新勝庵

元サラリーマン、映画・読書・芸術好き。
おんとし 92歳 です。

キュウポラのある街

2011-06-17 21:59:32 | 映画

山田洋次監督が選んだ名作シリーズがNHKBSで再映されている。

昭和37年(49年前)に作られた「キュウポラのある街」を何十年ぶり

かで見た。

吉永小百合と浜田光男の“とってもいい映画だった”という印象位で

内容の殆どは忘れていたが、改めて見て、懐かしい時代を思い出させ

くれると共に、深奥な、後世に残る名画の一つだと改めて実感した。

京浜東北線で荒川の鉄橋を渡ると、そこは鋳物の町「川口」 丁度こ

の頃仕事の関係で川口には良く足を運んだ。 当時市内には500軒

くらい鋳物工場があった。

技術革新で今はもう殆ど姿を消したあの懐かしいキューポラ!

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独特の形をしたキユーポのラ(鉄を溶かす炉)の煙突

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出湯(熔鉄)が大取鍋(オートリベ)に流し出される

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それを小トリベにに移して・・一つ 一つ 鋳型に流し込む

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 「中学三年生を演じる吉永小百合」

映画の本筋は「下積みの労働者の子が貧乏にめげず、逞しく生きて行く

さまを描いたもの」であるが、 それを縦糸に、横糸として描かれる朝鮮人

の嘆き、

在日朝鮮人達が悩み抜いた末「建設中の北朝鮮に」に夢を託し帰国して

行くさまが描かれていて、改めて胸を打つ。

(この種の事を取りあげた映画はとっても珍しい)

そのシーンの・・一部・・

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学芸会で “にんじん”役を演じる朝鮮人を父に持つ三吉が「朝鮮人参」

とはやされて、壇上で泣きそうになる・・・

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日本人同級生の主役の女の子に“三ちゃん頑張って”と励まされて,

何とか演じきる ・・・

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ぐうたら鋳物職人の父が、酔っぱらって娘に朝鮮人の子とと仲良くして

いる事に文句を言う ・・・

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人種差別の不条理と時代錯誤を説明し、反論する娘(じゅん) ・・・

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いよいよ北朝鮮に帰る日、三吉は同級の友人達から餞別に沢山の

「ビー玉」を貰ってよろこぶ・・・・

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見送りに来た姉のじゅんは、三吉の姉の芳江から「とっても良くして

もらったから」とお礼に、なけなしの自転車をもらう ・・・

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川口駅前で「帰国朝鮮人達」の送別会 ・・・ 北朝鮮賛歌の大合掌・・・

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三吉と芳江の父(朝鮮人)はさんざん迷った挙句「新国家建設に躍進

する祖国」に希望を託し帰国を決意するが妻(三吉・芳江の母は日本人)

は姿を隠し、一緒に行かない ・・・

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あの頃は、金日成将軍のもと「独自の社会主義チュチェ思想」で新理想

国家建設に燃える素晴らしい国として、朝鮮総連は元より、日本社会党、

日教組、労働総同盟、全学連・・・その他多くの所謂、メデアも含め進歩

派と称する面々が北を礼賛した。私も若く当然、多少その様な思いでい

たが。

今はその総ての実態が暴かれ、欺瞞と虚偽に満ちた珍しい独裁国家

として注目を浴びている。

そういう思いでこの映画を見ると、何事も、真相というか実像を知るのに

はやはり長い時間と犠牲がいるんだなー!!・・・「今も歴史は作られて

いる」がこの良非は 50 ~100 年後 ・・ かな??。