小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

コロナ騒ぎで頭の病が悪化したインテリ愚民(その1)

2020年04月30日 00時14分32秒 | 経済



4月7日に新型コロナ対策として緊急事態宣言が発出され、3週間がたちました。
この間に筆者から見て、じつに下らない・間違った・腹立たしい主張や行政措置があふれかえりました。
これには大きく分けて、二つの流れがあります。
一つは、消費税減税や財政出動にブレーキをかけようとするもの、もう一つは、国会議員や公務員の所得を削減させようとするものです。
今回は、初めの流れを扱います。

筆者が触れ得た限りで、一つ一つ批判して、その考え方を潰していきたいと思います。

まず初めの例。
https://president.jp/articles/-/34145
これは緊急事態宣言よりも前の4月1日に、東京財団政策研究所の森信茂樹氏が「コロナショックに『消費減税』をしてはいけない4つの理由」と題して発表したものです。

第1に(中略)消費税を減税するには、経過措置の規定など多くの改正法案作成作業が必要となる。補正予算を組むだけで対応できる給付金と比べて、はるかに時間を要する。

消費税を5%に減税するならたしかに時間がかかります。
しかし私どもは、消費税をゼロにすること(当面でも廃止でもよい)を提案しています。
ゼロにするなら、国会さえ通れば、あとはレジの消費税記録の機能をオフにするだけで済むので、手続き上も極めて簡単です。
そしてその経済効果は計り知れません。
何しろ国家が吸い上げている1割がなくなるのです。
たとえば年収200万円の人はほとんど消費に使ってしまうので、20万円分だけ消費を増やすことができます。
生産者・事業者のほうも、その分だけ売り上げを伸ばすことができるでしょう。

第2に、減税までの消費の手控え、元に戻す際の駆け込みなど、余分な経済変動、不安定化が生じる。

「余分な経済変動、不安定化」とは屁理屈を考えたものです。
だいたい、いままさに多くの事業者・従業員が倒産や失業の憂き目にあっている時に、「元に戻す」際の心配をしてどうするのですか。
そんな程度の「経済変動」は、かえって増税の際に起きたではありませんか。
しかし昨年の10月の増税の最終結果は、▲7.1%というもの凄いGDPの落ち込みでしたよ。

第3に、新型コロナ問題が広がる中で、経済的な被害の少ない方がおられる。(中略)つまり消費税減税は、お金持ちほど優遇されるということになる。

あのね、中略部分であなたも言っている通り、消費税はもともと貧困層に厳しく富裕層に優しい逆進性を持っています。
貧困層は消費性向が高く、富裕層は低いからです。
消費税が減税またはゼロにされることで一番助かるのは日々の暮らしに追われる貧困層なのですよ。
中略部分で、森信氏は「お金持ち」の買い物の例として車やマンションを挙げています。
高い車やマンションを買うことで消費税がかかろうがかかるまいが、富裕層だったらそんなに気にするはずがないでしょう。
第一、車やマンションは富裕層だけのためにあるのではありません。
中間層、中の下くらいの人たちが、なけなしの資金と高いローンでささやかな車や家を買おうとしても、高額の消費税のために諦めてしまう可能性を考えたことがありますか。

最後に、消費税の持つわが国における政策的な意義である。消費税は、全世代型社会保障の切り札で、とりわけ幼児教育・保育の無償化など、わが国の働き方改革、少子化対策を進めていくための貴重な財源となっており、すでに使われ始めている。

これは民主党政権や安倍政権が消費税を正当化してきたウソ八百です。
増税分など、財務省の財布に入ってしまえば、あとは何に使われるかは、勝手次第。
もし増収分を何かに充てているとすれば、たぶん国債と利子の返済の足しにしているだけです。
そもそも税収で国の歳出を賄っているという考えが間違いなのですよ。
いいかげんに政府が垂れ流してきたウソの上塗りはやめませんか。


次です。
https://drive.google.com/file/d/1rIVefx56JpIcmVqhWNzACl3269mb8WHK/view
これは4月6日に政策研究大学院大学の林 文夫氏が「政府コロナ緊急経済対策の批判と私の提案」と題して発表したものです。

政府がすべきことは、損害額である家計所得の損失を確定し、保険金を各個人に支払うことだ。(中略)
では損害額はいつ、どう確定するか。私の提案は、確定は来年の確定申告時、損害額は、2020 年の申告所得から「ショックがなかったときの所得」を差し引いた額とする。


浮世離れしたことを言う人です。
世帯当たり30万円給付の話が出た時にも、線引きの難しさが一つの理由となって、個人一律10万円となったのに、家計所得の損失をどうやって計算するのか。
世帯ごとに割り出さなくてはならず、大変な手間がかかるでしょう。
それに、申告に任せるなら、「ショックがなかったときの所得」をいくらでも誇大に計算できます。
それをどうやって予防するのか。
「確定は来年の申告時」とはまた悠長な話です。
繰り返しますが、自粛で倒産、廃業、失業の危機に直面しているのは、いまなのですよ。

