昨日は「雀のおやど」へ。
ほぼ1週間ぶり。
上方落語のフリーペーパーである「よせぴっ」は、
経営的に危ない状況が続いているそうな。
(江戸での「東京かわら版」と同じ役割になるのかな。
あれはフリーではないが。)
支援するために、5月末に繁昌亭でも落語会があったようだが、
それと同様の趣旨らしい。
個人的には「支援する」なんて崇高な目的はなく、
雀三郎の「東の旅」見たさに行ってきた。
「東之旅(煮売屋・七度狐)」(雀三郎):○+
さすがにタタキはなかったが、
「野辺」から「煮売屋」、「七度狐」をけっこうフルで。
50分くらいかかっていた。
マクラは歩いてお伊勢詣りをした話。久し振りに聞いたが、やはり面白い。
三発って最近聞かないな、と思っていたら、津の市会議員をしているそうな。
ネタは、けっこう珍しいくだりも入れていたように思う。
「印物は中から読む」は初めて聞いた。
「歌を詠んでいく」のもあまり聞いた覚えはない。
雀三郎らしいアホの雰囲気、チョカな感じが出ていて良かった。
「煮売屋」はまあ、普通に良かった。
茶店の主人も大阪の客に慣れているから、
多少はシャレでやっている部分もあるんやな。
まあ、科白には入れなくて良いと思うが。
「七度狐」は少し省略していた。
「頭に尾の付く亀」とか言っていなかった。
村人ののんびりした、
「ああ、また騙されている奴がいる」と見ている雰囲気が良い。
あと、やはり喜六と清八の違いがよく分からなくなる。
特に油を差すあたりから、位置関係もよく分からない。
あまり気にせずやるものなのかも知れない。
幽霊は「恐い」より「やかましい」感じ。
「雨月荘」みたい。
特に「野辺」の部分で拾い物が多かった。
「悋気の独楽」(雀三郎):○-
文枝からかなあ。
「髪を抜く」小咄から。
見世に出るまでの御寮人さんの心理などを説明するのは、
あまり好みではない。
別に説明せずに、ハラに持っておけば良いのでは、と思う。
見世の場面、科白が不安定。
いくつか抜けていたのではなかろうか。
戻ってお竹の独り喋りは楽しい。
もう少しクサい方が好みかな。
妾宅の場面。
旦那、おてかけさん、丁稚の復誦、と
言い訳の科白が続くのは少しくどい感じ。
丁稚はかいつまんで、でも良いと思う。
戻って殴られ、奥に行く。
お竹の憎憎しさが楽しい。
後で丁稚が「血ぃ吐いて死ぬし」と言い返すあたりの掛け合いも。
独楽は3回回し、
最後は御寮人さんの独楽が旦那の独楽を弾いてしまい、
飛ばされた旦那の独楽がおてかけさんの独楽に当たってしまう、というもの。
「悋気」に対する皮肉ではあるのだが、
「3回回す」くどさの方が先に立ってしまうなあ。
あと、「キライ!」が弱い感じがする。
このネタは、御寮人さんの「不安」「悋気」といったところが通奏低音で、
ネタの中ではそれを押し殺したり、時に少し噴き出たりしているのだが、
この「キライ!」は、その抑えが効かず発せられる科白だと思う。
それなりの感情の強さ、深さがあって然り、と思う。
「仮面ライダーなにわ」(雀喜):○-
仮面ライダーマクラ。
最近のライダーはお母さん向け、昭和ライダーは良かった、という話。
私は雀喜と(広く言えば)同世代なので概ね同感できるが、
この日の年齢層の客には、あまり理解できない話だったかも知れない。
# 昭和でも、ブラックとかRXって、けっこうお母様向けだった気もする。
ネタは、今まで見た彼のネタの中では一番楽しめた。(古典、新作含めて)
もちろん、だいたい同世代だからベースで共感できる、というのもあると思うが。
「用意をしてきます」と言って一度下がる。
(下がったタイミングは、ネタの途中だったかも知れない)
袴を履いていたこともあり、
数ヶ月前に鶴笑が「百年目」の前に暴れたことを思い出してしまった。
ラジカセで音楽を掛けながら、変身ベルトを付けて出てくる。
「怪奇コアラ男」。
粗筋は、まあ、普通のライダー物のパターン。
「コアラの街」と聞いた瞬間に「コアラのマーチ」を思い浮かべてしまったのだが、
これがサゲになっていた。
サゲにする程でなく、どこかで回収するレベルのシャレだと思うのだが。
「そこは押さないの?」とか「もっと変なギャグにできないか?」など、
粗を感じたところは多いのだが、
バカバカしいことを楽しんで演っており、
まあ、それで満足した。
客が付いてこないことを気にせず、
響きが楽しいから「ラッタッタ」に乗っていくとか。
しかも、いつエンジンが掛かったのか分からないまま向こうに着いていた。
「早口言葉」は設定としてイマイチだなあ。
教室とかなしで、いきなり助けに来ても良いのでは?
