遊んだらいいじゃない!

平凡なサラリーマンの週末日記や映画鑑賞日記です。自分の活動の備忘録として記事を書いていきます。

読書感想文 - 深夜特急6

2014年09月12日 | 読書
いよいよ最終巻のヨーロッパ編。

どうやってエンディングを迎えるのか。

イタリアから始まり、フランスに入るところまでは予想通り。

ところが、ロンドンが最終目的地なのに、スペインからポルトガルに回るとはどれだけ旅がしたいのやら。

しかし筆者にとっては、旅を続けたいのではなく、終わることが怖い、やめ方がわからない、というのが本当のところ。

無期限でいつまでも旅をしていると、それが当たり前の生活となり、変えたくなくなるんでしょうね。


フランスから南下したところから、この旅の最終ゴール地点が分からなくなる面白さが出てきます。

ポルトガルの西端をエンドとするのか、はたまた貨物船に乗って日本に帰ることになるのか。

そんな予想を楽しみつつ読み進めると、意外にもすぐに通り過ぎそうなパリに戻って長期間滞在したりしている。

筆者の本当に自由な旅に羨ましいと思う反面、自分がこの環境にあった場合の怖さみたいなものを想像する。


ロンドンに着き、いよいよページ的にもエンドを迎えそう。

しかし、深夜特急のラストは、はっきりとしたゴールが無かったのです。

日本にどうやって帰ったのか、はたまたアイスランドに渡ったのか?

読者にヤキモキさせるラストでした。

しかし、これぞ深夜特急らしい、最後まで旅を忘れさせないエンディングだったと思います。


バスが世界の至るところに存在し、バスを通して、各地の文化・人々を知る。

自分には出来ない旅だけど、世界はバスで繋がってるという、バスの凄さを再認識させられました。

読書感想文 - 深夜特急5

2014年09月08日 | 読書
5巻目を読むのに、随分手間取ってしまいました。

一度読んだのですが、この5巻目は、4巻目までと比べ、どうも面白くないのです。

ただ頭に入れなかっただけかと思い、久々に読み直しましたが、やはりあまり面白くない。

4巻目までは、紀行文として各国での出来事や人々の風習・行動が、筆者が楽しんだように、読む側も楽しめていたのだが、この巻はその魅力が感じられない。

トルコ・イスタンブールの街並みやフェリーでアジアとヨーロッパを往復する下りには、旅情を掻き立てられましたが、それくらい。

読み直して分かったのは、それが筆者自身が旅に面白みを感じなくなってしまったから、ということ。

旅は人生と同じで、経験を積むごとにあらゆることへの新鮮さは失われ、よっぽどのことがない限り、興奮をしない。

旅をする意味や目的を失い、漫然と移動を続けてしまっている筆者、というのが5巻でした。

紀行文としては、面白くないのだが、筆者のそのような心情を表している、という点では、その心情が読み手も自然と感じられたことにこの巻の素晴らしさを見出せたと思います。