いうまでもなく、企業は、規模の大小にかかわらず、個人が所有している。個人が補償されるのだから、企業への現金給付は、企業の所有者に重複して補償することになるので、不公平だ。

これはとんでもない話です。
企業は企業主の家計だけではなく、経営のために営業所の家賃、従業員の給料、リース料など、多くの固定費を負担しています。
会社は社長個人の所有物ではありません。
この人は、法人の所有と個人の所有との区別もついていないらしい。

政府による保険金支払いの財源は、消費税率の少なくとも数年間にわたる引き上げだ。赤字国債を財源にするのは、将来の現役世代が負担することになり、効率性の原則に反する。

ほら、やっぱり財源を気にしてる。
しかもそれを消費税率の引き上げによって果たすというのです。
消費税を今後も引き上げる計画が財務省や一部の学者・エコノミストにあることは、コロナ以前から知られていましたが、コロナショックによって、貧困層の莫大な増加が見込まれる現在、追い打ちをかけるようにその考えを持ち出すとは、血も涙もないとしか言いようがありませんね。
そして、「赤字国債を財源にするのは、将来の現役世代が負担することになり」という財務省発の決まり文句。
国民がどんなにこのデマに騙されてきたか、わかっているのか。

コロナショックは、マクロ経済学でいう供給ショックの一種だ。供給ショックによる不況に対しては、需要刺激策は限られた効果しかない。しかもこのショックは感染が終息すれば確実に消失する。(中略)終息後はリベンジ消費で飲食店や行楽地に人々が殺到する。経済は放っておいてもV字回復する

どうして需要刺激策に限られた効果しかないのか。
いま消費増税によって需要が極端に縮小したところにコロナショックがやってきました。
この過剰な自粛要請によって生じているのは、供給のストップである以前に需要のストップです。
いや、この際両者を「マクロ経済学」などという煙幕を張って、供給と需要に二分するレトリックでごまかすこと自体が非常に欺瞞的です。
需要のストップが同時に供給もストップさせているのが、いま起きている事態です。
つまり市場が成立しないという国民経済全体の危機なのです。
それをまあ、終息後のリベンジ消費などと妄想を膨らませていますが、そのリベンジのための消費力はどうやって回復させるのですか。
林氏の頭の中は、アダム・スミスの「神の見えざる手」でいっぱいのようです。
この際、お古い「経済学者」には退陣していただきましょう。

次です。
https://webronza.asahi.com/business/articles/2020042100003.html?page=3
4月22日付朝日新聞編集委員の原真人氏。
もし給付が2回、3回と続けざるを得なくなると、必要財源も25兆円、38兆円……と膨らんでいく計算だ。財源はいずれ増税して工面するとしても、当面その全額を赤字国債(新たな政府の借金)に頼らざるを得ない。米国や欧州各国も巨額の対策費が必要になっている点では日本と同じだ。ただ、財政が相対的に日本より健全な分だけ、新たな借金はしやすい。(中略)今後のコロナ対策(所得補償や休業補償)費用が膨らめば、指数はさらに悪化する。日本国債の暴落が起きてもおかしくない状況だ。たしかに日銀がお札(電子的発行も含め)を刷りまくって国債を買い支えれば、国債価格の下落は止められる。だが、次は日銀が信認を失うリスクが高まる。そのときは円暴落だ。円が暴落すれば、物価が数百倍、数千倍となるハイパーインフレとまでは言わなくとも、物価が一気に何倍にもなるリスクは非現実的とは言えない。

