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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

「調べない」というインフル防止策

2009-05-22 05:37:42 | Weblog
川崎にある女子高の生徒2人と目黒区の30代女性が、新型インフルに感染していると判明した。3人とも、最近、アメリカから帰国したばかりで、首都圏では、初めての感染例となる。

これは、アメリカにおいて、感染が急拡大していることを意味する。

潜伏期間や軽症者などを考慮すると、「水際」での取りこぼしが、少なく見ても数倍はいるはずで、ここ最近だけで、10人程度の感染帰国者がいてもおかしくない。

加えて、日本語の出来ない外国人ビジネスマンなど、よほど重症でない限り、申し出ない、あるいは、申し出られない人たちも多いので、相当数の感染者が日本に入っていると見る方が自然である。

つまり、関西だけでなく、首都圏などでも、すでに新型インフルエンザの感染拡大が起こっている可能性がある。

しかし、政府は、東京では、感染は広がっていないと、強調している。二次感染者は発見されていないのだから、「水際」で食い止めていると言いたいらしい。

これは一種の循環論法である。

感染は広がっていない。

つまり、首都圏で感染することなどあり得ない。

ゆえに、相談センターに電話しても、「海外渡航歴なし」「関西に行ったことなし」であれば「新型ではない」と言われる。

それで、近所の病院に行くと、「普通の病院に来た」患者だから「新型検査は不必要」。

よって、首都圏で感染した人はゼロ。

やっぱり感染は広がっていない。

「調べない」という、感染拡大防止策である。効果は絶大だ(笑)。

すでに首都圏でも蔓延していれば、渡航歴がなくても、関西に行ってなくても、身近にインフル患者がいなくても、感染の危険はどこにでもある。

従って、保健所が何と言おうが、簡易検査でA型陽性であれば、PCRに回すべきで、そうしなければ、東京での実態把握は不可能だ。

首都圏の発熱相談センターは、感染者の発見というより、発見を未然に防ぐ機関になっている。


麻生内閣と自民党の支持率は、民主党の鳩山党首誕生で、苦戦している。

この上、東京で新型インフルが流行して、「蔓延期」の対策を発動せざるを得なくなると、経済活動が大打撃を受け、麻生政権には致命的となるだろう。

仰々しい機内検疫を始めた頃、新型インフルは、麻生政権にとって対岸の火事だった。

ゴールデンウィーク中だけ、派手なパフォーマンスをして、それで騒ぎは終わりになるだろうと、漠然と考えていたのかもしれない。北朝鮮のミサイル騒動と同じように。

しかし、日本で本格的な流行が始まった今、新型インフルは、政権浮揚の足掛かりどころか、命取りになりかねない、厄介者になってしまった。

そこで、弱毒性を突然強調し始めたり、保健所を通して検査対象を絞り込んだり、医師が勝手に検査しないよう雰囲気作りしている。

人気のない政権というのは、目先の支持率アップばかりを追うので、国民にとって、あまりプラスにならない存在のようだ。


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感染ルート不明が示すもの

2009-05-20 13:59:16 | Weblog
新型インフルの感染者数は、昨日も30人以上増えて、200人に迫る勢いである。

兵庫と大阪での流行が、近畿他県そして関東に広がれば、日本の国別感染者数が、現在500人のカナダを抜いて、世界第3位になる事態も絵空事ではなくなってきた。

日本における、今回の感染者急増は、軽症者も含めて、広範かつ迅速に感染の有無をチェック出来る、充実した検査体制の結果、という意見がある。

これは、正しい指摘だと思う。

しかし、一番の問題は、感染者の数ではない。

今になっても、感染ルートが分からないという点である。

アメリカやカナダなど、メキシコと地続きの国を除けば、日本以外の国では、多くの患者について、その感染ルートが判明している。

どこの国へ渡航して一次感染し、帰国後、国内のどこで二次感染が起こり、云々といった具合にである。

しかし、兵庫と大阪での大規模感染については、感染源が一つかどうかも含めて、よく分からない。

なぜ、日本では、分からないのだろう?

