(11)農協法改革
2015年8月、政府は農業分野に外国資本の参入も可能となる農協法改革を行いました。
例によって調子いいことを謳っていましたが、この改革の趣旨を露骨に示せば、
①農家保護団体「全中」を解体し、個別農家、単位農協をバラバラに市場に向き合わせる。
②農業委員会の委員を首長専任制とし、農業以外の大企業もそこに参加させる。
③農協の要件を緩和し、株式保有者の利益、外資の参入に資するように「自由化」する。
明らかに竹中式構造改革・規制緩和路線の強力なパンチです。
日本の農業は亡びに向かうでしょう。
(12)種子法廃止
これも(11)と同じく、ただでさえ食料自給率の低い日本で農業に壊滅的な打撃を与える政策です。
2016年9月に規制改革推進会議で提起され、都道府県や農家への説明もなく、2017年3月に唐突に国会を通過してしまいました。
すでに今年の4月1日から施行されています。
種子法とは正確には主要農作物種子法と呼ばれ、稲、麦、大豆の種子の開発や生産・普及を都道府県に義務づけたものです。
この制度の下で都道府県は試験研究の体制整備、地域に合う品種の開発と「奨励品種」の指定、原原種や原種の生産圃場の指定、種子の審査、遺伝資源の保存などを行ってきたのです。
政府は「すでに役割を終えた」「国際競争力を持つために民間との連携が必要」などの理屈をつけていますが、とんでもない話です。
民間とはどこか。
言うまでもなく大いに問題な遺伝子組み換え作物を大量生産しているアメリカのモンサント社、デュポン社などの外資です。
以下に世界の種子生産企業のシェアを記します。
1位 モンサント(アメリカ) シェア23%
2位 デュポン(アメリカ) 15%
3位 シンジェンタ(スイス) 9%
4位 リマグレイングループ(フランス) 6%
5位 ランド・オ・レールズ(アメリカ) 4%
6位 KWS AG(ドイツ) 3%
7位 ハイエルクロップサイエンス(ドイツ) 2%
8位 サカタ(日本) 2%以下
9位 DLF(デンマーク)
10位 タキイ(日本)
出典主要農作物種子法廃止について(2007年)
これでどうして「役割を終えた」とか、「国際競争力をつける」などと言えるのか。
有力外資系に独占されるに決まっています。
頭がおかしいとしか言いようがありません。
73年後もアメリカの奴隷国家、日本。
(13)電力自由化
電力自由化の歴史は長く、90年代に始まっていますが、家庭用電力も含めた全面自由化に踏み切ったのは、2016年4月です。
この場合も、なぜ自由化がいいのか、政府は明確な根拠を示し得ていません。電力料金の低減と効率化を理由として挙げていますが、効率化とは自由化論者が必ず使う抽象語で、意味不明なゴマカシです。
料金については、次の指摘がなされています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%8C%96#%E6%97%A5%E6%9C%AC
自由化により電気料金の低減に成功した国は今のところない。むしろ、自由化で先行する英国や
ドイツでは電気料金が急激に上昇しており、自由化されていない日本の電気料金を上回るなど、
期待されていた電気料金の低下は全く起きていない。
また発送電分離などの自由化が進んでいたアメリカでは、災害時の修復に時間がかかり、大規模停電も起き、価格も乱高下したので、現在では15の州とワシントンだけに限られています。
電力供給の主体は東電などの地域独占ですが、これは総括原価方式を取っています。
この方式には次のようなメリットがあります。
①電力会社が中長期的な計画を立てやすい。
②消費者が過大な料金負担を負わなくて済む。
③企業経営者が長期的な設備投資をしやすい。
そもそも電力はそれがなければ一日も文明生活が送れない最重要な公共財です。
各事業所や家庭に毎日滞りなく安定供給されるためには、発電所から消費者までの全プロセスを総括的に管理する体制が不可欠なのです。
ちなみに以下の図は、自由化施行後、8か月を経た時点での調査結果です。
切り替えなかった最大の理由は、「思ったほど料金が安くならなかった」で、約3割でした。
(14)固定価格買い取り制度(FIT)
この制度は2011年の東日本大震災の1年後、当時の菅直人内閣の下、鳴物入りで始められました。
原発をゼロにして、再生可能エネルギー電力を供給した企業から電力会社が高額で電気を買い取るという制度ですが、これが欠陥だらけであることは既に露呈しています。
再エネの中心である太陽光発電は、安定供給を確保するのに致命的な欠陥を持っています。
夜は発電できないこと、日本の不安定な気候や風雪に弱いこと、など。
それで稼働率はわずか15%程度です。
また広大な用地を確保するのが難しい。
原発一基分の電力を供給するのに山手線内部ほどの面積が必要です。
しかもこの制度は建設計画もないのに書類申請だけで認可されるというずさんなものでした。
そこでこのおいしい話に、電力事業の専門でもない企業の申し出が殺到しました。
電力量は、多すぎても少なすぎても困ります。
そういうわけで、九州、北海道、沖縄、四国、東北の各電力会社は、買取を拒否しました。
加えて消費者には再エネ賦課金が課されます。
