前回有機合成に酵素を利用するために、色々準備をして予備検討をしているときに当時ソ連のK教授から有機溶媒の一種であるヘキサン中で酵素反応が進行するという論文が出たことを書きました。
通常の水溶媒では、原料が溶けにくいなどの問題点がありましたが、それ以上に驚くべき発見といえます。酵素はもちろんタンパク質であり、有機溶媒はその立体構造を壊し活性を失わせるもというのが常識でした。
実際に多くの酵素反応では、反応を終了させるために水溶性有機溶媒の一種であるアセトンを添加することが一般的でした。逆にそういう常識にとらわれ過ぎていたのかもしれません。
この論文が確かであることを確かめたのち、どういう有機溶媒であれば酵素反応の邪魔をしないかを検討したところ、固定化酵素であれば多くの有機溶媒が使用可能であることが分かりました。
この酵素のセライトなど珪藻土類への固定化も自分でやるつもりでしたが、ある酵素の専門の会社がすべて引き受けてくれたので、使えそうな酵素はほとんど固定化したものをそろえることができました。
実際に利用したものはほとんどが加水分解酵素でしたが、例えばカルボン酸に不斉を持つものはDL型のカルボン酸エステルのL型だけが加水分解するということがうまくできました。
そのほかアルコール(OH)があるような化合物はそれをアシル化し、DL体に酵素を反応させるとL型のアルコールのみが生成するなどということにも成功しました。
この結果ある種の加水分解酵素は基質特異性(ある一部の原料にのみ反応する性質)が予想外に広く、新たに合成した化合物でも反応するが、立体があるとそれを認識しDまたはL型の一方が反応するという便利な性質を持っていることが分かりました。
もちろん生成したL型に若干D型が混じってしまうケースもありましたが、酵素をうまく選択することなどにより光学純度(L型とD型の比率)を高める方法も見つかりました。こういったことにより化学合成したDL体を光学活性体にする方法が出来上がったことになります。
しかしここで大きな問題が持ち上がりました。まず酵素の使用量ですが、水溶液中の反応に比べて数十倍の量が必要でした。酵素量を減らすと反応が遅くなるだけでなく、光学純度も低下してしまいました。
また固定化酵素ですので反応終了後回収できるのですが、やはり有機溶媒のためか回収した酵素はかなり活性が低下してしまい何度も使うことはできませんでした。
そこでコスト試算をしたところ、固定化酵素の価格が10分の1程度に下がったとしても、この工程の価格は非常に高くなりとても実用化できるようなものではないことが判明したのです。
そこでいかに安くこの酵素反応を行うかの検討に移ったのですが、次回に続きます。
通常の水溶媒では、原料が溶けにくいなどの問題点がありましたが、それ以上に驚くべき発見といえます。酵素はもちろんタンパク質であり、有機溶媒はその立体構造を壊し活性を失わせるもというのが常識でした。
実際に多くの酵素反応では、反応を終了させるために水溶性有機溶媒の一種であるアセトンを添加することが一般的でした。逆にそういう常識にとらわれ過ぎていたのかもしれません。
この論文が確かであることを確かめたのち、どういう有機溶媒であれば酵素反応の邪魔をしないかを検討したところ、固定化酵素であれば多くの有機溶媒が使用可能であることが分かりました。
この酵素のセライトなど珪藻土類への固定化も自分でやるつもりでしたが、ある酵素の専門の会社がすべて引き受けてくれたので、使えそうな酵素はほとんど固定化したものをそろえることができました。
実際に利用したものはほとんどが加水分解酵素でしたが、例えばカルボン酸に不斉を持つものはDL型のカルボン酸エステルのL型だけが加水分解するということがうまくできました。
そのほかアルコール(OH)があるような化合物はそれをアシル化し、DL体に酵素を反応させるとL型のアルコールのみが生成するなどということにも成功しました。
この結果ある種の加水分解酵素は基質特異性(ある一部の原料にのみ反応する性質)が予想外に広く、新たに合成した化合物でも反応するが、立体があるとそれを認識しDまたはL型の一方が反応するという便利な性質を持っていることが分かりました。
もちろん生成したL型に若干D型が混じってしまうケースもありましたが、酵素をうまく選択することなどにより光学純度(L型とD型の比率)を高める方法も見つかりました。こういったことにより化学合成したDL体を光学活性体にする方法が出来上がったことになります。
しかしここで大きな問題が持ち上がりました。まず酵素の使用量ですが、水溶液中の反応に比べて数十倍の量が必要でした。酵素量を減らすと反応が遅くなるだけでなく、光学純度も低下してしまいました。
また固定化酵素ですので反応終了後回収できるのですが、やはり有機溶媒のためか回収した酵素はかなり活性が低下してしまい何度も使うことはできませんでした。
そこでコスト試算をしたところ、固定化酵素の価格が10分の1程度に下がったとしても、この工程の価格は非常に高くなりとても実用化できるようなものではないことが判明したのです。
そこでいかに安くこの酵素反応を行うかの検討に移ったのですが、次回に続きます。