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単純そうで難解な「水素」

2020-01-03 10:35:30 | 化学
水素というとそれほど身近なものではありませんし、どういったものかはほとんどの人が知らない元素だと思われます。

それでも最近は東京では水素を燃料とした燃料電池タイプの都営バスが走っていたり、東京五輪でも水素が聖火の燃料として検討されているなど、水素社会が迫っているような気持ちになります。

現在文部科学省の科学研究費助成事業・新学術領域研究で「ハイドロジェノミクス」というプロジェクトが進んでいます。さまざまな分野の研究者が横断的に水素について研究を進め、水素の力を最大限まで引き出すことがプロジェクトの狙いです。

水素は原子番号1の最も基本的な元素で、酸素と反応しても原理的に水しか出ないクリーンエネルギーとして世界中で注目されています。日本では水素社会の実現を目指し、2017年に水素基本戦略が策定されました。

水素は色々な物質と組み合わさることで、これまでにはない優れた性質を発揮することができます。実は水素は最も変幻自在で、理解することが難しい元素のようです。

水素の状態としては、電子を一つ持っている状態(水素原子)、電子を一つ余分に持っている状態(ヒドリド)、電子を失った状態(プロトン)および電子を回りの原子と共有している状態の4つの状態を取ります。

さらに圧力や温度など外からの影響によって電子状態がとても柔軟に変わることができます。こういった水素の変幻自在な特性に関しては、現在の科学でも十分に理解されておらず、材料科学、化学、物理学、生物学の研究者によっても水素のイメージが全く異なっています。

今回のハイドロジェノミクスのように、水素を取り巻く色々な学問の研究者が一同に介して研究を進めているプロジェクトは過去にもなく、世界的にも初めてのユニークなプロジェクトと言われています。

水素は多くの物質の中に簡単に入り込んでしまうという性質があり、太陽電池のようにそれをうまく利用することもでき、鉄鋼材料の場合は水素が入り込むともろくなってしまうという事が起こります。

どちらの分野も独自に素晴らしい知見を蓄積していますので、それらを組み合わせながら物質と物質の間(界面)での水素の挙動解明を目指しているようです。

例えば、スマフォのバッテリーなどに使用されているリチウムイオン電池の中では、充放電の際にリチウムイオンが移動していますが、この動きを水素によってうまくコントロールすることが次世代電池を作るカギの一つとなっています。

またこのような水素の性質を理解することで、超伝導になる物質も発見されています。水素を使った難しい化学反応が実現できれば、医薬品などの開発も進むことになりそうです。

こういった水素の新しい特性などが解明されれば、面白い研究に応用できそうで期待しています。


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