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肝細胞からヒト胚モデル作製

2020-07-03 10:25:13 | 自然
ヒト肝細胞を用いて、いわば「青写真」ともいえる段階にあるヒト胚のモデルを作成することに成功したとの研究が発表されました。

胎児の発達初期段階に関する重要な知見を提供する可能性があるようです。

イギリスケンブリッジ大学とオランダヒューブレヒト研究所の研究チームによれば、今回開発したモデルを用いることで、これまで垣間見えることのできなかった人体形成の基礎課程を観察することが可能になるとしています。

ボディプランとして知られる人体構造の配置は、「原腸形成」として知られる過程を通じて行われます。この過程では胚内に三つの異なる細胞層がが形成されます。これらの細胞層はその後、神経、筋骨格、消化管という人体の三つの主要な系統を発生させます。

しかし原腸形成は人体の発達におけるブラックボックス期としても知られています。これは法的規制により、14日を超えて実験室内で胚を発達させる研究は禁止されているためです。

こういった法規制が現在でも必要なのかは若干疑問な部分もありますが、ヒトの胚を実験室で培養するということは、倫理面での問題が出てきそうな気もします。

研究チームによると、今回作成したモデルは受精18〜21日後の胚に似ているとしており、これは原腸形成が起こるのとほぼ同じ時期にあたります。出生異常の多くがこの時期に発生し、原腸形成に関する理解の向上は、不妊、流産、遺伝病などの問題を解明するツールになり得ると研究チームは指摘しています。

研究チームは、今回「ガストロイド」として知られる3次元モデルを作成するため、ヒト細胞を密着した塊に集め、特定の遺伝子を活性化させる信号として機能する化学物質で処理しました。この化学物質は明らかにしていませんが、近年遺伝子活性化の役割を果たす物質は数多く開発されているようです。

チームによると、ヒト胚の3次元モデルを作成するために、ヒト肝細胞が使用されたのは初めてだとしています。今回の手法をめぐり研究チームは、ガストロイドには脳細胞がなく、子宮内で着床するための組織も持っていないため、完全に形成された胎児に発育することは決してないと強調しています。

研究ではガストロイドの発達を約72時間にわたり観察し、筋肉、骨、軟骨などの形成につながる事象の明らかな兆候を特定することができたとしています。

今回研究チームが肝細胞から作製した胚は、受精卵から発達した胚とは微妙に違っているようですが(同じようであればそれはまた問題ですが)、発生初期の発達を見るには良いツールとなるような気がします。


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