これが有名な朝日新聞経済部の原氏です。
一読、この人のご説が、いまや古典と化した財務省べったりの緊縮論であることは瞭然としています。
そもそも使っている用語がそれを表していますね。
「政府の借金」「財政が日本より健全」「国際の暴落」「日銀の信任」「円の暴落」「ハイパーインフレ」と続きます。
いまコロナのような緊急事態で、飲食業やこれに関係した各業界のみならず、あらゆる民間企業、特に中小企業は、市場の崩壊の危機に悲鳴を上げています。
そんな中にあってさえ、政府の財政危機を訴えるその古典主義を崩さない頑迷さ。
こういうのを「蛙の面に水」と言います。
日本は変動相場制を採用して独自通貨発行権を持つ国ですから、必要に応じていくらでも円や国債を発行できるので、過度のインフレに気をつけること以外に財政問題はありません。
ちなみにご心配の円や国債の暴落(つまり超インフレ)については、その兆候が仮に見えれば、そのときこそ、政府、日銀の得意技である政策金利の調整や増税によって容易に解決できます。
と、何度言ってもわからないのでしょうね。
何しろこの人は経済がまったくわかっていないのですから。
今度書いていることを読んで、その事実をまた発見してしまいました。
そう、「米国や欧州各国も巨額の対策費が必要になっている点では日本と同じだ。ただ、財政が相対的に日本より健全な分だけ、新たな借金はしやすい」と言っている部分です。
えっ!? 欧州各国の財政が相対的に健全ですって?
欧州各国はユーロ圏の支配下にあって、金融政策の自由がなく、ために緊縮を強いられ、ギリシャ、イタリア、スペインのようにすごい失業率や借金で苦しんでいることも知らないの!
つまり原氏は一国の経済を考えるのに、「政府の負債」のGDP比のことしか頭にないんですね。
日本の場合、「政府の負債」つまり国債の累積額は、実は借金ではなく、財政支出の累積額のうち、税金で取り戻せなかった分の履歴にすぎません。
帳簿上、一応日銀からの「負債」という形を取りますが、これは政府が通貨発行権を使って拠出した貨幣供給残高です。
だから本来返す必要なんてないんですよ。
でもユーロ圏諸国では、ユーロは外貨と同じですから、イタリア政府がユーロで(たとえばドイツから)借金すればまさにそのまま「借金」です。
嗚呼、朝日新聞経済部編集委員・原氏よ、せめて欧州各国と日本の財政事情の違いくらいは理解してね。

昨年話題になった「MMT」(現代貨幣理論)。政府の借金はいくら膨張しても問題ない、というその考えに賛同する政治家や学者はいまもいる。それを支持する国民もけっして少なくない。増税も社会保険料の負担増もなく、社会保障が充実できる。いいところ尽くしに見えるこのMMTは、政治的プロパガンダにするのにもってこいなのだ。コロナショックに乗じて、再びこれが盛り上がることも予想される。現実には、コロナ後、世界経済が正常化したとき、日本の財政悪化に市場の注目が集まらないとは言えない。弱い国家を投機の標的にしようという勢力は常に存在する。いちど標的になれば、国家といえども抵抗は難しい。
そら出ました、MMT。
「増税も社会保険料の負担増もなく」とか言ってるところに、この人がMMTなど理解していないことがよくわかります。
増税は必要な時がありますよ。
さっき言ったように、インフレが過熱気味になった時に景気を安定させるためにやるのです。
MMTはもちろんそれを認めています。
社会保険料の負担増もありますよ。
高齢社会で、年金の支払額が増えますから、特別会計の中から捻出します。
でも少子化で国民からの年金料が減ったら、通貨発行で補えばよい。
福祉国家としての義務を、税金や年金料の増額や支払時期の延期などで国民に押し付ける必要などないのです。
そうして、今のように国民が困窮している緊急時こそ、MMTの出番なのです。
原氏は、机上で学んだ間違った「経済学」と、財務省の陰謀の穴にハマって、ただ財政は税収という限られたパイの中で処理し、そして国債の発行は「国の借金」だから必ず返さなくてはならないもの、と思いこんでいるのですね。
だから、こんなに国民が苦しんでいる時にも、平然と、「ハイパーインフレ」の心配などにうつつを抜かしていられるのです。
最後に一言。
「弱い国家を投機の標的にしよう」とありますが、「弱い国家」って何ですか。
抽象的で意味不明です。
日本政府は中国に次いで、世界第2位の外貨準備国で、ユーロ圏全体をはるかに上回っています。
こういう重要なファクターも「強弱」概念に含めて語ってくださいね。

次です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takerodoi/20200421-00174484/
慶応大学教授・東京財団政策研究所上席研究員・土居丈朗氏が4月21日に発表した論考。
彼のアホぶりは夙に有名ですが、以下のグラフを掲げて、「ワニの口」が塞がらなくなったことだけを
嘆く、まさに「開いた口が塞がらない」論考です。