「フェスゲの動かなくなったジェットコースターで立ち回る」というのは
「天王寺動物園」→「動楽亭」と来た流れで、設定として正しいと思う。
小拍子を使うのも。
いちおう、「仮面ライダーなにわ」ということで
大阪にちなんだものが出てくるのだが、
いまいち「ああ、大阪だな」という感じがしない。
自然っちゃあ自然なのかも知れないが、
例えば喫茶店で食べているのがお好み焼きだとか、
変身すると食い倒れ人形の恰好になるとか、
どうせやるなら、もっとベタにやった方が良いのでは、と思った。
もちろん、好みの問題なのだが。
「らくだ」(雀三郎):○+
弟子については特に触れずに、
いつも通りマクラを振り、ネタに入っていく。
屑屋と月番との会話で、
貧乏長屋の日常の光景を、ふと感じた。
あまり屈託のない屑屋。
確かに「店1軒飲み潰した」と言うし、
娘が買いに行くのを見送って何とも言えん気持ちになっているのだが、
根本では
「でも酒好きだから、しょうがない」「俺はこういう人間だ、認めろ」と
諦めて、居直っているように感じる。
「商人」というより「職人」風の人物なのかな。
熊に対しても、別に「酒を飲んで日頃の鬱屈を晴らしている」というよりも、
遠慮なく普通に、
相手が恐い人でなければ日頃から言っているようなことを
言っている感じ。
特に際立った「転換」がある訳でなく、
屑屋が普通に喋っている内に、
いつの間にか役割が変わっていた、という印象を受けた。
これはこれで、「らくだの死体を前にした、ある日常の物語」という感じで、
別に悪くないと思う。
最後はサゲまでいかず、
「葬礼や葬礼や」が伊勢音頭に変わるところまで。
終演9時15分頃。
----------------------------------------------
【ちょっと別の話】
「よせぴっ」について。
私が落語会を探すのにお世話になっていたのは、
学生時代は(確か)「ぴあ」と「Lマガ」だった。
その後はネットで、
当初は「寄席熱目」を使ったりしていたが、
今は主に「ねたのたね」を見て探している状況。
東京にいた頃は、当然「東京かわら版」。
寄席を探すだけ、という前提で言うと、
ネットを使う人にとっては
「よせぴっ」はあると便利(繁昌亭と動楽亭の昼席の情報もあるから)だが、
なければないでどうにかなる、というのが正直なところではなかろうか。
発行人の皆様には申し訳ないのだが。
私は記事の方はほとんど読まないので、何を載せると良いのかよく分からない。
(「載せない方が良い」とも言えない。)
とりあえず、寄席情報などの方で、
「こんなものを載せると良いのでは?」と感じるものを
「東京かわら版」も思い出しつつ、羅列。
手間とかコストとか、あまり考えていないが。
・放送関係。
「なみはや亭」の演目予定、NHKの日曜夜や「日本の話芸」、
あとは公開録画などの募集の情報。
・能狂言、歌舞伎、文楽、あるいは新喜劇や商業演劇。
寄席の客席で見る人を、松竹座や文楽劇場でも見かけることはけっこうある。
客層として重複しているのでは?と思う。
・落研や地域の天狗連など、素人の落語会。
私は趣味が合わないが、誓願寺の「ピーチク寄席」の情報が
「東京かわら版」に載っていて上方の情報誌に載らんのは変でしょう。
「年間サポーターになったら(プロとは別枠で良いと思うが)載せる」といった
条件はあった方が良いかも知れないが。
ほぼ1週間ぶり。
上方落語のフリーペーパーである「よせぴっ」は、
経営的に危ない状況が続いているそうな。
(江戸での「東京かわら版」と同じ役割になるのかな。
あれはフリーではないが。)
支援するために、5月末に繁昌亭でも落語会があったようだが、
それと同様の趣旨らしい。
個人的には「支援する」なんて崇高な目的はなく、
雀三郎の「東の旅」見たさに行ってきた。
「東之旅(煮売屋・七度狐)」(雀三郎):○+
さすがにタタキはなかったが、
「野辺」から「煮売屋」、「七度狐」をけっこうフルで。
