞってその関係者をたたき、そのたびに児童相談所の相談件数はうなぎ上りに増えてきました。
しかし、「虐待」とは何か。じつはその定義すらはっきりしていません。
ところが、「虐待」という連絡が入ると、児童相談所では、実相を詳しく調査するゆとりもないままに、とにかく親と子の隔離という、本来の業務ではない対処に追われています。行政もこれを問題視してはいますが、有効な対策を打てているとは思えません。
こうしたところに、わたしたちは、いまの日本社会の他の現象にも共通する、性急な対応と思考停止の状況を見ないでしょうか。

多くの芳しくない社会現象はなぜ起きるのか。わたしたちは、何よりも、その背景と歴史をしっかりつかむ必要があります。この対談によって、少しでもその糸口にたどり着くことを期待したいと思います。
                          思想塾・日曜会 対談企画委員会
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アメリカの「安保破棄」に備えよ!

2019年06月26日 12時01分13秒 | 政治



ブルームバーグ6月25日の記事によると、トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたそうです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-25/PTMUOE6TTDS801

これは予想されたことでした。

トランプ大統領は、以前から日米安保条約の片務性(日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本が支援することは義務付けられていない)について不満を漏らしていました。
また、NATO加盟諸国に対しても、経費負担が不公平であると言い続けていますね。
大統領当選直前にもトランプ氏は、在日米軍駐留経費について、日本が全額負担すべきだと主張していましたが、さすがに最近では言わなくなりました。
日本が75%(2014年時点で約6700億円)も負担していることを知ったからでしょう。

経費の問題はともかくとして、今回、トランプ氏が側近に「安保破棄の可能性」を語ったとすれば、それは、アメリカン・ファーストを徹底させようという、ビジネスマンらしいそれなりのロジックに基づいています。
もちろん、事実だとしても、側近に漏らしたレベルの問題ですから、これが直ちに実際の破棄に結びつくかどうかはわかりません。
言葉をあまりに過大に受け取って、大騒ぎすることには慎重でなければなりません。
しかし、これがトランプ氏の本音であることはたしかです。
彼は来日した折、日米同盟はかつてなく確固たるものになったといった意味の発言をしていますが、単なる公式的なリップサービスと見るべきです。
なぜなら、自国の安全保障は自国が担うべきであるというのは、世界の常識ですし、アメリカは中国との覇権戦争には勝たなくてはならない必然性を持っていますが、日本のために多くの米兵の命を危険にさらし多額の軍事費を費やすだけの必然性などは持っていないからです。

たとえばアメリカは、北朝鮮が核弾頭を積んだICBMを持つことは断じて許さないでしょうが、中距離核を持つことを阻止するだけの理由が格別にあるわけではありません。
現にトランプ氏来日前の5月4日、北朝鮮は複数の飛翔体を発射したと韓国が発表しましたが、トランプ氏はその報道を問題にしませんでした。
そしてよく知られているように、中距離核は日本になら簡単に届きます。

もともとこのトランプ大統領の側近への発言は、事実だとしてもびっくりするようなことではなく、前大統領のオバマ氏が東アジアに対して取っていた姿勢の延長上にあります。

さて、この発言を知って、すわ日米同盟の危機だ、と慌てる向きもあるかもしれません。
もっとも、トランプ発言に本気かつ真剣に立ち向かい、それを奇貨とする手も考えられないではありません。
しかし、もし今頃慌てるなら、遅きに失すというべきで、じつは私たちは、とっくに独自の国防体制を充実させておかなくてはならなかったのです。
中国の露骨な膨張主義に対して、それに見合うだけの計画も予算も組まず、いざとなればアメリカ様が守ってくれるという空しい期待に長年依存してきた歴代政府の怠慢と国民の油断こそ、責められるべきです。

さらにブルームバーグの記事を引きましょう。

 《関係者によれば、トランプ大統領は沖縄の米軍基地を移転させる日本の取り組みについて、土地の収奪だと考えており、米軍移転について金銭的補償を求める考えにも言及したという。また、トランプ氏が日米条約に注目したことは、世界の他の国々との条約においても米国の義務を見直そうという広範な検討の端緒である可能性もあると関係者2人が述べている。(中略)
大統領が米議会の承認なしにいったん批准された条約を破棄できるかどうか、米国の法律では決着していない。


こうして、日米安保は、いつ破棄されてもおかしくないのです。
いまの日本政府に、それに対する心構えができているか。
答えは否定的たらざるを得ません。
この場合、単に、中国の軍事力に拮抗しうるだけの自主防衛力の準備がまるで整っていないことだけが危惧されるのではありません。
二つの点に注意を促しておきたいと思います。

