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認知症を超音波で治す

2019-09-11 10:20:50 | 健康・医療
認知症の治療は非常に困難で、現在承認されている治療薬はいずれも進行を抑制する程度のものであり、劇的な回復は望めません。

最近東北大学の研究チームが開発中の、「超音波」を使う治療法が注目を集めています。

医療現場での超音波利用といえば、最も身近なものが健康診断時のエコー検査で、CTと違って放射線被ばくの心配がないため、胎児検査にも使われている安全なものです。この発端は、重度の狭心症を治療する目的で始めた低出力体外衝撃波治療の研究でした。

この研究は内皮細胞に低出力の衝撃波を照射するとNO(一酸化窒素)が産生され、血管を拡張・新生させて動脈硬化を防ぐという事から始まりました。

この結果、結石破壊装置に使われる出力の10分の1の低出力の衝撃波が、最もうまく血管を増やすことを発見し、2004年に心臓病専用の衝撃波治療装置を開発しました。この衝撃波を超音波に代えることで、治療時間も短くなり安全性も高めることができたのです。

この超音波治療は2014年から東北大学病院をはじめ全国10の病院で臨床試験が行われています。この研究は、末梢にある微小な毛細血管である微小循環不全を改善する治療法であり、認知症への応用を開始しました。

認知症のアミロイドβやタウタンパク質といった物質だけを減らしても、これは氷山の一角であり、根底には微小血管循環障害があると考えられます。

記憶を司る海馬にアミロイドβが蓄積することでアルツハイマー病が発症するといわれてきましたが、認知症を発症させたマウスで調べてみたところ、海馬だけではなく脳全体に大量のアミロイドβが蓄積していました。

研究チームは、脳の微小循環障害が全脳にわたって起きていると考え、超音波を全脳照射してみました。その結果アルツハイマー型認知症のモデルマウスと、脳血管性認知症のモデルマウスと両方のモデルで、予想以上の改善効果が見られたとしています。

アミロイドβの蓄積が見られない脳血管性認知症モデルにも効いたという事は、「認知症は脳の微小循環障害が原因である」という事の証明にもなるようです。

この治療法は、患者の自己修復力や自己治癒力を活性化する方法で、適切な刺激を脳に与えるだけで、患者の組織が自分で治っていくという非常に理にかなった治療法としています。

具体的にはヘッドギアの装置をかぶり、耳の上の側頭骨という一番薄いところから交互に超音波を照射する方法が検討されています。昨年6月から実施した安全性評価治験では、全員に安全性が確認されています。

研究チームは臨床試験の結果次第では4年以内に実用化できる可能性を示していますが、新たな治療法として期待が持てるような気がします。


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