「山の郵便配達」のフォ・ジェンチイ監督、2003年の作品。
舞台は都市開発の波が打ち寄せる中国・重慶。
ションヤンは家族の問題も抱えながら、
一人、屋台を切り盛りし、そこそこの繁盛をさせていた。
彼女は離婚の経験の持ち主で、流産した経験もある。
そんな彼女の店に1年の通いつめる客がいて、
いつしかその男に心引かれるようにもなる。
しかし一方で、都市開発はどんどん進んでおり、
この屋台街自体が無 . . . 本文を読む
エミール・クストリッツァ監督、1985年の作品。スターリン主義の影響下にあった50年代初頭のユーゴスラビアを描くヒューマンドラマ。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールに輝いた。
少年マリックの父親は、隠れて愛人を作ったりして
いい父親ではないけれど、
マリックの家族にとって愛すべき大事なパパ。
そんなパパが愛人に漏らした、
ふとした政治批判が党の人間へ密告され、
パパは収容所送りになって強制労働さ . . . 本文を読む
1940~50年代はアメリカ、セックスに関する赤裸々な調査結果を発表し、世間の賛否両論の嵐を巻き起こした動物学者アルフレッド・キンゼイ博士の生涯を描く。『シカゴ』のビル・コンドン監督、2004年の作品。
「性行動」を“恥”とする傾向は世界共通なのだろうか――。
あまり自分の性行為に関するあれこれを、
赤裸々に語る人はいない。
(学生の時代の酒の席などではよくあったが。。。)
ゆえに、今の時代にあ . . . 本文を読む
アン・リー監督、1994年の作品。父と子のドラマを描いた三部作の3作目。今回の舞台は台湾で、男やもめとその娘三人との関係を描く。
父親役はもちろんロン・ション。
いつもしっかりした父親を演じているが、
今回は元5つ星ホテルのシェフで中華料理の達人ということもあって、
家事・料理・洗濯、さらになんでもできるスーパー親父である。
それぞれ外で働いている娘三人。
家の仕事は父にまかせっきりだが、
贅 . . . 本文を読む
小津安二郎監督、1957年の作品。幼いころ母親が家を出てしまったため、父親一人で子供たちを育ててきた家族の話。
長女は結婚して娘を一人もうけているが、
現在、夫との不和で実家に戻り、別居中。
次女は大学を卒業後、英文タイプの研修をうけており、
そのころから少々悪い仲間と付き合うようになった。。
あまり面に出さないが、父の心労が察しられる。
この1年ほど、小津監督の作品を
意識的に借りて見てい . . . 本文を読む
アン・リー監督、1994年の長編デビュー作。アメリカで暮らす息子の家族と暮らすため、北京からやってきた父親の葛藤を描く。
これは名作ですね。
冒頭の太極拳の静かなシーンからすでに面白い。
これから大変なことがたくさん起こるんだろうなぁと、
作品の空気ががっつり伝わってきました。
アン・リー監督の、この「推手」と、
「ウェディング・バンケット」「恋人たちの食卓」をあわせた
父親3部作ですべて中国 . . . 本文を読む
是枝裕和監督、2006年の作品。時は江戸元禄、父の敵討ちのため信州松本から上京してきた若侍に岡田准一が扮する、是枝監督初の時代劇。
それにしても岡田くんは、いい顔立ちですね。
あまり公言はしておりませんが、
いま日本で一番男前な俳優なのではないかと
実は僕は密かに思っておるのです。
さて、敵討ちに上京してきた宗左はもう3年は経つのに、
相手の手がかりすら見つけられない体たらく。
貧乏長屋に癖あ . . . 本文を読む
小津安二郎監督、1949年の作品。早くに妻を亡くした父親と、結婚適齢期の一人娘の、近く訪れるであろう結婚による「別れ」を意識した、お互いへの愛情模様を描く。