現在までの感染者分布を考えると、ゴールデンウィーク中に、最初の感染者が海外から日本に入って、神戸か大阪北部で二次感染を起こした、とするのが自然な見方だ。

そして、その人は、保健所の発熱相談センターに電話することなく、検査を受けることもなく、病気が治ってしまったと思われる。

二次感染は、その海外渡航者もしくは旅行者の周辺で起こるのだから、誰かが、この病気は、新型インフルではないかと考えた可能性は高い。

実際、他の国で感染者が発見されるのは、大抵、この段階である。

もちろん、発見するのは、診察に当たる地元の医師である。渡航歴や症状だけでなく、過去の病歴、友人や家族の症状、地域でのインフル流行状況など、判断材料を豊富に持っているからだ。

だが、日本では、保健所も、地域の病院も、誰も発見出来なかった。

二次感染者が相談センターへ電話しても、「渡航歴なし」の一点で、除外された可能性が高い。そもそも、数分間の電話質問で、判断を下すこと自体に、無理がある。

また、地元の医師は、感染疑い者を診察しないし、診察する場合は、最初から季節性インフルエンザと決めつけている。新型は管轄外という意識だ。

つまり、制度そのものが、初期感染者の発見を妨げている。

こうなると、本人や家族の強い訴えが頼みの綱となる。

しかし、折しも、カナダへ短期留学した高校生と引率の教師が、成田の機内検疫で陽性とされ、50人近い同乗者が、症状も出てないのに、一週間ホテルに閉じこめられて、毎日毎日、抗ウイルス薬を飲まされていた。

連日、気分の滅入る、このニュースが流される中、最初の感染者も、渡航歴のない二次感染者も、そして周囲の人々も、無意識のうちに感染への疑念を排除していき、関西での大規模感染の出発点は、解けない謎になったのかもしれない。

昨日、舛添厚労相は、機内検疫の段階的縮小を発表した。

しかし、アメリカやカナダでは、依然として、インフルAの流行が続いている。

強制的な検温や問診がなくなる以上、体調を崩している乗客には、積極的に名乗り出てもらうことが、有効な「水際」対策になる。

だが、もし陽性となった場合、どういう扱いを受けるのか、世界の旅行者はよく知っている。成田のホテルに缶詰にされた人の中には、アメリカ人も含まれていた。

従って、入国者の協力は期待出来ない。また、発熱した人も、重症でなければ、センターに電話したがらない。そして、地元の病院は患者を診察しない。

このままでは、かりに関西での流行が落ち着いても、今後も、ルート不明の大規模感染が、各地で発生する可能性は、高いと言わざるを得ない。

全便の機内検疫、感染者の強制入院、濃厚接触者の強制隔離、発熱外来への一本化、一般病院からの感染者排除。

政府の非科学的な過剰対応が、新型インフルへの恐怖感を煽り立て、感染者を排除する空気を作り出し、却って、感染拡大の初期抑制を難しくしている。

こういった非現実的な施策の背後に、病人を管理すべき対象としか見ない、高圧的な医療行政思想が見え隠れしている。

ハンセン氏病患者への無意味な隔離政策と同じ発想である。

日本が世界最大のインフルA流行国になりつつあるのは、決して偶然ではなく、医療行政が脈々と受け継いできた、この時代遅れの思想を、今の厚労省が、捨て去っていないからではないか。

