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糸状コラーゲンを高速で作る技術を開発

2024-08-14 10:38:12 | 化学
コラーゲンというとぷりぷりしたタンパク質のイメージがありますが、実際は非常に強いもので腱や靱帯も糸状コラーゲンでできているようです。

北海道大学などが、腱や靱帯を形作るコラーゲンマイクロファイバーを高速で作る紡糸技術を開発しました。糸状コラーゲンを束にすると、健常な人の靱帯の2分の1から3分の1程度の硬さや丈夫さとなり、臨床応用できる十分な強度が得られました。

スポーツ選手など多くの人が患い、体内の別部分の腱を自家移植するのが一般的だった膝前十字靱帯損傷の治療に人工腱として使える可能性が高いとしています。筋肉と骨をつなぐ腱や骨と骨をつなぐ靱帯はコラーゲンからできています。

人体と同様に線維が一方向に整列した似た構造を持つ糸状コラーゲンを増産できれば、人工腱の材料となり得ます。これまでの技術では、1時間で数十メートル程度作るのにとどまり、実用化に結びついていませんでした。

北海道大学の研究チームは、長年研究されてきたノズルを通して紡糸用コラーゲン水溶液を凝固液とエタノール液を通してから線維として巻き取る「湿式紡糸」を基に、水溶液を凝固液に通さなくてもエタノール液中で凝固するものに改良しました。

これにより紡糸の行程を短縮し、凝固液内に含まれる薬剤を除去する手間も省けます。これまでの紡糸技術ではエタノール液中で凝固過程のコラーゲンを引っ張って伸ばす「延伸」を行う際に切れてしまう課題がありました。

延伸しやすいよう成分を工夫したコラーゲン水溶液を独自開発し、エタノール液中に押し出すことで形成される糸状コラーゲンゲルを乾燥してマクロファイバー化する過程で巻き取る速さを押し出す速さより高速にすることで、延伸を実現しました。

延伸の工程があることでコラーゲン繊維が一方向に整列した内部構造を得ました。具体的には、紡糸用コラーゲン水溶液を47マイクロメートルでエタノール浴に押しだし、押しだすよりも4.4倍の速さで巻き取ることで延伸しました。

紡糸速度は1時間に200メートルまで上がり、直径が10〜20マイクロメートルの生体内コラーゲン繊維に近い22マイクロメートルの糸状コラーゲンが得られ、糸状コラーゲンの連続生産が可能になりました。

ただ実際の靱帯や腱のコラーゲン繊維の断面が真円であるのとは違い、得られた糸状コラーゲンの断面は楕円形となり、延伸時にローラーから圧力を受けた影響とみられています。

断面が楕円形の糸状コラーゲンが、医療現場で人工腱として使うことができるかを調べた結果、天然の腱よりやや弱いものの臨床応用にとっては十分な強度が得られました。

この人工腱は10年後に治験を行うことを目指しています。


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