読書感想文 - 深夜特急4 シルクロード

2014年06月09日 | 読書
最も自分にとって縁遠いと思われる中東の旅。

アフガニスタンなんて、今でこそ入国できるのか分からないくらいテロやなんやらで危険地帯に指定されているけど、著者が旅した当時は安全な旅ができたんですねぇ。

ヨーロッパからもアジアからも陸路で貧乏旅行をする若者たちが流入してくる様は、まさにシルクロードって感じがします。

シルクロードってもっと北の中央アジアあたりを指すのかと思っていたけど、イランやアフガニスタンもシルクロードに入るのか。

文中で意外に思ったのが、物価がインドと比べて倍近く高いということ。

そしてバスがちゃんと縦横無尽に走っているということ。

鉄道が無い分、バスが重要な移動手段なんでしょうねぇ。

読書感想文 - 深夜特急3 インド・ネパール

2014年06月02日 | 読書
第三巻は、深夜特急シリーズで、実は一番読み応えがあるような気がする。

というのも、やはりインドという国の強烈さをたっぷりと味わうことが出来るから。

カースト制、道端で倒れているあらゆる病を持った病人たち、猛烈な暑さ、列車のド級な混雑などなど。

舞台がインドとなれば、イメージとして驚くようなものではないのだが、読んでいても自分が筆者と同じ行動・経験を出来るかと言うと、全く出来る気はしない。

トイレで用を足した後、紙を使わず手で処理する、という方式に筆者はすぐ慣れたと書いているが、今の自分には多分無理。

そもそも大混雑の電車に乗ることすら出来ないだろうな。

旅をずっと続けていると、当たり前のように出来る自分も登場するのかしら。

そういう旅が出来るようになれば、本当にその国を旅をしたことにはなるんだろうがなぁ。

筆者が旅をした時代からすると、今はインドも相当旅をしやすくなっているのだろうが、自分が旅をしようと言うには、まだ勇気が足らない。

でも、本を読んでいつかは足を踏み入れたいという興味がそそられたことは間違いない。

読書感想文 - 氷河期 ルーヴル美術館BDプロジェクト

2014年05月30日 | 読書
日比谷図書館の特設コーナーで展示してあった一冊。

文章ではなく漫画本で、本自体のデザインやサイズ、絵のタッチや吹き出しの位置、キャラクターの動きがどうも「タンタンの大冒険」に似ている。

特設コーナーの紹介文を読んでみると、この作品はタンタンと同じフランスの漫画作品で、BD(バンド・デシネ)というジャンルだそうな。

ちょっとキャラクターの動きの意味がよく分からないところがちょいちょいあったが、ルーヴル美術館とのコラボ作品ということで、後半から怒涛のように美術品が登場。

有名な美術品ばかりのようだけど、造詣があまりにも浅い自分には、絵を見ても美術品であることがさっぱり分からなかったな。

読書感想文 - 深夜特急2 マレー半島・シンガポール

2014年05月28日 | 読書
第二巻は、香港から飛行機でタイに渡り、マレーシア、シンガポールと旅する内容。

後に著者が自分で気づいているが、これらの国を香港のような街や人々の熱気を追い求めて旅をしてしまっており、そのギャップから最後まで負のイメージを持ちながら旅をしてしまっている。

文章にもそのような描写が何度も表れており、読み手としても、各国の雰囲気や特徴を感じとれず、東南アジアには魅力がある国が無いという印象を受けてしまった。

もうちょっと早く東南アジアは香港ではない、と気づいてほしかった。

東南アジアでも、筆者はその土地の生活に入り込み、日々を過ごしているが、特にベナンでの滞在記は、この本で最も面白いところ。


読書感想文 - 深夜特急1 香港・マカオ

2014年05月21日 | 読書
紀行本の代表格とも言える深夜特急シリーズ。

著者がインドからバスを乗り継いでイギリスを目指す旅の記録です。

泥臭く、危険で、金欠な旅は実際にはできるものではないけど、皆こういう旅をしてみたい、と多少なりとも憧れをきっと持ちながら読むことになる、ロマン溢れる内容です。


第一巻は、スタート地点のインドの話が少しあるが、インドに行く前に立ち寄る香港・マカオの話がほとんど。

香港もマカオも行ったことがあるので、読んでいると現地の雰囲気を思い出せる気がしてきます。

香港では、街や人の熱気がすごく、露天商や屋台が並ぶ通りを見ると、祭りが毎日開催されているような感覚になる、と著者は言っています。

確かに、香港は一般的な店の印象はあまり無く、地べたでわけわからんものとか売りながら道行く人に声かけまくってるオバチャンとかの記憶が残っているな。

滞在中の宿が連れ込み宿になった、というのも自分ではとても勇気が無くて出来ないが、本で読むと面白い逸話。


マカオでは、カジノで「大小」にすったもんだする話が大半だが、ここも自分にとっては面白かった。

自分もマカオのカジノに行った時は、ひたすら大小をやってたので、読みながら著者の情景も目に浮かぶ。

さすがにディーラーの動きや法則までは自分は分からなかったが、周囲の人の賭ける様子を見て賭けたりとか、そろそろゾロ目が来るだろ、とかの勘を働かせてたことを思い出し、「そうそう!」と心の中で思いながら読み進めました。