だとすれば、それは、新型インフル以上に、克服するべき問題である。

WHOが今注視しているのは、感染者数以上に、日本政府の能力かもしれない。

SARSの流行で判明したように、前近代的医療行政システムがはびこる、政治的後進国での伝染病大規模発生は、そのまま人類への脅威、すなわち、フェーズ6となるからだ。


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全域休校はむしろ危険

2009-05-19 15:30:47 | Weblog
新型インフルエンザの集団発生を受けて、兵庫県と大阪府は、すべての県立高校と府立高校を一週間休校にした。

さらに、公立・私立にも休校要請を行い、高校だけでなく、中学校や小学校にまで、この措置を広げようとしている。

しかし、発症者が出ている学校だけでなく、一人の感染者もいない学校まで休校にするやり方は、感染拡大を抑え込むどころか、かえって助長する危険がある。

休みとなった高校生が、一週間、家族以外の誰とも会わず、自宅にこもっているはずがない。

友人達と連絡を取り合って、家に呼んだり、あるいは、外で待ち合わせて、会おうとするだろう。

しかも、全域の高校が休みなので、中学時代のクラスメートで、別の高校に通っている友達とも、会うことが可能である。

こういったプライベートな接触については、学校側は、把握も、コントロールも出来ない。

しかも、登校するのとは違って、少々体調が悪くても、熱があっても、彼らは出かけて行くだろう。

実際、カラオケボックスは高校生で溢れかえり、デートスポットは、若いカップルで賑わっているらしい。

第二の春休みである(笑)。

そして、高校生達が学校外を動き回っている間に、新型インフルは、兵庫県と大阪の全域に広がる可能性がある。

全域休校措置が、全域にウイルスをばらまく結果となりかねない。

もし、通常通り学校を続けていれば、具合の悪い生徒を早退させたり、医者に行くよう勧めたりと、先生が生徒の体調を把握・管理が出来る。

また、繁華街に出かける機会も少なくなるし、他校との交流行事を制限すれば、学校間でウイルスをやり取りする危険性はほとんどなくなる。

つまり、感染者がまだ出ていないのであれば、休校にしないという措置の方が、有効である。

メキシコで全域休校が成功したのは、学校だけではなく、飲食店や売店などの営業を制限し、すべての市民に対して外出禁止措置を取ったからである。

多くの都市機能を停止させなければ、全域休校は効果がないし、むしろ危険だ。

全便機内検疫による「水際」幻想、発熱外来以外での受診拒否、生徒の行動管理を放棄する全域休校。

患者が一人も居ないときは、警戒心を煽り立て、感染者が100人を越えると、「弱毒、弱毒」の連呼。

連続で愚かな対策を打ち出す政府には、もう、うんざりである。

麻生内閣や厚生労働省には、どうも、新型インフルよりずっと深刻な病に罹っている人が、数多くいるようだ。

感染拡大を防ぐには、学校ではなく、厚労省を閉鎖する方が、話が早いのではないだろうか。

国民として、残念な話である(笑)。




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「水際」が幻想を生んだ

2009-05-17 02:28:13 | Weblog
大阪と神戸で、それぞれ十人近い高校生について、インフルエンザAへの感染が確認もしくは濃厚となった。

国別確認感染者数が、メキシコ、アメリカ、カナダ、スペイン、イギリス、パナマについで、世界第7位にまで上がるのはほぼ確実だが、彼らと同じ高校で、風邪の症状を訴えている生徒がまだ相当数いるようで、数十人、場合によっては、百人近くまで増える可能性がある。

新型インフルの大規模な集団感染である。

WHOは、スペイン、イギリスと並んで、日本を、感染者拡大の最前線と見なすだろう。

国内で感染者が出るのはやむを得ないが、ここまでの集団感染を許したのは、政府の対策に大きな誤りがあったからである。

WHOや世界の専門家が、空港での「水際」対策では感染者を発見出来ないと、再三警告していたにも関わらず、厚労省は、全便機内検疫にのめり込んでいった。

その結果、大部分の感染者は「水際」で食い止められている、感染者は海外渡航者のみ、といった幻想が社会に蔓延して、国内での人・人感染者の発見が遅れてしまった。

今回の感染者についても、事前に発熱センターに相談した際、海外渡航歴がないので新型インフルではないと言われたとの記事もある。

また、感染者や周りの人々も、海外に行ってないから、日本にはまだ入ってきていないから、と新型インフルを疑う気持ちは薄かっただろう。

もし、「水際」では感染者流入は防げない、日本にすでに入っているかもしれない、と政府が国民に警告し続けていれば、もっと早期に発見出来た可能性が高い。

そういう心づもりでいれば、学校でインフルエンザ症状を訴える生徒が増えた場合、海外渡航歴があろうがなかろうが、すぐにインフルAの検査を実施するからだ。

厚労省は、うがいだ、マスクだ、時差通勤だと、この期に及んでも、まだ予防策ばかりを強調しているが、国民に、今一番呼びかけなければならないのは、インフルエンザの症状が出たら、学校や会社に行かないで、すぐ病院で診察を受けるよう、お願いすることだ。

そして、企業などに対して、休みやすい環境を作って、無理な出社をさせないように、協力を求めることである。

インフルエンザは、発症した直後に、他人に感染させる危険が大きい。症状が出始めているのに無理して登校し、午前中は授業を受けて、午後は保健室などということは、絶対に避けなければならない。

うがいや手洗いの励行など、政府による今の対応策は、健康な非感染者に力点が置かれ過ぎていて、発症者が大量に出た場合どうするのかが、見えてこない。

このままの体制で、インフルAが本格的に流行し始めたら、保健所など相談窓口の電話は滅多につながらなくなり、発熱外来は軽症患者であふれかえって重症患者が行き場を失い、検査機関は検体の山に埋もれて身動き出来なくなるだろう。

結局、発症者は、学校や会社をすぐに休むこと、そのうちの大部分である軽症者は、普通の病院で薬を貰って、自宅で治すこと、そして完全に治るまでは、登校や出社を控えること、その三点を徹底するしかない。

