ひさしぶりに
ガツンと
ココロを
揺さぶられる
詩に
出逢った
生きる指針が
近しい
オンナトモダチに
お借りした
新川 和江さんの
詩集
「わたしを束ねないで」
表題作は
1966年に
発表されたそう
だけれど
時代は
移ろいでも
変わらない
女性道を
現代にも
通ずる
言の葉で
表現している
女に生まれても
妻になっても
母になっても
ヒトとして
個として
歩んでいきたい
生き抜いていきたい
そんな
ココロ綴り
烈しくも
深く
染み込んでいく
あぁ
染み込んでいく
わたしを束ねないで ~新川和江~
わたしを束ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください
わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂
わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
高原からきた絵葉書のように
止めないでください
わたしは羽ばたき
こやみなく空のひろさを
かいさぐっている
目には見えないつばさの音
わたしを注がないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください
わたしは海
夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水
わたしを名付けないで
娘という名
妻という名
重々しい母という名で
しつらえた座に
坐りきりにさせないでください
わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風
わたしを区切らないで
, や . いくつかの段落
そしておしまいに
「さようなら」があったりする
手紙のようには
こまめにけりをつけないでください
わたしは終りのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく
拡がっていく 一行の詩