風になれ

大自然のふところで山歩きを楽しむ生活。
いつの日にか、森にそよぐ風になれたら・・

『So far from the bamboo grove』、平和な日本

2014-06-30 | 薪ストーブ

 『So far from the bamboo grove』を読み終えた。満鉄に勤務する父親とともに北朝鮮に渡り、終戦時に脱出して命からがら引き揚げる家族の実話だ。
 アメリカでは中学校の教材に採用されたり児童の推薦図書になっている。1986年にアメリカで出版されて数々の賞を受けているが、日本では昨年、『竹林はるか遠く』という翻訳本が出たり、アメリカ韓国人のこの本の排斥の動きで話題になった。僕もそれでこの本のことを初めて知り、原作を取り寄せた。何冊も併読する習慣のため、薄っぺらな本なのに読了するまで時間がかかったけど、とても感動的な本だった。ロシアや朝鮮の共産軍から身を隠して38度線を越えて逃げ帰る苦労は想像を絶する。日本に帰っても敗戦で混乱するなか、日々の暮らしはこれまでの極貧と何ら変わらないという悲惨さに胸が詰まった。
 藤原てい氏の『流れる星は生きている』も同じような引き揚げ家族の話だけど、大人の目線で描写されているのに対して、この『So far from the bamboo grove』では11歳の子供の目線で描かれている。あらためて今の日本での平和な暮らしに感謝するけど、その平和にこのような悲惨な家族の歴史が刻まれていることに思いが至った。