「69」の李相日監督、2010年の作品。
吉田修一の同名ベストセラーを妻夫木聡と深津絵里主演で映画化したもの。
この作品のように、
人間を熱く、真面目に撮れる監督というのはとても素敵だと思います。
荒削りでストレートな演出をし、
美しいシーン、ファンタジックなシーンを織り交ぜながら、
それぞれのキャラクターの想いをリアルなものに近づけていると思います。
気になったのは、柄本明の配役くらいかな。 . . . 本文を読む
「猫が行方不明」のセドリック・クラピッシュ監督、2008年の作品。
パリはフランスではない、とよく聞く。
パリはパリだと。
パリの人間はよく不満を言う。
口ばっかり。
自分のことしか考えていない。
でもそれが調和して一つの社会を作っている。
交通渋滞、街の汚さ、貧困の差、街の不便さ、、、
でもそれがパリ。
人は文句を言いながら、ただ待つ、待つ、待つ。
(そして時にデモ)
主人公ピエール演 . . . 本文を読む
コートニー・ハント監督、2008年の作品。
もともと短編だった本作を劇場長編へ取り直したものらしい。
アメリカとカナダとの国境を流れるセントローレンス川。
ここは冬になると凍り、場所により車で氷上を走れるほどになる。
レイはクリスマス前に
夫に新居トレーラーハウスの積立金を持ち逃げされ、
途方に暮れていた。
せっかく前金を払ったのに、その苦労も水の泡。
日々の食費もままならない状況である。
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純喫茶磯辺
妻に家を出て行かれ、高校生の娘と二人暮しのダメ中年・磯辺裕次郎が、
父親が亡くなり、ある程度まとまった遺産を相続したことで、
仕事にいかなくなり、
なんとなくそろそろ仕事をしないとまずいだろうと思い出したころ、
ふとしたことで、経験もまったくないのに喫茶店をやってみようと決め、
勢いでほんとに開店してしまう。
迷惑なのは、文句をいいつつも
ちゃんととダメ親父の面倒を見ている一人娘の咲 . . . 本文を読む
「マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」の脚本家チャーリー・カウフマン、初監督作品、2008年制作。
いい評判の劇作家だけど、
実生活は控えめで、
面白みのない主人公ケイデン・コタードを、
フィリップ・シーモア・ホフマンがきっちりと演じ、
作品の持つ不可思議さを見事に体現している。
ストーリー自体は、主人公の妄想も介入し、
さびしさと悲哀が漂うファンタジーといった感じ。
いつも何かでまぎらわ . . . 本文を読む
ショーン・ペン監督、2008年の作品。ベストセラー・ノンフィクション『荒野へ』の映画化。
ショーン・ペンは脚本もしているみたいだけど、
演技派でキャリアも長くて、さすがいい世界観をつくります。
不満をぶつけても効かない。
政治の不正、社会の矛盾を正そうとしても、
結局、独り相撲になってしまう。
いつしか対話は成立せず、若者は荒野に向かう。
甘さもある、若さ故の無謀さもある。
しかし若者は、自 . . . 本文を読む
「遠雷」「サイドカーに犬」の根岸吉太郎監督、2009年の作品。太宰治の男女の愛を描く複数の短編小説をもとに映画化した。駄目な小説家の夫・大谷を浅野忠信、献身的なその妻を松たか子が演じる。
身勝手で、妻子をほったらかしにしつつも、
それでも愛を求める男。
しかも自殺願望アリ。。。
面倒くさい男である。
しかし戦後のころ、家長は奉られるべきもので、
妻・佐知はそれでも夫を支え、
家族3人でいられる . . . 本文を読む
「Laundry ランドリー」の森淳一監督、2009年の作品。伊坂幸太郎の同名ミステリーを実写映画化したもの。
