架空庭園の書

音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から

マリア・シュナイダーのCarlos Drummond de Andrade Stories

2012-01-11 | 音楽


弦のピツィカートに導かれて木管楽器の色彩感のあるフレーズが現れ、さらにヴァイオリンの柔らかな響きが重ねられる。そこにソプラノのドーン・アップショウDawn Upshawのヴォカリーズが加わってくる。

聴いた瞬間にヴィラ=ロボスHeitor Villa-Lobosを連想した----もちろんヴィラ=ロボスよりもっと現代的だが。

2012年最初のエントリーとして選んだ曲。

マリア・シュナイダーMaria  Schneiderが2008年に作曲した《Carlos Drummond de Andrade Stories》

ブラジルの詩人カルロス・ドルモンド・デ・アンドラーデCarlos Drummond de Andradeの詩をもとに作られた全5曲で構成される。

1. Prologue
2. The Dead in Frock Coats
3. Souvenir of the Ancient World
4. Don't Kill Yourself
5. Quadrille

無理に奇抜さを装うこともない----「現代音楽」にありがちなあざとさが感じられないと書いてもよい----ナチュラルな作品。

作曲者が女性であるということも大きな要素なのだろうけど、作品そして演奏からは、詩が持つ「孤独」「郷愁」「怖れ」といった感情を柔らかく受け入れ、それらを色でいうと暖色系のオーケストレーションでしなやかに包み込むような大きさが感じられる。

セントポール室内管弦楽団のサイトで、マリア・シュナイダー自身の解説とセントポール室内管弦楽団を指揮した演奏会(2008年10月23日-25日)のライブ録音を聴くことができる。

時折、マリア・シュナイダーからEメールが届く。といってもパーソナルなものでなくArtistShareに登録ユーザー向けのものだが.....

それらのメールからは、マリア・シュナイダーの人柄そして---何よりも音楽家としてのあり方、誠実さといってもよいものを感じていた。師匠であるボブ・ブルックマイヤーの逝去を告げる昨年末のメールでは、次のように書かれていた。その一部を引用する。

It's with great sadness that I share news of Bob Brookmeyer's death.  I've loved Bob's compositions and arrangements and his playing since the moment I first heard his music in the '70s.  It turned my life around.  Bob became a wonderful teacher, mentor and dear friend.  And he was enormously generous to those lucky enough to be his friend.
(中略)
Thank you, Bob.  What a life!  What an incredible life.  Thank you for making this world a better place.  You will be deeply missed.

ArtistShare
ArtistShareは、作品のリリース/流通やリスナーとの関係の持ち方(プロジェクトへ出資することも可能)において、従来のそれとは大きく異なる形態を提唱している。異なるが故に、認知度はそれほどでもなく、またCDの流通も少ないというハンディをおってしまう。だがマリアはそれらを十分わかったうえでこの形を選択したのだろう。

知的な大人の女性だけがもちうる"sexyさ"("美しさ"とルビを振りたい)を備えるマリア・シュナイダーという作曲家の活動から眼が離せない。

マリア・シュナイダーのSky Blue

マリア・シュナイダーのサイト
*画像はこのサイトのもの



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