架空庭園の書

音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から

フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団 第49回定期演奏会

2009-10-12 | 音楽

10月11日(日)   
ミューザ川崎シンフォニーホール   
フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団
指揮:小松一彦   

貴志康一:大管弦楽のための「日本組曲」から《花見》   
      ---貴志康一生誕100年によせて---   
I.ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》   
H.ベルリオーズ:幻想交響曲    
   
フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団
立教大学交響楽団OBを中心に現在では 一般の社会人オーケストラとして、年2回の定期演奏会の他に海外公演を行うなど、きわめて活発な活動をしている。

もうだいぶ前からアマチュア・オーケストラでもプログラムに載せるようになっている「春の祭典」(「ハルサイ」と書いた方がアマチュアっぽい。こういった言い方、私は嫌いだが....)と、ほぼ同じような大編成の幻想交響曲を、さらに最初に日本人作曲家、貴志康一作品で始めるという挑戦的(やりがいのあるという意味)なプログラムということで、聴きに行った。

実際に演奏を聴き、さらにプログラムに書かれていたこれまでの活発な活動を見ると、単純にアマチュアという括り方を超えているものが伝わってくる。

   プログラムについてさらに書くと、ベルリオーズとストラヴィンスキーにとって、代表作というだけ
   でなく、ベルリオーズは27歳、ストラヴィンスキーは31歳、いわば青年期の作品でもあり、
   世の中に出つつある若き作曲家として、その取り組みは革新的な性格を帯びることになる。
   なお貴志は28歳、この年(1937年)に亡くなっている。

      ストラヴィンスキー、それはなによりもまず『春の祭典』なのだ。
      と書いたのは、この作品について詳細なアナリーゼをしたピエール・ブーレーズ
      (「ストラヴィンスキーは生きている」 ブーレーズ音楽論---徒弟の覚書 晶文社)

         「そんな無理せ~へんでオーボエにやらせればええやン」というのは作曲家という
         人種を知らないヒトの考え方。
         ストラヴィンスキーは、敢えてバスーンにとって鳴りにくい高音域で吹かせた、と
         考えた方がよい。このような音色から生まれる表情を求めたのだから。

花見
今年は生誕100年ということで、貴志作品が取り上げられることが多い。それ以前から貴志作品を取り上げている指揮者小松さんのスタンスは素晴らしいとしかいいようがない。日本古謡「さくら」を取り込んだ5分程度の短い曲が、ややザラつきはあるものの充実した響きで始まった。

春の祭典
ファゴット4本、バス・クラリネット、Esクラリネット、ホルン8本、ティンパニ2をはじめとする打楽器群など、多種多様にこれだけの楽器がステージに並ぶ様は壮観。

    メインとなる2曲はフランス系(と無理やりこじつけるが)ということで、ファゴット、バスーンでは
    なく「バッソン」と書いた方がよいかも知れない。

ストラヴィンスキーならでは野性的なリズム、不規則にみえて周到な設計に基ずく鋭いアクセントなどの表現において、その豊かな音量ともあいまってこのオーケストラの機能の高さがよくわかる。

幻想交響曲
第2楽章《舞踏会》にコルネットのオブリガートが付くという珍しい版での演奏。示導動機がユニゾンで示されるところでの堅さ、第2楽章では第1ヴァイオリンによる優美な主題を歌いだすところなどでの音程の不安定さなどがあったものの全体としてはよくまとまった演奏といえるだろう。特に第5楽章は、内部に熱をもち生き生きとした表情が感じられたのがよかった。(逆をいえば、第4楽章まではやや大人しめの演奏だったということになるのだが)

アンコールとして、同じくベルリオーズの劇的物語『ファウストの劫罰』より《ラコッツィー行進曲》が演奏された。

全体の印象として
これだけの大編成の作品を取り上げられるという能力がすごい。演奏のレベルも高く、組織運営も円滑なのだろう。
その一方で、今日の演奏からだけという条件付きではあるが、演奏の質---ここでいう質とはアマチュアとしての一種の熱っぽさとでもいえばよいか---において、いくぶんかのもの足りなさを感じもした。それは、曲の構えの大きさに偏って、作品が内的に持つ、そして作曲者が表現したいものを---アマチュアとして----満たし切れているのか?ということでもある。そのことは、例えば、今日においてハイドンの交響曲を演奏して聴き手を納得させることの難しさにも通じるものがあるといえないだろうか?

プログラム
これまでの演奏会記録が見られる。
モダン・オーケストラという性格上、古典派、ロマン派、それもドイツ・オーストリア系の作品を中心に取り上げている。
フランス系は少なく、ラヴェルが数回、そしてサン=サーンスへの偏愛が感じられる(次回も3番)。珍しいのが柴田南雄、三枝成彰といった日本人作曲家もステージに載せている。
フランス系としてはドビュッシーはゼロ。《牧神》、《海》、《遊戯》など名曲が揃っているし、オーケストラとしては極めて挑戦的な作品群だと思うのだが。もっとも「ハルサイ」のように人を呼べるかというと?が付くが.....

ついでに触れておくと
今年、第62回カンヌ映画祭でストラヴィンスキーとココ・シャネルをテーマとした映画がクロージング作品となった。YouTubeにアップされている動画では《春の祭典》の初演時の様子が垣間見られる。

Coco Chanel & Igor Stravinsky


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