原節子と笠智衆が、その問題の父娘を演じる。
この作品が初めての共演らしいけれど、
もうこの二人はゴールデンコンビですね。
しとやかながら、内に強い意志を秘めている原節子と、
終始穏やかで、常に自分は人に一歩ゆずる笠智衆。
このバランス、美し . . . 本文を読む
小津安二郎監督、1952年の作品。見合いで結婚した夫婦同士に愛情は生まれるのかをテーマにした作品。
この時代、そろそろ見合い結婚ではなく、
恋愛して結婚したいという女性も増えてきたよう。
主人公である貿易会社の部長の佐竹夫妻の姪である節子も
とにかく見合いは嫌だとダダをこね、
その当日になってふっと姿を消してしまった。
それをかばった佐竹。つい、
「しょうがないじゃないか。嫌だといっているんだ . . . 本文を読む
ヴァディム・パールマン監督・脚本、2003年の作品。所得税の納付滞納で家を差し押さえられた女性と、その家を競売で買ったイラン人家族の間で起きた悲劇を描く。
はじめの90分間、あまり登場人物たちに共感できず、
まあまあのレベルの作品かな、と心配していた。
ジェニファー・コネリー演じる家を追い出されたキャシーは、
子供を産みたいと言ったら夫に反対され、
それが原因で離婚し、ちょうどまだ傷癒えぬ頃。 . . . 本文を読む
鳴海章の『輓馬』を原作に、「透光の樹」の根岸吉太郎監督、2005年の作品。北海道帯広の“ばんえい競馬”の厩舎を舞台に、傷つき癒され巣立っていく人間たちの姿を描く。
うん、これは秀作。
セリフじゃなく、シチュエーション、役者の表情で、
彼らが何をいま思い、何を言いたいのか鮮明に伝わってくる。
だから、泣ける。
伊勢谷友介演じる主人公の矢崎学は、
母親や兄に金を出してもらい、東京で会社を作って成 . . . 本文を読む
堤幸彦監督、2005年の作品。“若年性アルツハイマー”を題材としており、主演を渡辺謙、その妻役を樋口可南子がつとめる。
実は見るのを少し躊躇していた1本。
内容はもう、予告などで十分知っていたので、
ちょっとその病気の深刻さを自分が受けとめられるかが不安だった。
広告代理店でバリバリ働く49歳の佐伯雅行。
よき伴侶に恵まれ、娘ももうすぐ結婚。充実している人生だった。
しかし、その彼が、最近妙 . . . 本文を読む
アキ・カウリスマキ監督、1998年のサイレントムービー。
これは今までの彼の作品のなかで、一番の悲劇作品ではないでしょうか。
フィンランドの片田舎で仲むつまじく暮らすユハとマルヤ。
ユハは小さなころから身よりのないマルヤを育て、
いつしか心通い合い、結婚の運びになった。
彼らは年の差のある夫婦である。
そんな夫婦の生活に変化が生まれた。
あるとき都会に住む男シュメイッカがこの町にやってきて、 . . . 本文を読む
マシュー・ライアン・ホーグ監督、2002年のデビュー作。16歳の少年リーランドはある日突然、知的障害を持つ少年ライアンを刺し殺してしまう。「なぜ殺してしまったのか?」。その心の在処を探っていく作品。
「なぜ殺してしまったのか?」と書いたけれど、
心神喪失状態でなく殺人を犯した人間の殺人動機、その理由は、
はたして明確なんだろうか?
「理由」はひとつに集約されうるのだろうか?
人の心は複雑です。 . . . 本文を読む
チャン・ヤン監督、1999年の作品。北京の下町で銭湯を営む父親と、久々に帰郷したビジネスマンの長男、そして父と一緒に銭湯の手伝いをする知的障害を持つ次男の家族の物語。
家業を継がずビジネスマンになった長男ターミンが帰ってきた。
突然の帰郷のわけは、弟アミンからの一枚の葉書だった。
そこにはベッドに横たわる父と、それを見守る弟の姿が描かれている。
「もしや父に何かあったのでは」と、
とりもえず駆 . . . 本文を読む