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ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

日本発 ガン新薬

2016-09-28 11:08:21 | 
新聞にタイトルの記事が特集されましたが、これはガンの新薬の話というよりは、京都大学名誉教授の本庶佑(ほんじょたすく)先生の業績の話でした。

このタイミングでこういった記事が出るというのは、来週から発表になるノーベル賞が絡んでいるのかもしれません。本庶先生は今年度の医学生理学賞の候補とされています。また日本人のノーベル賞受賞が出ることは嬉しいことですが、その前置きとしてこの記事を紹介します。

本庶先生は京都大学でアポトーシスに関連する遺伝子を探索していました。「アポトーシス」というのは細胞が自ら死を選ぶ現象で、免疫とも関連すると言われていました。自ら死を選ぶというのも変な表現ですが、例えばガン関連で例を挙げて簡単に説明します。

細胞の遺伝子は色々なことで、例えば紫外線で有ったり発ガン物質などで傷つけられたり、分裂の際のコピーミスなどで一部正常でない遺伝子となってしまいます。これを修復する機構はあり、大部分は正常に直されるのですが、いわば修復不可能な遺伝子も出てくるわけです。

こういった正常でない遺伝子を持った細胞は、最悪の場合ガン化したりする可能性もあります。こういう時この正常でない遺伝子を持った細胞は、ある作用により自分から死を選んで死滅してしまうという機構が知られており、これおアポトーシスといっています。

具体的手法は省略しますが、本庶先生のグループはこれに重要な役割をする遺伝子の生産物として、「PD-1」と名付けたものを見つけました。これが1992年のことです。ところがこのPD-1をいろいろ調べたり、この欠損マウスを作ったりしてもアポトーシスが起きないことが分かりました。

そこでこのPD-1の役割をいろいろ調べたのですが、これが作れないマウスを観察していると、1年後に免疫が過剰に働いて起きる腎炎を発症したのです。これらの結果から、PD-1は免疫が過剰に働かないように、抑える働きをしていることが分かったわけです。

この仕組みを調べていくと、活性化した免疫細胞の表面にあるPD-1が、別の細胞の表面にあるPD-L1という物質と結合すると、その細胞への攻撃を止める指令を出すことが分かりました。ガン細胞でもPD-1を持った免疫細胞にPD-L1を結合させ、免疫の攻撃から逃れているということが推定されたわけです。実際にこのPD-1を持たないマウスにガン細胞を移植しても増殖しないことが確認できました。

こうして日米の製薬メーカーと共同で、このPD-1の抗体を作り働かないようにさせ、ガン細胞を免疫によって攻撃するという全く新しい治療法が確立できたわけです。現在はこの薬もかなり適用が広がり、どの程度の治療効果が出るか興味がもたれます。