時系列で国の一般会計歳出と税収の金額を折れ線グラフを、いわゆる「ワニ口グラフ」と呼ぶ。記事冒頭のグラフがそうである。ワニの上あご(赤線)が歳出総額で、下あご(青線)が税収である(2018年度まで決算ベース、2019年度以降は補正後予算ベース)。この両者で描かれる形がワニの口に見えることからその名が付いた。(中略)2020年度補正後予算ベースでみると、一般会計歳出総額は128.3兆円と断トツで過去最高額となり、上あご(歳出総額)が上に突き抜けて、もはやワニの口は崩壊したかのようである。(中略)2020年度補正予算で、「ワニの口」はもはやその体を成していない様になってしまった。
これはもう、歳出総額と税収との開きばかりを気にしている、ただの事務屋さんと言うべきで、経済学者と呼ぶのははばかられますね。
でも、財務省は、こういう知的肩書を持った人の存在を必要としているのでしょうね。
グラフを睨みながら、「ワニの口が塞がらない!」と叫び続けてそれ以外のことは目に入らない。
あるべきコロナ対策、長年にわたる緊縮財政の結果起きている医師や感染症病棟やベッド数や保健所の削減、過剰自粛による実体経済の崩壊の危機、今後間違いなくやってくる第2世界恐慌――こうしたことはどうでもいいらしい。
こういう緊縮真理教の信者には、今後あまりメディアに出てきてほしくないと思います。
特にこうした緊急時には、百害あって一利なしですから。
土居氏に一つだけ教えてあげましょう。
ワニの口が開いたということは、国債が大量に発行されたことを意味しますから、国民にとってきわめて慶賀すべきことであって、国債の発行残高は、そのまま国民の預金になっているのです。
政府の赤字は民間の黒字」――よく噛みしめてください。
それにしても、慶応大学経済学部という名門で、この人は何をどんなふうに教えているのか。
学生がかわいそうだな――ふとそんなふうに思ってしまいます。


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社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
https://ameblo.jp/comikot/


緊急事態宣言に寄せて4

2020年04月24日 01時13分01秒 | 文学


                        高木四郎朝臣六首
震災や コロナ起るや せき込んで あれもゼイゼイ これもゼイゼイ

民の命 失ひけりな いたづらに 銭貴びて ながめせしまに

我が耳も つひに幻聴 聞ゆなり 「保証策 異国に例なし 我世界一」

日の本は 狼少年 栄ゆ邦 嘘を幾度も 皆信じけり

名にし負はば いざこととはむ 自民党 汝が想ふ 民はあるやと

聡き人 さすが次第に 増え来たり つひに起すや 令和ピボット

                        小浜逸郎朝臣五首
見渡せば 店も呑み屋も なかりけり 栄えし街の 春の夕暮れ

汝や知る 都はコロナの 自粛病 流行るを見ても 落つる涙は

忍ぶれど 数に出にけり 廃業は 自粛よきかと 人の問ふまで

吹くからに 民の暮らしの しをるれば むべ安倍内閣を ほら吹きといふらむ

休みつつ 補償無き夜の 続く日は いかに苦しき ものとかは知る




コロナに関する素朴な疑問

2020年04月15日 10時16分56秒 | 思想

渋谷2020年2月1日


渋谷2020年3月28日

4月6日に緊急事態宣言が発出されてから10日経ちました。
テレビでは、相変わらず、人通りが途絶えシャッターを下した繁華街の光景を映し出しています。
そして、新たに発生した感染者数、累計感染者総数、死者数、退院者数を報告しています。

ここでまず素朴な疑問が生じます。
毎日報告される感染者数は、どれだけの検査件数に対するものなのか。
PCR検査件数全体に対してどれだけの割合で陽性反応が出ているのか、その割合がまったく分かりません。
つまり分母が提示されないままに、今日はこれだけ発生した、全体でこれだけ増加したという発表だけがなされているわけです。
3月24日に小池都知事がいきなり「非常事態」宣言をしてから、全国でも検査件数を増大させたと想定されますが、検査件数が増えれば、感染者数も増えるのが当然です。
韓国のような検査件数が多い国ほど致死率が低いと言った誤報に影響されたのではないかと推測されます。
https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/4133/
ちなみに東京都における4月6日から8日間における検査実施件数は4,652件(一日平均582件)、うち陽性反応1204件となっており、その割合は、25.9%です(数字にやや不審な部分もあります)。
なお3月23日以前は、一日の検査実施件数が多い時で180件、少ない時で0件で、24日以降激増しているさまが読み取れます。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

次に思うのは、各都道府県は、検査を全域にわたって均等に行なっているのか、それとも受診者がある地域に集中しているのか、その分布状況もわかりません。
また、感染者(陽性反応が出た人)のうち、世代別の分布、無症状者・軽症者・重症者の割合、職業別の割合など、知るべき情報が一般に知らされていません。
各自治体では出しているはずですから、これらは簡単に集計できるし、また発表しても差し支えないはずです。

これらの情報は、後述するように、新型コロナという流行病の特質と適正な対策を考えるうえで極めて重要な情報です。
それなのに、「感染者がついに8000人を超えました」といった視聴者を脅すような情報発信ばかりがなされています。
意識的な隠蔽とまでは思いませんが、こうした情報発信の方法が、視聴者の不安を煽り、結果的に自粛やむなしという方向にただ一方的に誘導する効果を持っていることは明らかです。
これは推測ですが、厚労省がだらしないためにこうした情報整理をやっていないのではないかと思います。

すでによく知られている新型コロナという流行病の特質を簡単に整理すれば、

①人から人への感染力がきわめて強い
②密室、密集、密接によって感染しやすい
③高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすい
④8割は軽症で回復している
⑤潜伏期が長い
⑥無症状感染者の数が多い(知人の医師によれば、報告されている数の15倍はいるだろうとのことでした)