仲のいい兄弟、やさしくて明るくて、芯をしっかりもった自慢の父親。
そんな「最強」の家族がかかえる母親の死にかかわる闇を、ときおりプレイバックしながら描いていく。
役者は十二分にすばらしい役者がそろっている。
遺伝子を勉強する大学院生の兄を加瀬亮、
芸術的な才能を持つ自由な弟を岡田将生 . . . 本文を読む
レバノンのナディーン・ラバキー監督、2007年の作品。彼女は本作で主演もつとめている。
舞台はレバノン、ベイルートのヘアカット、ネイルケア、脱毛などを行っているエステサロン。そこでは、不倫の恋に苦しむ独身女性でサロンのオーナーであるラヤール、結婚を控えるも処女でないのがばれたらと苦しむニスリン、同性であるゴージャスな女性客に惹かれることにとまどうリマが働いている。
中東に位置するレバノンでは . . . 本文を読む
「鬼畜大宴会」の熊切和嘉監督、2008年の作品。
東京で芸能活動をするも鳴かず飛ばずで、マネージャーと結婚し、離婚してで戻ってきた坂東ノブ子(通称ノン子)36歳のささやかなドラマを描く。
実家は神社。そこで一応、手伝いをしていることになっているノン子だが、フラフラでかけては、たばこを吸って、酒を飲んで、何もしない自堕落な生活を送っていた。
演じる坂井真紀のやさぐれ感がいい感じ。
じとっとした熱 . . . 本文を読む
「スゥィート・ヒアアフター」「死ぬまでにしたい10のこと」出演のカナダの実力派女優サラ・ポーリー女史が手がける、2006年、彼女にとって初めての長編監督作品。
話としては、すこしえげつないというか、おそらく日本じゃ「タブー」といえるジャンルかも。
44年つれそったグラントとフィオーナの老夫婦。グラントは教授をしていたころ、いろいろと浮気をした経歴もあるようだが、いまは美しい妻をひとえに愛し、仲む . . . 本文を読む
黒沢清監督、2008年の作品。とある普通の家庭の崩壊を、現代日本の問題をシニカルに浮かび上がらせつつ描く、ヒューマンドラマ。主演は香川照之と小泉今日子。
観ていて、なんとなく最近観たゴダールの「ウィークエンド」を思い出していた。
あの作品でも、戯曲的に人々の暴走と荒廃を描き、文明社会への批判をしていた。
僕は時代背景や生まれた国や言語が違うからピンとこなかったけれど、現代で、かつ日本でそれをやる . . . 本文を読む
「二十才の微熱」「渚のシンドバッド」の橋口亮輔監督、2001年の作品。
彼の作品は前掲作など、公開当時からかなり気にはなっていたけど、
どうも「ゲイ」の生々しい描写とかがあるというのに一歩引いていたところがあると思う。
あれから月日はかなり経ち、僕も大人になって(笑)、
そんなことは全然気にしなくなりました。
で、名画座の縁で彼の作品を初めて見ることになったのです。
印象としては「じっくり描 . . . 本文を読む
イギリスの名匠ケン・ローチ監督、2007年の作品。原題は「IT'S A FREE WORLD...」。自由化が進むなかで、海外からの労働者も増えたロンドン、しかしその労働状況や移民者の問題はひどいものだった──。
脚本はポール・ラヴァーティ、この年のカンヌで最優秀脚本賞を受賞した。
一人が自由であるなら、共同生活の場において、もう一人は不自由である。
誰かが大金持ちになれば、誰かが大損をしている . . . 本文を読む
イギリスの名匠ケン・ローチ監督、2002年の作品。スコットランドの片田舎を舞台に、服役中の母と、シングルマザーである姉と幸せに暮らすことを夢見る15歳の少年を描く。
15歳といえばそれは夢見がちであろう。
しかしながら、主人公のリアムが夢見ることは、普通にあってしかるべき家族の幸せだ。
麻薬の売人の恋人のせいで服役している母。
そんな男に振り回されてだらしない母親を嫌い、家を出てしまった姉のジ . . . 本文を読む