季節性インフルの場合と基本的に同じであるが、感染拡大を防ぐ、もっとも有効な策だ。

CMなどを通して、この三点を盛んに呼びかける方が、全便の機内検疫を続けるよりは、はるかに意味のある税金の使い方である。

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ナイアガラの滝かもしれない

2009-05-13 00:09:25 | Weblog
オンタリオ湖に臨む小さな街、カナダのオークビル。そこでホームステイをしていた大阪の高校生一行は、4月28-30日に、オタワへ小旅行をする。

5月5日には、トロントにあるブルージェイズの本拠地ロジャース・センターでメジャーリーグの試合を観戦。その日の夜に生徒一人が発熱を訴える。6日に、現地の病院で診察を受けるが、彼と仲の良い二人の生徒、さらに、病院へ付き添った教師一人も発熱。そして、7-8日に全員が帰国。

この4人が、日本初の新型インフル感染者となった。

感染ルートについては、トロントでの野球観戦時ではないかとの推測がある。また、オタワへの2泊3日の旅行中との見方も出ている。

確かに、トロントは、人種構成が多様なうえに、旅行者の行き来も活発で、感染者もカナダでは多い都市である。ロジャース・センターが感染場所になったとしても、不思議ではない。

しかし、午後に球場で感染して、その日夜に発熱というのは、発症が早すぎる。

また、滞在先のオークビルは、トロントの南西20kmに位置するベッドタウンである。この街の人々は、近郊大都市のトロントに、日常的に行くはずである。

もちろん、交流相手の高校の生徒たちも、ロジャース・センターで野球を観たり、トロント市内で食事や買い物をするだろう。

もし、この高校生のように、一度行っただけで感染するのなら、オークビルも含めて、トロント周辺の高校では、感染者が続出して、閉鎖される学校があってもおかしくないが、そういう話は、今になっても聞こえてこない。

一方、オタワへの小旅行で感染したのなら、潜伏期間は5日から7日。

あり得ない長さではないが、通常は、1日から4日と言われているので、長すぎる印象は否めない。

しかも、少なくとも、6日に発症した教員は、5日に発症した生徒から感染した可能性が高く、その潜伏期間は、1日である。

もし、トロントでもオタワでもなければ、彼は、どこで感染したのだろう?

オークビルの高校生があまり行かないところで、かつ、多くのひとが行き交い、感染の可能性が高い場所。そして、潜伏期間が妥当な範囲に入るところ。

一つ該当する場所がある。

野球観戦の前日、5月4日に訪れた、ナイアガラの滝である。

アメリカとカナダの国境に位置する、この一大観光スポットには、両国から大勢の観光客がやって来るが、地元の高校生が頻繁に行く場所ではなさそうだ。

東京の女子高生が、毎週のように渋谷へ遊びに行っても、東京タワーには、滅多に上らないのと同じである(笑)。

ナイアガラの滝には、多くのアトラクションがあり、観光船、滝に降りるエレベーター、展望塔、レストランやゲームコーナー、おみやげ物店など、狭い空間に多人数がひしめき合う場所が多い。

そして何より、国境は簡単に行き来ができるので、カナダとアメリカの旅行者が混ざり合う。

つまり、カナダの中のアメリカみたいなもので、そこでの感染確率は、感染者数が安定しているカナダだけではなく、急増しているアメリカの影響も受けてしまう。

アメリカでの感染者割合が数千分の一くらいまで上昇しているなら、一日の観光客数を考えると、アメリカ人観光客の中に、十人くらいのキャリアが居てもおかしくはない。そして、国境を越えて、カナダ側に集中している観光施設内で、かなり長時間、過ごしていた可能性も否定出来ない。

ナイアガラの滝は、高校生の全行程中、感染する確率が最も高い場所かもしれない。

さらに、ここで高校生が感染したならば、潜伏期間は1日となり、教師と同じという意味でも妥当な長さである。

ただ、滝を訪れたアメリカ人観光客が感染源だった場合、後日、アメリカで患者として感染確認されても、カナダ保健当局による感染ルート追跡は難しくなる。

感染ルートを特定出来ず、漠然と、カナダは危ないという雰囲気が広がるのだとしたら、とても残念なことだ。


ところで、いま、海外への研修旅行や修学旅行を延期・中止する学校が増えているらしい。

ナイアガラの滝に限らず、感染者が急増してる地域の大都市や、その地域内にある巨大観光地へ行くのは、警戒した方がいい。

しかし、そういった場所にさえ注意を払えば、旅行そのものを取り止める必要はないと思う。

随分前から準備してきた旅行である。そして、なにより、高校生活は一度しかない。延期しても、このインフルエンザが、秋・冬に大流行したら、それこそ行けなくなって、若いときの貴重な出会いや経験を、逃してしまう。