これらの特質について、また別の知人の医師は次のように語っていました。
コレラやペストはいざしらず、新型コロナは、その8割は軽症で回復している病気です(連日報じられる死者数の陰に隠れがちですが)。潜伏期が長く、さらに感染しても発病しない不顕性感染者がたくさんいます。これが、どこに感染者(保菌者)が潜んでヴィールスをまき散らしているかわからないという強い不安や疑心暗鬼を生んでいます(だから、とにかく集まるなと規制)。しかし、裏返せば、それだけ発病力の低い、ほんらいは軽い感染症だという理解が可能です。感染力の強さと疾患としての重篤さとはちがいます。感染力が強いのは、現時点ではだれも免疫をもっていないことが大きいでしょうね。もちろん、条件次第で致死的な転帰を取り、医療状況によりますが平均すれば2~3%の死亡率を示していますから、決して甘く見てはなりませんけれど。感染力が強くていっぺんに大勢が罹るため、致死率は低くても死亡者数は多くなるのです。

さてこのコメントで一番気になるのが、「感染力が強いのは、現時点ではだれも免疫をもっていないことが大きい」という部分です。
この事実は、裏を返せば、免疫力をつけるためには、軽く感染して治癒する(または発症しない)なら、そのほうがむしろ望ましいという考え方も無視できないことになります。
天然痘に対する種痘にしても、結核に対するBCGにしても、抗体を作りだすためにごく軽微な感染状態にするという(ワクチンが手に入らない状態では)感染症対策としては伝統的に取られてきた方法です。

ここで、素朴な疑問の第二です。
現在取られているように、人と人との交流を限りなくゼロにすれば、やがてはウィルスは「封じ込められて」終息する、という「自粛要請」(欧米では「強制」)の方法は、果たして唯一の正しい方法なのか。
「封じ込める」という言葉についてですが、正確にはどういう意味なのでしょうか。

人と人との接触を排除する→ウィルスを「封じ込める」。

この論理はそれほど科学的根拠があるでしょうか。
よく知られているように、ウィルスは何かのきっかけであらぬ方向に変異していきます。
他の多様な感染経路(人→モノ→人、人→動植物→人)を見出さないかどうか、誰にも分りません。
仮に人同士の接触を断つことで一時的に減衰が見られたとしても、ネズミが増えてきたのを片端から殺鼠剤で殺していけばよいというふうに原始的な発想ではうまく行かないのが、このウィルスという不思議な存在の厄介なところです。
何か他の発想も必要なのではないでしょうか。

ジョンソン英首相は3月12日の記者会見では、休校や集会禁止、市民同士の接触を制限するなどの措置は取らないと明言し、手洗いの励行を呼び掛けるにとどまっていました。
多くの人が感染することで免疫をつけ、その人たちによって感染の急拡大を防ぐという「集団免疫」の戦略です。
しかし猛烈なバッシングを受けて、16日には一転、厳しい自粛政策を取るようになりました。
さてそれから1か月たったわけですが、この強制自粛の方針は、果たして功を奏しているでしょうか。
前回使用した100万人当たり累計死者数のグラフの現時点(4月14日)までの推移を見てみましょう。
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html



上から四番目のオレンジ色がイギリス、茶色が日本です。
念のため、このグラフの縦軸が対数目盛になっていることにご注意ください。
日本が1に達していないのに、イギリスは167で、しかもそのカーブはまだまだ右上がりで急上昇しています。
3月16日以前は0.2以下くらいしか上昇していなかったのが、4月に入ってからは、毎日平均10を超える単位で数値が上がっているのです。
1,2位のスペイン、イタリアが、すでにカーブが緩やかになってピークを過ぎたらしく見えるにもかかわらずです。

強制自粛路線が必ずしも効果を生んでいないことがこれでわかりますが、もう一つ、アイスランドの例を挙げておきましょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200409-00010000-clc_teleg-eurp&fbclid=IwAR333OSqifRMxdDtW7LZTX70yKJUeSWqyEeu_M-W3STM8JHdKrlYfiEheYg
アイスランドでは人口当たりの感染者が世界で最も多いのですが、これは検査件数の多さによるものです。
うち1364人が陽性反応を示し4人が死亡しました。
これは上の図に当てはめると、約11になります。韓国とドイツの間ということですね。
ただ、アイスランドでは、この検査結果を利用して統計学的に感染リスクが高い市民に対し積極的な隔離政策を進めることで、厳格な全国規模の都市封鎖を回避しています。
疫学者チームを率いるソロルフル・グドナソン氏の対策チームは警察官と医療従事者60人で構成され、感染が確認されるとそれぞれが個別に調査を行い、接触者を把握します。
こうして得た詳細なデータに基づいて、対人距離の確保について簡単なガイドラインを作り、これによってウイルスが急速に拡散する前に接触者を把握することができたため、都市封鎖や隔離を免れることができ、また、医療現場にかかる力を緩和できたと言います。
どうして可能だったのかはわかりませんが、アイスランドでは、去年の暮れの時点でパンデミックの可能性に気づいていたそうです。
その結果、医療体制や調査体制について周到な準備ができたというのです。
イタリアやスペインのように通りが静まり返っていたり、店が閉まっていたりする様子はなく、カフェやパブ、店は穏やかに営業を続け、学校は休校せず、移動制限もない。
観光客ですら、歓迎されているということです。

