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紫外線でリサイクルできる接着剤を開発

2023-08-29 10:36:11 | 化学
私は退職後勤務した研究所で、高分子樹脂の研究を行っていました。この高分子は被膜用の樹脂でしたが、せっかく高分子研究をするなら接着剤をやってみたいと思っていました。

接着剤には本当にいろいろな種類があり、一旦くっつくと剥がれないものや、カップヌードルの蓋のようにぺりぺりと簡単にはがせてくっついたりしないもの、ウエットティッシュの出口のように簡単に外れてまた接着できるものなど多種多様になっています。

こういった性質と化学構造とにどんな関連があるのか調べてみましたが、非常に難しそうでした。この研究所には8年も勤務しましたが、残念ながら接着剤の研究はできませんでした。

さて物質・材料研究機構(NIMS)が、波長の違う紫外線をスイッチにして強い接着と容易な剥離を両立し、リサイクルが可能となる接着剤を開発しました。プラスチックなど接着しにくい素材に対応するうえ、水中を含めた湿潤な環境でも使えるようです。

NIMS高分子研究センターでは、ムラサキイガイやフジツボなどが海岸の岩礁や船底に付着する仕組みに着目し、付着を防ぐコーティング剤などを研究していました。

今回の研究では、コーヒーをはじめ植物全体に存在する「カフェ酸」に注目しました。カフェ酸は波長365ナノメートルの紫外線を当てると分子が橋渡しをしたようにつながる架橋反応を起こし、波長254ナノメートルの紫外線を当てると脱架橋反応で元に戻る性質があります。

カフェ酸の化学構造にムラサキイガイが分泌する接着成分に多く含まれるカテコール基があることより、架橋反応によって接着強度が高まり、脱架橋反応によって接着強度がなくなる接着剤の開発を目指しました。

カフェ酸を組み込んで開発した接着剤は、まず基材に塗り365ナノメートルの紫外線を当てると表面に塗膜ができて保存が可能になります。これを80℃程度に加熱しながら基材同士を合わせると主にカテコール基部分が働いて接着します。

接着したものは無理やりはがしてまた加熱してつける操作を30回繰り返しても接着の性能は変わりませんでした。接着を止めるときは、まず接着剤に波長254ナノメートルの紫外線を当て、カフェ酸の脱架橋反応で高分子が元の直鎖上に戻り、基材から離れやすくします。

機材の表面についた接着剤を溶剤で洗い流すことで基材、接着剤共に回収し再利用できます。この接着剤は機材の制約を受けないのが特徴で、プラスチックや木、カーボン、金属などで強い接着強度が得られます。

このように紫外線で着脱でき、カテコールを含むため湿潤下や水中でも接着できるという面白い性質を持っています。

このため手術時の体内で用いる医療用接着剤や、洋上建造物の補修工事などに寄与することが見込まれるとしています。


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