主体概念再考のための九番目のテキストは、すでに森田真生氏の『数学する身体』を取り上げたときにも紹介した岡潔の文章である。岡潔の言う「情緒」もまた主客未分の世界の在り様を表現する言葉の一つであり、それゆえに今回演習でも読むことにした。学生たちはおそらく岡潔という名前さえ聞いたことがないかもしれないが、むしろそのほうが先入観なしにテキストと向き合えるから、好都合だとさえ言ってもよい。
情緒については、岡潔のテキストにも言及しつつ、私自身、「情緒論素描」というタイトルで2020年9月21日から10月15日にかけて、何回か単発の別の話題の記事を間に挟みながら連載記事を書いたことがある。それらの記事の中に今回の演習で読みたいテキストはすべて引用してあるのでここには繰り返さない。特に9月24日、9月27日、9月28日の記事の中に引用されているテキストをじっくり読みたい。