人身売買増加の裏に東欧「解放」後の悲劇ルーマニアとブルガリアのケース~北欧・福祉社会の光と影(21)
2013.08.05(月)
みゆき ポアチャ:プロフィール
いまもむかしも貧困地域の状況というのは、かわってはいない。
それを知らない、記者たちは、あまりにも情けない。
よほど、おぼっちゃま、おじょうちゃま育ちだったのだろうか? それとも米国に脅迫されているのだろうか?
2013.08.05(月)
みゆき ポアチャ:プロフィール
彼女たちは最初に言われたように靴工場やレストランで仕事をするわけではなかった。着いた先でパスポートを取り上げられ、何人もにレイプされ、殴られ、脅迫され、そして何人もの「顧客」にセックスを強制される。夜は倉庫のような住居へ戻されて暗い中に監禁される。外国で、言葉も分からないまま、何十人もの女性が逃げ出すか死ぬまでその状態に置かれることになる。
毎日の日課のように、殴られレイプされていると、少女たちの精神は壊され、ほとんど洗脳されたような状態になってしまう。モラル的価値観が失われ、そこから脱出できなくなる。
人身売買をする側は、そうなるように意図的に虐待して「訓練」する。彼らが必要とするのは、「顧客」に提供するためのカラダであり、彼女らの「肉体」だけだからだ。
彼らは顧客を見つけ、値段をつけ、少女たちを取引する。少女たちは最終的にベルギーやオランダやドイツに送られる。
私が「なぜ彼女たちは気がつかなかったのか、どこに連れていかれ、どういうことになるか、全然分かっていなかったのか」と尋ねると、こういう答えだった。
「父親が死んで母親が病気だったり、兄弟は学校へ行かなければならない、仕事はないし、借金がかさんでいき、それでも母の治療費を支払わなければならない、誰かが何かをしなければならないという状況だったりする。それで人々が腎臓を売ったり、盗みを始めたりして、売春に行き着く」
クリスティーナの話では、どういうことか分かっていながら、仕方なく親や兄弟に売られる少女もいる。11歳で母親に売られた子もいる。また、彼女が聞いた話では、トルコへ売られた少女が、自殺を図って窓から飛び降り、重症を負った。命は助かってルーマニアに送り返されたのだが、その後、彼女の妹が「姉の負債を返すために」同じところへ連れられていき、売春をさせられたという。
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「非常に劇的だった。カネはなくなり、インフラは維持できず機能もせず、そして腐敗と犯罪が横行した。この状況は社会の一切の規範を破壊した。アルコールやドラッグの中毒者が増え、自殺率は上昇し、平均寿命が短縮し、差別による暴力で多くの犠牲者が出た。多くの人が国を出ていった」
「人身売買」について聞くと、こうだった。
「女性たちは、家族のために、責任を負って(こちらへ)やって来る。西側にはたくさんのカネがあると想像して来る。募集する側は、大きい都市での仕事があり、家族に十分送金できると思わせる。そしてどこかへ連れていかれ、殴られ、レイプされ、IDを奪われ、カネや一切の個人の所有物はなくなり、服も渡されない。なので脱出することもできない」
「想像することが困難だが、家族のために働かなければならず、売られるほかに選択はない。逃げ道もなく、誰にも助けを求められない。誰でも、人身売買の犠牲に陥る可能性がある。若い女性が多いが、男性も少年もいる」
なぜ犯罪を取り締まることができないのか?
「売買者は、例えばインターネットを使うとか、抜け道を探して非常に素早く方法を変える。そして犠牲者たちは証言するのをいやがっている。自分や家族が脅迫され、危険にさらされる恐れがあるからだ。なので、証拠をつかむのが困難だ。こうしてこの犯罪は隠蔽される傾向が強い」
いまもむかしも貧困地域の状況というのは、かわってはいない。
それを知らない、記者たちは、あまりにも情けない。
よほど、おぼっちゃま、おじょうちゃま育ちだったのだろうか? それとも米国に脅迫されているのだろうか?