碓井広義ブログ

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「あまちゃん」再放送  魅力あふれる脚本・演出・演者

2023年04月24日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

<Media NOW!>

「あまちゃん」再放送 

魅力あふれる脚本・演出・演者

 

今月からNHKBSプレミアムとBS4Kで、連続テレビ小説(以下、朝ドラ)「あまちゃん」の再放送が始まった。

最初の放送は2013年の4~9月。当時、新聞や雑誌で特集が組まれ、ネットでも連日話題になった。

放送終了後には、寂しさや喪失感で落ち込む「あま(ちゃん)ロス症候群」なる言葉まで生まれた。今回の再放送で人気が再燃している。このドラマの魅力を探ってみたい。

まず、朝ドラはヒロインが自立していく「職業ドラマ」が一般的である。過去に法律家や編集者はあったが、天野アキ(能年玲奈、現在はのん)のアイドルは前代未聞。

だが、アイドルを「人を元気にする仕事」と考えれば納得がいく。特に「地元アイドル」という設定は秀逸だ。

次に、設定は2008年からの4年間だが、アキの母・春子(小泉今日子)の若き日(演じるのは有村架純)を描くことで、視聴者は異なる時代の二つの青春物語を堪能できた。

80年代の音楽やファッションは知っている人には懐かしく、知らない人には新鮮で家族や友人とのコミュニケーションの材料となった。

また、大友良英による明るく元気でどこか懐かしいテーマ曲がドラマ全体を象徴している。

随所に挿入される伴奏曲は登場人物の心情を繊細に語っていた。「潮騒のメモリー」などの劇中歌がフィクションの世界から飛び出して街中に流れたのも画期的だった。

加えて、「じぇじぇじぇ!」をはじめ、名セリフの連発も人気の要因の一つだ。

1970~80年代のポップスを指して「分かるやつだけ、分かりゃいい」。奇策を繰り出すプロデューサーへの苦言「普通にやって、普通に売れるもん作りなさいよ」。

宮藤官九郎の脚本の特色は密度とテンポの物語展開だけではない。登場人物が発する言葉に熱があるのだ。

また、これほど多くの舞台俳優を起用した朝ドラはなかっただろう。

渡辺えり、木野花、松尾スズキは演出も手掛ける実力派だ。吹越満、荒川良々なども舞台人である。目の前の観客の心を捉える彼らの存在感が、物語を人間味あふれるものにしている。

ドラマづくりは脚本・演出・演者の総力戦だ。「あまちゃん」は上記のような要素を統合したことで、毎回1度は笑って泣けるまれな朝ドラになった。

今回、初めて見る人には驚きがあり、かつて見た人にはうれしい再発見がある。放送10周年記念にふさわしい、半年間にわたる視聴者プレゼントだ。

(毎日新聞 2023.04.22夕刊)


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