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謎が残る「プリオン病」の実態

2020-12-19 10:39:51 | 健康・医療
一昔前に大きな問題となった狂牛病という言葉を全く効かなくなりましたが、この狂牛病(BSE)は「プリオン」という特殊なタンパク質が原因とされています。

このプリオンが原因となって脳の神経細胞などが壊れる病気の総称をプリオン病といいさまざまな種の動物が感染するようです。

タンパク質が感染の原因であるというのは、この病気が初めてのようですが、こういったものが伝染するというのは不思議な気がします。BSEの騒動から時がたち忘れられつつあるプリオン病ですが、近年欧米などでシカに感染するプリオン病が拡大しているようです。

ヒトに発症するプリオン病は、歴史的にはクロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれています。この病気も他のプリオン病と同様にいまだに治療薬がなく、急速に進行する認知症を呈して、発症後1〜2年で死亡するとしています。

プリオンの研究は1950年代クール―病の調査を始めたことに端を発します。クール―病はニューギニアのフォア族に蔓延した脳の病気で、カニバリズム(人の肉を食べる習慣)が原因で起こっていることが判明しました。

クール―病さらにヤコブ病の脳組織をチンパンジーに移植して同じ病気を伝達できることを証明しました。その後この病気を伝達する(感染させる)原因の研究が進み、タンパク質のみからなる感染因子という意味でプリオンが提唱されました。

このプリオンを詳しく調べると、正常なプリオンタンパク質とアミノ酸配列は同じなのに立体構造が微妙に異なることが分かりました。そのわずかな差で、恐ろしく毒性が上がってしまいます。

ヒトに発症するプリオン病のうち7割以上は原因が分かっていません。多いのは遺伝性、そのほかに獲得性(後天性)があります。各特性プリオン病とは、プリオンの由来が判明しているもので、日本ではほとんどが脳の硬膜(頭蓋骨に下にあり脳を覆う丈夫な膜)移植によるものです。

プリオン病の中には様々な病気が含まれ、たとえば「家族性致死性不眠症(FFI)」もそのひとつです。FFIでは脳の視床いう領域が壊れることによって、夜に興奮状態になり、幻覚や記憶力の低下、体温の上昇、大量の発汗などが起こって眠ることができなくなり、やがて認知機能障害などをきたします。

発症から1年前後で意識がなく寝たきりの状態になり、2年以内に全身が衰弱し、肺炎などで死に至るケースが多い病気です。近年日本ではヒトのプリオン病が年々増加しており、特に死亡数に関してはここ20年の間に年間115人から292人へと増加しています。

背景には高齢化があるとされ、高齢化が進む日本ではさらにプリオン病が増える可能性があるようです。

この様にプリオン病というのは全く注目していませんでしたが、アルツハイマー病やパーキンソン病もプリオンが関与しているという説もあり、プリオンというのは思っている以上に恐ろしタンパク質かもしれません。

プリオンは小さいといってもタンパク質なのに、なぜ腸管から吸収されるのか、また脳血管関門を通過してしまうかなど謎も多いのですが、注目していきたいと思っています。


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