人口わずか36万5千人の小国だからそれだけの結束と素早い連係プレーが可能だったとは言えるでしょう。
しかし、参考にできる部分は大いにあります。
第一に、データの詳細な把握と共有です。
はじめに述べたように、感染者数と検査件数との割合、年代層、居住地域、症状の有無と程度、職業などについて、詳細なデータを(一般国民に全公開はしないまでも関係者の間で)共有することで、この病についての一定の医学的判断が成り立ちます。
第二に、これにもとづいて、どこに重点的に医療関係者や医療体制を配備すればよいかというおおまかな基準(ガイドライン)を作ることができるでしょう。
これは現在問題となっている医療崩壊の危機に対して、均衡ある配分を達成することに寄与するかもしれません。
第三に、このような効率的な対応をすることで、何も一律8割の自粛を要請するなどという杓子定規な判断をしなくても済みます
たとえば、何人以下、どんな空間、どれくらいの時間なら要請に従わなくてもよいとか、60歳以上の人は極力家を出ないようにする、テレワークのできない会社員でも、この場合は出勤して大丈夫、小中学校は休校にしなくてもよい、といったより具体的な指針を示すことができます。

政府や都は、職業について細かな規制を敷いていますが(しかも両者で食い違っていますが)、この判断はきわめて恣意的です。
同じ職種であっても、複数の条件をインプットすることで、営業してもよい場合と自粛した方がよい場合との区別も可能となるはずです。
そういうきめ細かな指示を与えることは公共機関の責任でもあるでしょう。
政府は、大した理論的根拠もなく自粛7割から8割だ、などと断案を下していますが、経済の恐るべき凋落を考えたら、こんな粗雑な断案で片付く話ではありません。
8割おじさんこと西浦博氏が「専門家」としての力を示していますが、あまり理論的根拠を感じませんし、一律にしなくてはならない理由も明らかではありません。
地域や感染状況によって事情がまったく異なるはずだからです。
それに、仮に医療の立場から説得性があったとしても、一国の経済的運命を握る一大事なのですから、医師といえども政策決定に関与している限りは、この二律背反をどう解決するかについて、「政治判断は専門外だから」では済まされず、少なくとも真剣に悩むべきだと思います。

いずれにしても、この二律背反を克服するために必要なのは、疫病克服としてのコロナ対策と経済崩壊防止のための対策とをどう両立させるかの「さじ加減」です。
しかしいまの安倍政権にはその力はありません。
なにしろ消費税には一指も触れず、休業補償はしないと平然とのたまい、赤字国債はわずか16.8兆円、これでは国民殺しの政権と呼ばれても仕方ないでしょう。
すべてこれ、財務省がPB黒字化目標を崩さないところから出ている政策です。
実を言えば、コロナ危機は、財務省の緊縮路線を崩して、消費税を廃止し、100兆円規模の財政出動に踏み切る絶好のチャンスなのです。
これができれば、安倍首相はヒーローになれるでしょう。
ところが肝心の彼氏、星野源さんと並んでお部屋でワンちゃんと遊んでおります。
やる気のない安倍政権に見切りをつけて、私たち自身で国家存亡の危機に向き合っていきましょう。



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社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
https://ameblo.jp/comikot/


緊急事態宣言に寄せて3

2020年04月15日 10時16分56秒 | 文学


                    高木四郎朝臣三首
羨まし 優美に自宅で 過すだけ 俺とは違う 日本総理
※小生髙木が、英国じょんそん太政大臣から預りました歌です。『埴生の宿』の曲で歌って欲しいとの要望でした。