賦課金は次第に安くなってきてはいるものの、将来あまり発展する見込みのない電源のために税金のように金を取られるのは腑に落ちません。
これはそのままレントシーカーたちの懐に収まるのです。
ちなみに以下の図によれば、2015年時点で、「新エネルギー」が全電力量に占める割合は4.7%となっていますが、太陽光はその四分の三
ほどですから、3.5%程度ということになります。
2017年4月からこの制度の見直しがなされ、価格の上限設定や入札制度を導入していくらかマシにはなりましたが、太陽光や風力に今後もあまり可能性が見出せないことには変わりありません。
将来性がそんなに見込めない電源のために国民に賦課金を課すような不条理な制度は速やかに廃止し、安全確認がなされた原発から順に再稼働に踏み切ることが望まれます。
(15)混合診療
2016年から混合診療が解禁になりました。
公的保険(健康保険)の利く診療と利かない診療(自由診療)とを組み合わせた診療が受けられるというのです。
一見、診療の範囲が広がって朗報のように聞こえるところがミソです。
混合診療を受けると、わずかな例外を除いて、保険適用分も全額自己負担になってしまうという決まりがあるのです。
おまけに自由診療では、薬代が月700万円もかかるといった場合が出てきます。
お金持ちしか受けられませんね。
それだけではありません。
命や健康は何よりも大切なものですから、そんなにお金がない人でも、この際、混合診療に対応した民間保険に入っておこうと考えるでしょう。
そこをアフラックなどの外資系が狙ってきます。
保険会社は当然、薬会社と提携しています。
患者は健康になれるなら高い薬による治療でも受けたいと思う。
そこで暮らしに困らないようにやむを得ず高い保険料を払って保険に加入する。
こういうからくりになっているのです。
さらにそれだけではありません。
現在の政府の緊縮財政路線では、膨らむ社会福祉関係の支出削減に躍起です。
そこで公的保険の適用範囲を狭めようとしています。
すると逆に自由診療の範囲が広がるでしょう。
つまり政府もこの流れに結託して、国民生活を苦しめようとしているのです。
ところで社会福祉支出が膨らむのは事実だから政府が財源に苦慮するのは仕方がない、とあなたは思っていませんか。
政治家もマスコミも、与党も野党も、ほとんどがマクロ経済をわかっていなくて、財務省の罠に引っかかっています。
財源など国債発行でいくらでも賄えます。
「とんでもない、「国の借金」が1000兆円を超えているのに、これ以上そんなことをしたら財政破綻する!……」
これもまた財務省の仕掛けた罠です。
日本の国債はすべて円建て、政府は通貨発行権を持っていますから、原則としていくらでも国債を発行できます。
また日銀の買いオペは政府との連結決算でチャラになりますからその分負債は減ります。
現にこれまでの量的緩和で、すでに政府の負債は300兆円以上減っているのです。
さらに、たとえ国債が膨らんだとしても、借り換えを繰り返すことで継続して負債を続けてかまいません。
しかも国債発行による政府の消費支出は、その分、市場に流れて国民経済を潤します。
日本に財政問題など存在しないのです。
国民の福祉のために、どんどん財政出動するのが政府の任務です。
(16)水道の自由化
第二次安倍政権成立後間もない2013年4月に麻生財務大臣がワシントンで、「日本のすべての水道を民営化する」と言い放って周囲を驚かせました。
4年後の2017年3月にはその言葉通り、水道民営化に道を開く水道法改正が閣議決定。
このように国民不在のまま、水道民営化路線は着々と進められてきたのです。
水道民営化が、電力自由化、労働者派遣法改正、農協法改正、種子法廃止、混合診療解禁と同じように、規制緩和路線の一環であることは明瞭です。
これにより外資の自由な参入、水道料金の高騰、メンテナンス費用の節約、故障による断水、渇水期における節水要請の困難、従業員の賃金低下、疫病の流行の危険などがかなり高い確率で起きることが予想されます。
先日の大坂地震で明らかになったように、現在の日本の水道管はあちこちで老朽化し、これを全て新しいものと取り換えるには、数十兆円規模の予算がかかるそうです。
しかしいくら金がかかろうと、国民の生命にかかわる飲料水が飲めなくなる状態を改善することこそは政府の責任でしょう。
それを放置してすべて民間に丸投げしようというのです。
正しく公共精神の放棄です。
このような水道民営化は、推進論者がうそぶくように、少しも世界のトレンドなどではありません。
それどころかもうかなり前からその弊害が指摘され、反対運動も高まり、再公営化した自治体が180にも上っています。
パリ、ベルリン、クアラルンプール……。
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=148552
フランスの大手水道企業・ヴェオリア社は、パリその他で水道が再公営化され干されたのをきっかけとして、免疫のない日本を狙い撃ちしようとしています。
そのことに気づかない安倍政権のこの政策は、愚策中の愚策と言ってもよいものです。
まことに情けない限りという他はありません。
*2回で終える予定でしたが、各項目が長くなってしまったので、もう1回追加します。