現地の雰囲気が手に取るようによく分かる文章なので、国や民族でどのように違うのか、を理解できるのが深夜特急シリーズの良さかと思います。


読書感想文 - 登頂 竹内洋岳

2014年05月14日 | 読書
日本人で初めて8000m峰14座を登頂したプロ登山家竹内洋岳の登山記録。

会社所属の登山家なのに、プロってどういうことだろう、と思っていたが、この本に想いが書いてあった。

登山人口の裾野を広げるために、アマチュアが目指す目標になるべくプロを名乗った、とのこと。

自分も山に登る人間なので、竹内氏を目標にしてヒマラヤとか世界の高峰に触れてみたい興味だけはあるのだがね。

やっぱりこういう人は、本当に行動力がある。

就職したてなのに、登山のために早速何ヶ月も休職したりとか出来ないものね。

登山にかかるお金も100万とか、そんなお金出せないもんなー。


ブログで公募したパートナー阿蘇さんとチョーオユーに登る話が、阿蘇さんを自分に置き換えてみることで、その厳しさが手に取るように想像できる。

アルパインスタイルをベースとした速攻登山のため、高度順化のスケジュールがタイトで、体質的に慣れていないと毎日高山病との厳しい戦い。

初の富士山も高山病になった自分は、きっとヒマラヤではいつ順化するのか、と思うくらい辛い日々が続きそう。

プロ登山家でも、やはり道に迷うようで、チョーオユー下山の話もなかなか興味深い。

暗闇の中に道に迷う恐怖、道に迷った時の基本である登り返しを決断することの困難さ、超高峰であるがゆえの凍傷。

そんな登山の怖いところが下山のエピソードにたっぷり含まれている。

一番印象に残ったのは、「結局自分を助けるのは、自分でしかない」という心構えがこのような厳しい山に挑むためには必要であるということだった。

読書感想文 - 共喰い・第三紀層の魚

2013年09月10日 | 読書
芥川賞受賞作品という小説を初めて読んでみた。

まぁ、さすが受賞作!という点はよく分からなかったが、とにかく状況描写の細かさがすごい。

本筋には全く関係ない物質の状態まで、事細かに説明されており、一回読んだ時には、辟易して結構スッ飛ばしてしまった。


物語は、とにかく暗い。

舞台となる集落がまず暗い。

生活排水が流れこみ異臭を放つ川、ヒビ割れが入ったマンションの角にはいつも佇む謎の売女。

遠馬の親父は、性欲のままに行動し、行為中は女に暴力を振るうことで快感を得る変態性がある。

遠馬は、それが悪いことと分かっていながら、そんな父親の性格を受け継いでしまっていることも認識しており、葛藤する子供心が描かれている。

釣り上げた鰻やハゼの死体がボロボロに崩れたところに興奮を感じ、一方で苦しむ反応が無いことが分かるや興奮が冷める、というシーンなど、父の暴力性を受け継いでいることを表すシーンが所々にある。

このような親子関係が随所に表現されているが、これを読み解くのが非常に難しい作品だったので、何度も読み込まないと読んだことにはならないのだろうなぁ。


併録の「第三紀層の魚」

主人公の少年ガヤマが、祖父や父、看病もしてきた曾祖父の死に触れることで、人間が死ぬことについて、主観的に、感じたことが描かれている。

少年の曾祖父の葬式で、自分に涙は無く、母や祖母の涙が印象的である、とある。

自分も子供心にはあまり死の悲しさが分からず、葬式で涙を流すようなことは無かったことをこの一節で思い出した。

また、地元を離れる直前の釣りで、最後まで目標としていたチヌが釣れなかった時の涙を流す描写も印象的。

チヌが釣れなかったこと、曾祖父が死んだこと、地元を離れること、といった自分にとってのマイナス要素が具体的に自分に近づきつつも、整理して実感出来ていないことを表しており、多感な子供心というのは、こういうものかと改めて教えられたような。


どちらの物語も「人間と魚」の関係で表現しているが、関連性はあるのかしら。

読書感想文 - 夜行観覧車

2013年07月26日 | 読書
なかなか珍しいお話でした。

高級住宅街で起こった殺人事件を軸に真相が明らかになっていく展開のサスペンスモノと思いきや。

最後には色々な問題を乗り越え、結束を固める家族の物語になっている。

事件のカラクリをあれこれ考え読んだ人には肩透かしをくらわされた感じではなかろうか。

章立てには工夫があって、それぞれの章で主観となる家を変えつつ、時間の流れと各家の関係性をわかりやすく表現しているのは、とてもいい構成だと思う。

しかし若干話の展開に無理がところが見られ、終盤の人間関係の急激な良化は違和感があった。

最後にこの違和感を与えられてしまうので、読み終えて面白かったと素直に思えないのが残念。

逆にリアル感があったのは、一般庶民が高級住宅街に無理して住むとどうなるか、という点。

遠藤家が周囲から受けたイジメの数々は、現実社会でも実際にありそうな話で印象に残った。

やっぱり身分相応の生活をするのがいいんですね。