非常事態 のんびり過せば いいじゃない どこかで聞いたな 一七八九

昔聞いた 祖父の言葉が 胸を打つ 「馬鹿な大将 敵より怖い」

緊急事態宣言に寄せて2

2020年04月12日 00時30分25秒 | 歴史


をかしき歌いくつか集まれり 寄稿御礼

                        小松永朝臣
増税と 安倍の無策で 大恐慌 マスクするより 金を刷れ
                           

                        由紀草一朝臣
数字より 現に暮らしが 苦しければ ころなカラクリに ダマされまいぞ


                        高木四郎朝臣十首
安倍小池 啼きつる方を 眺むれば ただ上滑る 無為ぞ残れる

有難き 布マスク二枚 間には 政府小切手 挟まれるらむ

メリケン民 早や受け取れり 千二百ドル 我もなりたし メリケン市民

晋三は 卯月の花の 散り晒し 花びら舞えど 実の成るはなし

兵力の 逐次投入 恐ろしや 昔は餓島 今コロナ

財政の 縛りを剥がす 長期戦 たった四つきで 収支得られず

三十万 よし受け取るも 実際は 一割抜かれて 二十七万

開かるる 勇人の徳に 前五輪 延期で済むや 今の不徳に

ぺらぺらの 言葉軽きに 耐え兼ねて ダミ声響く 田中恋しき

ちはやふる 神代も知らず 猛き今世 かねくれないに 首くくるとは

緊急事態宣言に寄せて7首

2020年04月08日 13時07分30秒 | 文学


   緊急事態宣言に寄せて七首

金急の 折に出されし 宣言は 緊急事態を さらに深くす

108兆 掬へる真水 16兆 金魚掬ひの 紙破れたり

給付金 殺到したる 申請者 三密ゆゑに ころな感染

財出は いくらなりとも よくするを 政治家ますこみ 知らぬさまなり

失業者 ねっと難民 廃業者 ころな終はりて いづくにか行く

政治とは 民亡ぼすものと 聞こゑたり いかにせむとや 力なき者 

天の原 ふりさけみれば かすかなる ころなのために いでし金かも   ――安倍の莫迦麻呂



 ●われよりざえある者多くあるを知る 願わくは雑歌寄せられたし 集めて「ころな集」とて編むこころあり

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社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
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コロナについてのある精神科医の見解

2020年04月02日 20時37分20秒 | 思想


以下に掲げるのは、長年懇意にしている筆者と同世代の精神科医の方からいただいたメールの一部です。
拙著新刊をお送りしたところ、その感想をいただきました。
一読、コロナ問題に対する医者としての優れた専門的な知見と、人間味あふれるその良識に深く共感しましたので、ご本人の了解を得て、ここに掲載させていただく次第です。
メールは2通ありますが、2通目は、筆者が調子に乗って、お返事の代わりに前回の拙ブログをお送りした、そのまたお返事です。


【第1信】
『まだMMTを知らない貧困大国日本』、さっそく拝読いたしました。
 日本社会が経済的にはもとより知的、文化的にも凋落の一途であること、様々なデータからわかってはいたものの、あらためて暗澹といたします。

 学生時代、国鉄の赤字が取り塵沙汰されていた頃、友人とこんな問答したことを思い出しました。下宿を訪ねて畳にごろ寝してテレビを眺めながら好き勝手な雑談にふける間柄でしたが、そんなときのやりとりでした。たぶん、たまたまテレビが国鉄赤字のニュースかなにかやっていたのでしょう。

 「国鉄って公共事業だよね。それがなぜ赤字でいけないんだ? 民間営利事業じゃないのに」
 「それを言えば警察庁も消防庁もみんな赤字だよね」
 「自衛隊も大赤字部門。採算性を求められて、あちこちに攻め込んで領地や資源をぶんどってこないと許されなくなったりして(笑)」。
 「なまじ運賃なんか取るから赤字だの黒字だの収支をとやかく言われるんだよ。運賃ゼロ、国鉄無料化すれば、赤字問題は一気に解消(笑)」

 その場かぎりの気楽な放言で、すっかり忘れていましたが、貴著を読んでいて蘇ってきました(もう少し膨らませれば八つぁん熊さんの落語にできそうです)。彼とはずっと親友でしたが、2年前、逝去しました。

 国民国家とは最大の公共事業体のはずです。黒字に固執する財務官僚や政治家たちは、君主国家の王様や廷臣が王家の財産を後生大事にするのと同じ心性に陥っているのでしょうか。公共事業体の担い手に公共的な意識に乏しいのは、「私的個人主義」の浸透によって現代日本人一般に公共意識が薄らいでいることに連動しているのでしょうか。

 わたしが医学生だった頃は、近代医学は「感染症」を克服して、コレラやペストは昔話、もはや疫病など医学のメインテーマではないという空気でしたが、グローバリズムは奥地で無害に眠っていたヴィールスを人間社会に引っ張りだし、張り巡らされた流通網によって世界に蔓延させます。恐ろしきはヴィールスよりも、あくなきグローバリズムかもしれませんね。反省の契機になればよいのですが・・・。

 各国に広まる外出禁止や都市封鎖は大昔からの疫病対策の定石で、『デカメロン』やカミュの『ペスト』の世界さながら。西欧では、最初は甘くみていた反動とペストの歴史体験が大きいかもしれません。ほかに手立てがないとしても、うーん、どうなのでしょうね。