50分くらいかかっていた。
マクラは歩いてお伊勢詣りをした話。久し振りに聞いたが、やはり面白い。
三発って最近聞かないな、と思っていたら、津の市会議員をしているそうな。
ネタは、けっこう珍しいくだりも入れていたように思う。
「印物は中から読む」は初めて聞いた。
「歌を詠んでいく」のもあまり聞いた覚えはない。
雀三郎らしいアホの雰囲気、チョカな感じが出ていて良かった。
「煮売屋」はまあ、普通に良かった。
茶店の主人も大阪の客に慣れているから、
多少はシャレでやっている部分もあるんやな。
まあ、科白には入れなくて良いと思うが。
「七度狐」は少し省略していた。
「頭に尾の付く亀」とか言っていなかった。
村人ののんびりした、
「ああ、また騙されている奴がいる」と見ている雰囲気が良い。
あと、やはり喜六と清八の違いがよく分からなくなる。
特に油を差すあたりから、位置関係もよく分からない。
あまり気にせずやるものなのかも知れない。
幽霊は「恐い」より「やかましい」感じ。
「雨月荘」みたい。
特に「野辺」の部分で拾い物が多かった。
「悋気の独楽」(雀三郎):○-
文枝からかなあ。
「髪を抜く」小咄から。
見世に出るまでの御寮人さんの心理などを説明するのは、
あまり好みではない。
別に説明せずに、ハラに持っておけば良いのでは、と思う。
見世の場面、科白が不安定。
いくつか抜けていたのではなかろうか。
戻ってお竹の独り喋りは楽しい。
もう少しクサい方が好みかな。
妾宅の場面。
旦那、おてかけさん、丁稚の復誦、と
言い訳の科白が続くのは少しくどい感じ。
丁稚はかいつまんで、でも良いと思う。
戻って殴られ、奥に行く。
お竹の憎憎しさが楽しい。
後で丁稚が「血ぃ吐いて死ぬし」と言い返すあたりの掛け合いも。
独楽は3回回し、
最後は御寮人さんの独楽が旦那の独楽を弾いてしまい、
飛ばされた旦那の独楽がおてかけさんの独楽に当たってしまう、というもの。
「悋気」に対する皮肉ではあるのだが、
「3回回す」くどさの方が先に立ってしまうなあ。
あと、「キライ!」が弱い感じがする。
このネタは、御寮人さんの「不安」「悋気」といったところが通奏低音で、
ネタの中ではそれを押し殺したり、時に少し噴き出たりしているのだが、
この「キライ!」は、その抑えが効かず発せられる科白だと思う。
それなりの感情の強さ、深さがあって然り、と思う。
「仮面ライダーなにわ」(雀喜):○-
仮面ライダーマクラ。
最近のライダーはお母さん向け、昭和ライダーは良かった、という話。
私は雀喜と(広く言えば)同世代なので概ね同感できるが、
この日の年齢層の客には、あまり理解できない話だったかも知れない。
# 昭和でも、ブラックとかRXって、けっこうお母様向けだった気もする。
ネタは、今まで見た彼のネタの中では一番楽しめた。(古典、新作含めて)
もちろん、だいたい同世代だからベースで共感できる、というのもあると思うが。
「用意をしてきます」と言って一度下がる。
(下がったタイミングは、ネタの途中だったかも知れない)
袴を履いていたこともあり、
数ヶ月前に鶴笑が「百年目」の前に暴れたことを思い出してしまった。
ラジカセで音楽を掛けながら、変身ベルトを付けて出てくる。
「怪奇コアラ男」。
粗筋は、まあ、普通のライダー物のパターン。
「コアラの街」と聞いた瞬間に「コアラのマーチ」を思い浮かべてしまったのだが、
これがサゲになっていた。
サゲにする程でなく、どこかで回収するレベルのシャレだと思うのだが。
「そこは押さないの?」とか「もっと変なギャグにできないか?」など、
粗を感じたところは多いのだが、
バカバカしいことを楽しんで演っており、
まあ、それで満足した。
客が付いてこないことを気にせず、
響きが楽しいから「ラッタッタ」に乗っていくとか。
しかも、いつエンジンが掛かったのか分からないまま向こうに着いていた。
「早口言葉」は設定としてイマイチだなあ。
教室とかなしで、いきなり助けに来ても良いのでは?
