山田洋次監督が選んだ名作シリーズがNHKBSで再映されている。
昭和37年(49年前)に作られた「キュウポラのある街」を何十年ぶり
かで見た。
吉永小百合と浜田光男の“とってもいい映画だった”という印象位で
内容の殆どは忘れていたが、改めて見て、懐かしい時代を思い出させ
てくれると共に、深奥な、後世に残る名画の一つだと改めて実感した。
京浜東北線で荒川の鉄橋を渡ると、そこは鋳物の町「川口」 丁度こ
の頃仕事の関係で川口には良く足を運んだ。 当時市内には500軒
くらい鋳物工場があった。
技術革新で今はもう殆ど姿を消したあの懐かしいキューポラ!
独特の形をしたキユーポのラ(鉄を溶かす炉)の煙突
出湯(熔鉄)が大取鍋(オートリベ)に流し出される
それを小トリベにに移して・・一つ 一つ 鋳型に流し込む
「中学三年生を演じる吉永小百合」
映画の本筋は「下積みの労働者の子が貧乏にめげず、逞しく生きて行く
さまを描いたもの」であるが、 それを縦糸に、横糸として描かれる朝鮮人
の嘆き、
在日朝鮮人達が悩み抜いた末「建設中の北朝鮮に」に夢を託し帰国して
行くさまが描かれていて、改めて胸を打つ。
(この種の事を取りあげた映画はとっても珍しい)
そのシーンの・・一部・・
学芸会で “にんじん”役を演じる朝鮮人を父に持つ三吉が「朝鮮人参」
とはやされて、壇上で泣きそうになる・・・
日本人同級生の主役の女の子に“三ちゃん頑張って”と励まされて,
何とか演じきる ・・・
ぐうたら鋳物職人の父が、酔っぱらって娘に朝鮮人の子とと仲良くして
いる事に文句を言う ・・・
人種差別の不条理と時代錯誤を説明し、反論する娘(じゅん) ・・・
いよいよ北朝鮮に帰る日、三吉は同級の友人達から餞別に沢山の
「ビー玉」を貰ってよろこぶ・・・・
見送りに来た姉のじゅんは、三吉の姉の芳江から「とっても良くして
もらったから」とお礼に、なけなしの自転車をもらう ・・・
川口駅前で「帰国朝鮮人達」の送別会 ・・・ 北朝鮮賛歌の大合掌・・・ 三吉と芳江の父(朝鮮人)はさんざん迷った挙句「新国家建設に躍進 する祖国」に希望を託し帰国を決意するが妻(三吉・芳江の母は日本人) は姿を隠し、一緒に行かない ・・・ ________________________ あの頃は、金日成将軍のもと「独自の社会主義チュチェ思想」で新理想 国家建設に燃える素晴らしい国として、朝鮮総連は元より、日本社会党、 日教組、労働総同盟、全学連・・・その他多くの所謂、メデアも含め進歩 派と称する面々が北を礼賛した。私も若く当然、多少その様な思いでい たが。 今はその総ての実態が暴かれ、欺瞞と虚偽に満ちた珍しい独裁国家 として注目を浴びている。 そういう思いでこの映画を見ると、何事も、真相というか実像を知るのに はやはり長い時間と犠牲がいるんだなー!!・・・「今も歴史は作られて いる」がこの良非は 50 ~100 年後 ・・ かな??。