わたしはヴィールス学の専門家でも感染症予防のプロでもない一精神科医に過ぎませんが、こんなふうに愚考いたします。

 コレラやペストはいざしらず、新型コロナは、その8割は軽症で回復している病気です(連日報じられる死者数の陰に隠れがちですが)。潜伏期が長く、さらに感染しても発病しない不顕性感染者がたくさんいます。これが、どこに感染者(保菌者)が潜んでヴィールスをまき散らしているかわからないという強い不安や疑心暗鬼を生んでいます(だから、とにかく集まるなと規制)。しかし、裏返せば、それだけ発病力の低い、ほんらいは軽い感染症だという理解が可能です。感染力の強さと疾患としての重篤さとはちがいます。感染力が強いのは、現時点ではだれも免疫をもっていないことが大きいでしょうね。もちろん、条件次第で致死的な転帰を取り、医療状況によりますが平均すれば2~3%の死亡率を示していますから、決して甘く見てはなりませんけれど。感染力が強くていっぺんに大勢が罹るため、致死率は低くても死亡者数は多くなるのです。

 現代の社会構造において感染機会(人的交流)を封じ切るなんて土台無理な相談でしょう。真に警戒して防止に力を注ぐべきなのは、「感染」ではなく、感染したあとの「重症化」です。重症化しなければ「感染」に過度に怯える必要はありません。どんな病気であれ悪化を防ぐ最善の道は「早期発見・早期ケア」なのは、だれもが知る常識でしょう。

早期発見に不可欠なのは、発見と診断のためのいち早くの臨床検査ですね。少しでも心配があれば検査して感染の有無を調べる。検査で陽性であれば、すぐに養生をする。まだ発病に至っていない段階やごく軽症の段階であれば、①保温と保湿、②滋養を十分とる、③しっかり休息する(疲労をさける)の三つの養生で、発病回避や自然治癒がかなりのところまで見込めるはずです。その間は他人に感染させない配慮(こういうときこそマスク着用や外出自粛)をすればよいのです。

養生だけでは及ばず発病に至るケース、悪化してしまうケースもむろん一定割合で出てきますから、それらはすぐに入院治療等の医療につなげる体制を作っておきます。もし、早めにこうした二段構えのシステムを用意できていたら、状況はかなり変わり得たかもしれません。

でも、厚労省や政府は、なぜかPCR検査に消極的で、口ではともかく現実にはなんのかんのと実施を制限し、早期発見と早期ケアの方策をまるで考えようとしなかった(むしろ妨げてきた)ですね。ほんとうにだめだなあと思います。小浜さんの御本のとおりです。これだけ人々が経済不安と経済危機に晒されているのに消費税減税する気はまるでないですし・・・

【第2信】
さっそくブログ拝読いたしました。新型コロナへの恐怖のあおり、自粛ムードの蔓延が、結局なにを失わせるかを述べておられますね。人々の暮らしから生き生きしたものを奪って社会がうまくいった試しがありません。江戸時代「緊縮」による改革が一度たりとも成功せず、昭和時代「欲しがりません勝つまでは」の戦争に勝ち目がなかった例で明らかですね。(ヴィールスをまき散らされては困るから)人々(とりわけ若者)を浮かれさせてはなるまいぞ! みたいな雰囲気をわたしは好きになれません。ついこの間までは「オリンピックの経済効果」だの「賭博場で一儲け」などと浮かれていた癖してね。
 新型コロナ感染の完全食い止めは不可能で、多大な感染者(と一部の死者)が出ざるをえません。現に出ているように。しかし、結果として免疫力(感染なしに免疫はできない)が人々に獲得されていき、やがて現在のインフルエンザのごとく、流行期ごとに多数の死者を出しながら誰もパニックにならないはやり病いのひとつに収まっていくのではないかと思います。早晩ワクチンや治療薬もでてくるでしょう。小浜さんのおっしゃるとおり、いずれは「あの騒ぎはなんだった」となっているでしょうね。問題はそこに落ちつくまでの間の避けられない「被害」(生命的被害だけでなく社会的被害)を、いかにして最小限に食い止めるかでしょうね。
 でも、そうした大局的な戦略を立てる力が、わが政府にはなさそうです。「政治家二流、行政一流」と言われた時代もありましたが、行政のベンチはチームオーナーたる首相たちのプロとは思えぬ下らぬエラーのバックアップに忙しく、フィールドの実動選手たちは人員削減の結果、ピンチに対して手や知恵をまわせる余力がなく、ただ目の前の業務に手一杯で疲れ果てています。「新型コロナとの戦い」などと勇ましいことを言っても、この試合の勝ち目はどこにあるのでしょうか。


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