「フェスゲの動かなくなったジェットコースターで立ち回る」というのは
「天王寺動物園」→「動楽亭」と来た流れで、設定として正しいと思う。
小拍子を使うのも。
いちおう、「仮面ライダーなにわ」ということで
大阪にちなんだものが出てくるのだが、
いまいち「ああ、大阪だな」という感じがしない。
自然っちゃあ自然なのかも知れないが、
例えば喫茶店で食べているのがお好み焼きだとか、
変身すると食い倒れ人形の恰好になるとか、
どうせやるなら、もっとベタにやった方が良いのでは、と思った。
もちろん、好みの問題なのだが。
「らくだ」(雀三郎):○+
弟子については特に触れずに、
いつも通りマクラを振り、ネタに入っていく。
屑屋と月番との会話で、
貧乏長屋の日常の光景を、ふと感じた。
あまり屈託のない屑屋。
確かに「店1軒飲み潰した」と言うし、
娘が買いに行くのを見送って何とも言えん気持ちになっているのだが、
根本では
「でも酒好きだから、しょうがない」「俺はこういう人間だ、認めろ」と
諦めて、居直っているように感じる。
「商人」というより「職人」風の人物なのかな。
熊に対しても、別に「酒を飲んで日頃の鬱屈を晴らしている」というよりも、
遠慮なく普通に、
相手が恐い人でなければ日頃から言っているようなことを
言っている感じ。
特に際立った「転換」がある訳でなく、
屑屋が普通に喋っている内に、
いつの間にか役割が変わっていた、という印象を受けた。
これはこれで、「らくだの死体を前にした、ある日常の物語」という感じで、
別に悪くないと思う。
最後はサゲまでいかず、
「葬礼や葬礼や」が伊勢音頭に変わるところまで。
終演9時15分頃。
----------------------------------------------
【ちょっと別の話】
「よせぴっ」について。
私が落語会を探すのにお世話になっていたのは、
学生時代は(確か)「ぴあ」と「Lマガ」だった。
その後はネットで、
当初は「寄席熱目」を使ったりしていたが、
今は主に「ねたのたね」を見て探している状況。
東京にいた頃は、当然「東京かわら版」。
寄席を探すだけ、という前提で言うと、
ネットを使う人にとっては
「よせぴっ」はあると便利(繁昌亭と動楽亭の昼席の情報もあるから)だが、
なければないでどうにかなる、というのが正直なところではなかろうか。
発行人の皆様には申し訳ないのだが。
私は記事の方はほとんど読まないので、何を載せると良いのかよく分からない。
(「載せない方が良い」とも言えない。)
とりあえず、寄席情報などの方で、
「こんなものを載せると良いのでは?」と感じるものを
「東京かわら版」も思い出しつつ、羅列。
手間とかコストとか、あまり考えていないが。
・放送関係。
「なみはや亭」の演目予定、NHKの日曜夜や「日本の話芸」、
あとは公開録画などの募集の情報。
・能狂言、歌舞伎、文楽、あるいは新喜劇や商業演劇。
寄席の客席で見る人を、松竹座や文楽劇場でも見かけることはけっこうある。
客層として重複しているのでは?と思う。
・落研や地域の天狗連など、素人の落語会。
私は趣味が合わないが、誓願寺の「ピーチク寄席」の情報が
「東京かわら版」に載っていて上方の情報誌に載らんのは変でしょう。
「年間サポーターになったら(プロとは別枠で良いと思うが)載せる」といった
条件はあった方が良いかも知れないが。