Krystian Zimermanが奏でるピアノ曲、Frederic Francois Chopinの4 Balladesを聴きながら、『林原家』を読み終えた。読後感はすごくよかった。林原健氏の弟の靖氏の『破綻』を読み終えた後の気分悪さとは対照的だった。読み終えて、爽やかな気持ちになれた。
岡山に学生時代から住み始めて以来、林原の破綻は最大級の衝撃だった。同族経営の超優良バイオ企業の林原がなぜ潰えたのか、あれから3年も経つのに自分の中で未だ消化しきれずにいた。
この本に記されているように、大企業とステージが違う基礎研究に社長の独断で長期間取り組むことはオーナー経営者にしかできないことだろう。同族経営だから良いとか悪いとか言えるものではなく、インターフェロン、トレハロース、マルトースなどを生み出した事実が、同族経営の可能性と彼の事業家としての優秀性を証明している。企業経営のガバナンスの問題点は少なからずあるけれど、不動産価値の下落による担保力の低下が、多額の借入金に依存する長期研究型の事業スキームに狂いが生じてしまったことは不運だった。それに乗じて企業エゴむき出しの行動に出た金融機関にその正体と本質を見た。
この健氏の著書のお陰で、今まで胸に痞えていたものがきれいにとれた。健氏の冷静で客観的な分析と問題提起がすばらしい。あらためて林原という未公開会社が岡山という一地方にあり、林原健氏がリーダーシップを発揮して素晴らしい製品を生み出した林原の歴史は岡山の誇りだと確信した。