①いまの緊縮病に冒された財務省、政治家、学者、マスメディアに、自主防衛力増強、国防予算大幅拡大の必要性を説いても、とうてい聞き入れるとは思えないこと。
②8月以降に予定された日米通商交渉において、トランプ政権は、「条件次第では安保破棄も辞さない」というカードを切って迫ってくる可能性が考えられること。


ちなみに自主防衛力増強と言うと、すぐ「日本も核武装すべきだ」といった極端な「べき論」が飛び出しますが、ネトウヨ諸君、ここは少し冷静に。
日本の核武装など現実的ではないことは、次のいくつもの点によって明らかです。
①アメリカがこれ以上核拡散を許すはずがありません。これは、北朝鮮やイランの例によってわかります。それとも、アメリカをも敵に回す覚悟でそれに踏み切りますか?
②国際社会に逆らって核拡散防止条約(NPT)からの離脱を決断する必要があります。
③たとえ核兵器の生産が技術的に可能だとしても、実用化に当たっては、陸上基地や車両や爆撃機からの発射などは種々の理由から問題点をクリアすることがきわめて困難。唯一可能性があるのは、原子力潜水艦への搭載ですが、これにも現状では時間やコストや技術面で数々の困難が伴います。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%A0%B8%E6%AD%A6%E8%A3%85%E8%AB%96#%E7%B5%8C%E6%B8%88%E7%9A%84%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E5%95%8F%E9%A1%8C
④唯一の被爆国である日本が核保有国になるには、国内の反対のみならず、国際的評判を一気に落とすことを覚悟しなければなりません。

自国核武装論などしなくても、他の軍事技術や兵力の増強によって、防衛体制を固めることは可能です。
もともと軍備拡張は、必ずしも戦争のためにするのではなく、相手国に脅威を示して相手のやる気を殺ぎ、外交を有利に進めるためにあります。
その場合、核が唯一の手段というわけでもありません。
万が一、敵国が核の使用に訴える気配を見せたら、たとえば、ドイツやイタリアのように、アメリカとの間で核シェアリングの合意を取り付けることも一つの手でしょう。

いずれにしても、もはや日米安保に頼れる情勢ではありません。
沖縄始め世界に類のない広大な面積比を占める在日米軍基地には、徐々に撤退してもらうべきです。
アメリカもそれを拒否しないでしょう。
代わりに一刻も早く自衛隊を拡充させ、国防体制を固める必要があります。
しかし、その大きな障害になっているのが、財務省の緊縮路線です。
観念的な核武装論などに耽るよりは、まずはこの緊縮病をどうやって打ち破るかに国民の力を結集させるべきでしょう。

また、いまの日本政府に、アメリカの通商交渉のシビアな攻勢に対等に立ち向かえるだけの力があるとも思えません。
とりあえず、日本の交渉当事者たちが、「安保破棄」の脅しなどでおたおたしないように、腹をくくって臨んでもらうよう、祈るしかないでしょう。
アメリカは仲良し同盟の相手などではなく、国益のためなら何でも打ち出してくる国だということを再確認しましょう。

以上述べてきたことの一部は、筆者も呼びかけ人として名を連ねている、政策集団「令和の政策ピボット」の政策にも書かれています。
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安倍首相を総括する

2019年06月20日 23時20分34秒 | 政治



残念なことに、10月の消費増税はそのまま施行され、衆参同日選挙もなさそうな気配ですね。

6月11日のNHK世論調査では、次のような結果になっています。
http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/
安倍内閣 支持する48%  支持しない32%
消費増税 賛成29%    反対42%
景気回復 続いている10% 続いていない53%

だれが見ても変な結果です。
デフレ脱却を第一の優先課題として掲げて6年半、安倍政権はこの公約をまったく果たすことができず、国民を貧困に陥れ、そのうえ、何の必要もない消費増税をやろうとしている(ちなみに財務省はじめ、その必要を説いている人たちのロジックはとっくに破綻しています)。
その安倍政権の支持率が5割近くの高さを維持しているのに、一方で、増税反対者が賛成者を大きく上回っています。
しかも、景気回復が「続いている」という答えは、わずか1割、「続いていない」の五分の一にも達していません。

世論調査の場合、こういうねじれ現象は昔からよくあることですが、これはなぜでしょうか。
一つは、現政権に対する、惰性的で無根拠な「信頼」です。
不安定を好まない国民性を表しているでしょう。
政治を自分の生活に結びつけて考えようとしない長きにわたる習慣的な感性と言えるかもしれません。
「長い物には巻かれろ」というやつですね。
もう一つは、野党のだらしなさに対する「不信」です。
野党は、実際、消費増税という、国民のためにならない政策一つにさえ、結束して反対することができていません。
三つ目に、安倍首相のイメージに対する、やはり無根拠な「信頼」があります。

