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奇跡の腸内物質「スペルミジン」で長生き

2017-10-09 10:44:28 | 化学
アメリカのテキサスA&M大学の研究グループが、生命に宿命づけられた「老化」を遅らせる有力な手がかりを見つけたと発表しました。

結論を先に示すと、実験用のマウスにスペルミジンを投与すると、なんと25%も寿命が延びることが分かりました。これは人間にすれば80歳の寿命が100歳に伸びることになり、マウスでの結果ですが人間にも効果がある可能性が高いとしています。

余談も含めますが、このスペルミジンというのは生体内ポリアミンの一種で、ある意味なじみのある物質と言えます。これは炭素数7個の真ん中と両端にアミンが付いた化合物ですが、一般にアミン系はあまり良いにおいはしません。

いわゆるアミン臭というのは、魚や肉の腐ったようなにおいが基本です。スペルミジンは人間の精液中にかなり含まれ、精液の独特の臭いはこのスペルミジンの臭いです。有機化学者にとってこの化合物は色々用途は広いのですが、本当に使いたくない化合物です。

先輩の話ですが、スペルミジンを大量に使う実験の後帰りに電車に乗ったのですが、ある程度混んでいたのに先輩の周りだけ空いていたようです。あまり気にせず家に着いたら奥さんに非常に怒られ、すぐに風呂に入ったようです。このようにアミン臭は一旦つくとなかなか落ちず、先輩のように体中から精液の臭いをさせていたら、怪しい人となって当然です。

さてこのスペルミジンは、身近な食品にも含まれており、細胞や血管などに影響を与え老化を防ぐ力を秘めているとして注目を集めているようです。もともとポリアミンは、細胞の分裂を助け細胞の状態を健康に保つ働きが知られていました。

また人間の細胞にも生まれたときから存在し、その後も細胞内で作られているのですが、歳をとるにつれその量が減っていくことがわかっています。健康で長寿の人の腸内を調べると、スペルミジンがたくさん見つかるケースが少なくないようです。

このスペルミジンにはオートファジーを活性化する効果があるようです。オートファジーは簡単に言うと、細胞の中の古くなったごみを処理する働きのことで、細胞の中をきれいにすることで細胞の寿命を延ばすと考えられています。これは脳の神経細胞にも起きますので、認知症の予防にもなるといえるようです。

実際の実験としては、マウスに腸内ポリアミンを増やす物質であるアルギニンとビフィズス菌を投与すると、高齢になっても学習・記憶力が良くなるという結果が出ています。その他のスペルミジンの効果としては炎症を抑える働きがあり、動脈硬化の予防にも有効という研究もあるようです。

このように老化という現象全般に効くようですが、今後このスペルミジンがどのように展開されるかは面白いような気もします。

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