実際には、安倍政権は、この6年半で、国民の敵であるグローバリズムや新自由主義に奉仕する政策ばかり採ってきました。
TPP参加、農協改革、種子法廃止、労働者派遣法改革、漁協法改革、国有林野管理経営法改革、水道法改革、入国管理法改革、発送電分離、消費増税、そしてPB黒字化目標という緊縮政策……と、挙げればキリがありません。
これらはすべて、国内産業を圧迫し、国民生活を困窮させ、外資の自由な参入を許し、格差を拡大する「亡国政策」です。

大多数の国民には、安倍政権がこんなにひどい政策を採ってきたという自覚と認識がありません。
この自覚と認識の欠落には、安倍首相のイメージがかなり貢献していると思われます。

日本はアホな国だねえ、と嘆息していればいいのかもしれませんが、それでは亡国を甘んじて受け入れることになります。

ここでは、二つの問いを出してみます。

①なぜ安倍政権が亡国への道をひた走っているにもかかわらず、安倍首相は国民の間で好意的なイメージを保ち続けているのか。

これは彼のキャラとそれを感じ取る国民心理に関する分析ですね。

②結局、安倍首相とは何者なのか。

これは、政治家としての安倍晋三氏についての本質的な分析です。

①から行きましょう。
安倍首相の人気の秘密は、先ほども言ったとおり、人格的なイメージです。
彼は三世議員で、育ちがよく上品で真面目、お高く止まったところがなく、気さくな雰囲気を持ち、顔も愛想もよくていかにも国民に受けそうですね。
演説がうまく、首脳会談や国会答弁やテレビ出演や記者会見などでの受け答えも、紙を読まずに堂々と前を向いてしゃべります。
アメリカ議会での演説では、すべて英語でスピーチし、議員たちの評判がたいへん良かった。
超多忙な中で演説文を暗記したのでしょうから、相当な努力家であることもうかがわせます。
日本の政治家は、これまで下ばかり向いて官僚の作文を呼んで済ませるか、そうでなければ意味不明の短い言葉でやり過ごす人が多かった。
それに比べると、安倍首相は、日本人には珍しく(アメリカ人には珍しくありませんが)、政治的パフォーマーとしては、一流だと言えるでしょう。
長いキャリアを通して饒舌なわりには、いわゆる「失言」も少ない。

これは、国民にいい印象を与えますね。
何となくこの人に任せておけば安心、というふうに、情緒レベルで多くの国民が思い込んでしまう。
特に「おばさん」には受けがいいでしょう。
それが曲者です。
イメージがよすぎると、その人が率いる政権が何をやってきたかが忘れられます。
その意味では、次期首相候補の一人と目されるイケメン・小泉進次郎などもたいへん困った人物です。
ちなみにこの人は、経済のことなど何もわかってない〇〇議員です。

②の問題。
安倍首相が、西田昌司参議院議員、藤井聡京都大学大学院教授、評論家・三橋貴明氏と食事を共にしたことがありました。
ネット広告で四人並んでいる広告をよく見かけますね。
その折、安倍氏は、「自分には三つの敵がいる。自分一人では戦えないので、力を貸してほしい」と漏らしたそうです。
これは三橋氏の証言によって明らかになっています。
https://keieikagakupub.com/38JPEC/adw/?gclid=EAIaIQobChMIt-vNlOD34gIVhfNkCh39qgTSEAEYASAAEgJrVvD_BwE

筆者の推定になりますが、三つの敵とは、
①朝日新聞
②グローバリズム
③財務省

でしょう。

もし彼がそう言ったとすれば、たしかに「一人では戦えない」と漏らすのももっともでしょうね。
しかし、彼はこの三つの敵、特に後の二つと本気で戦って来たでしょうか。
自ら本気で戦いもしないのに、他人に援けを求めたとすれば、それは日本国民の総司令官として、責任逃れのそしりを免れないのではないでしょうか。

筆者は、安倍氏を個人攻撃したくてこんなことを言っているのではありません。
公人として最高の地位にいる人なのですから、批判を受けて当然だと思うのです。

10月の消費増税決定の期限がもうすぐそこに迫っています。
さて、これが決定されてしまったとします。
すると、安倍首相は、就任以来、この三つの敵のどれひとつにも勝てなかったことになります。

・TPP参加→グローバリズムに敗北
・日韓合意→(おそらく)アメリカの意向に追随。つまりグローバリズムに敗北
・先に挙げた一連の制度改革→グローバリズムに敗北
・PB黒字化目標→財務省に敗北
・消費増税→財務省、朝日新聞に敗北
・緊縮財政→財務省、朝日新聞に敗北


全敗です。
一国の総理大臣という強大な権力を持ちながら、こんなことがあるでしょうか(民主主義国家の代表に大きな制約があることは認めますが)。
この疑問に対する答えは二つしか考えられません。
一つは、彼には本気で戦う気など初めからなかったということ。
もう一つは、彼の主観がどうあれ、周囲の勢力に押しつぶされてしまったということ。

筆者は、いちばんありそうな答えは、この二つの両方だろうと考えています。
財務省との戦いは、たしかに存在しました。
これはいろいろな傍証によって確かめられます。
いまここでは、ともかく増税を二度延期した事実と、PB黒字化目標の達成年次を5年延期した事実を挙げるにとどめましょう。
しかし、グローバリズムそのものを示す、諸制度の改革(農協法、移民法、水道民営化その他)については、安倍首相自らが明確な抵抗を示したとは思えません。
これらの改革のイニシャティヴを握っていたのは、小泉内閣時代から規制緩和(構造改革)路線を主導してきた竹中平蔵です。
竹中と安倍氏との関係はどうだったのか。

安倍氏が第二次安倍政権を成立させたとき、アベノミクスの三本の矢という施政方針を打ち出しました(2013年初頭)。
復習しておきましょう。
①大胆な金融政策――金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭
②機動的な財政政策――10兆円規模の予算で政府自ら率先して需要創出
③民間投資を喚起する成長戦略――規制緩和によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html

①はリフレ派の考えに従ったもので、日銀の国債買い上げによって事実上政府の負債は減少しましたが、市場のインフレ率はさっぱり高まりませんでした。デフレマインドはお金の量だけ増やしても解決できなかったのです。
②は、最初の1年だけで、次年度からは、たちまち財務省の緊縮路線に抑え込まれました。
③ですが、これこそ竹中がずっと続けてきた新自由主義的な規制緩和路線、つまりグローバリズムをそのまま踏襲したものです。
筆者の想像では、安倍氏は、この路線を正しいものと信じ込んでいたフシがあります。先に述べたように、安倍政権になってから次々と成立した、国民生活を破壊する諸制度に、彼自身がまともに反対した形跡がないからです。

さてこうみてくると、実際には安倍首相は、いわゆる「三つの敵」に対して心から闘志を燃やして戦いに挑んだとはとても言えないことがわかります。
せいぜい財務省の緊縮路線に抵抗を示したくらいのところでしょう。
しかし今回、消費増税が決定されれば、それも空しくなってしまいます。

もし本当に彼が「三つの敵」を倒そうとして、総理の職を賭けて戦いに挑んだなら、事態は、こんなにひどくならなかったでしょう。
それは、必ずできたはずです。
でも、何一つできなかった。

すると、安倍首相の政治家としての本質とは何なのか。
筆者は、これをあえて、「周りばかりを気にする臆病政治家」と規定したいと思います。
三世政治家としてこれまでになくパフォーマンスに長けたこの人は、その面のすぐれた能力によって、国民をも自分自身をも欺いてしまったのです。
つまり、しょせんは、自分なりの信念を貫く強い意志を持たない「お坊ちゃん政治家」なのです。

何年も前のこと、ある(保守的な傾向を持つ人ならたいていは知っている)安倍シンパだった知人に、「安倍さんはしょせんお坊ちゃんだ」と告げたところ、彼はそれを言下に否定し、後の書き物にも、「お坊ちゃんなどと呼ぶ人がいるが、そんなことはけっしてない」という意味のことを書いていました。
さて、事態は動き、この人も、いまではさすがに心情的な安倍シンパにとどまっているわけにはいかなくなったことでしょう。

筆者も呼びかけ人の一人に名を連ねている政策集団「令和の政策ピボット」は、平成の末期に中央政治を運営した安倍政権の大失敗に対する深い反省から生まれました。
https://reiwapivot.jp/
平成に猛威を奮った緊縮財政やグローバリズムや構造改革が、国民の暮らしを深く破壊した事態をよく見つめ、二度とこのようなことがないように、大きなピボット(転換)を図りましょう。
国民の皆さんには、イメージで政治権力者を選ぶ愚を克服し、政策の良し悪しをよく吟味したうえで適任者を選ぶことを心から期待したいと思います。


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