「安心・安全」や「社会への迷惑」にこだわり過ぎて、大事なものまで、何もかも放棄してしまうのは、合理的ではないし、愚かしいことである。

日本全体が、防護服とマスクに身を固めて、ゴーグル越しに世界を眺めるのは、もう少し状況を見てからでも遅くはないだろう。


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新型インフルより恐いのは

2009-05-12 03:21:22 | Weblog
新型インフルの初めての感染患者は、学校の研修旅行で、カナダへ行った高校生だった。

このニュースを聞いたとき、正直、驚いた。

WHOの「Situation Update」というサイトによると、カナダでは、ここのところ、4日で約100人のペースで、新たな感染者が報告されている。

先進国では、タミフルを使えるから、大抵の場合、4日もあれば病気は治る。従って、100人程度が、現在の確認患者数となる。

実際の感染者が、この十倍だとすれば、1000人。カナダの人口は3千万人なので、3万人に1人の割合で、新型インフルが流行している計算である。

この研修旅行では、カナダの家庭にホームステイしたり、交流相手の高校で授業を受けたりしたそうで、現地の人と接触する機会は、通常の旅行よりは、はるかに多かったのだろう。

しかし、それにしても、3万分の1の確率に当たったのは、運が悪かったという他ない。

事実、日本での感染確認を聞いて、相手高校の父兄らは、驚いているらしい。おそらく、彼らの周りで、新型インフルに感染したという話は、ほとんどなかったのだと思う。

また、世界的に見ても、カナダからの帰国者が感染というのは、あまり聞いたことがない。どこの国でも、大抵は、メキシコからの帰国者であり、アメリカからの人が少数という感じだと思う。

ゴールデンウィーク中の短期海外旅行者のように、現地の人との接触が希薄であれば、感染確率は3万分の1より、さらに低くなる。実際、連休中にアメリカ・カナダに行った旅行者で、感染が確認された人は、一人もいない。これは、前回のブログで計算した通りだった。

従って、日本人旅行者全員を、症状も出ていないのに、機内検疫するのは、これまでも、そして、今後も過剰対応である。今回の発見もそうだったが、機内で高熱を出している人がいる場合だけで十分だ。

実は、感染者がいる可能性が高いのは、アメリカ人の入国者である。

アメリカでの確認感染者数は、どんどん上昇していて、最近では、1600人/4日程度になっている。感染者がこの十倍とすれば、1万6千人で、アメリカの人口を考えると、2万人に1人の割合である。

日本への入国者は、月に8万人程度だそうなので、単純計算で、4人の感染者が含まれていてもおかしくない。

アメリカでの感染拡大が終息しなければ、感染者の入国は、時間の問題である。これは、運悪く感染した大阪の高校生の場合と違って、統計的に自然な現象である。

だが、考えてみれば、毎日毎日、大量の出入国者がある、このグローバル化した日本で、水際作戦にいくら税金をつぎ込んでも、新型インフルの侵入を食い止めるのは、まず不可能である。

いずれは、国内で感染者が出るのは、避けようがない。

むしろ、感染者が出たときに、ヒステリックにならないことが、一番重要なことだ。

感染者を出した高校の校長は、記者に取り囲まれて、「なぜ現地でマスクをさせなかった」などと、つまらない質問をぶつけられて、集中砲火を浴びている。

飛行機に同乗した乗客は、全く症状が出ていないのに、成田のホテルに何日も軟禁されて、周辺を警官がパトロールしている。

感染者や周りの接触者を、まるで悪いことをした人物のように扱っていると、いざ本格的な流行が始まったとき、熱のある人が、病院へ行くのをためらうようになって、感染拡大を助長するおそれがある。

さらに、医療機関の診察拒否が増えて、患者が右往左往している間に、一層感染者を増やす危険もある。

こうなると、社会的パニック状態が出現するかもしれない。新型インフルの流行より、よっぽど恐ろしい事態である。

新型インフルであれ、何であれ、患者は患者であって、犯罪者ではない。

そのことだけは、肝に銘じておきたいものである。


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感染リスクを予想してみた

2009-05-05 17:39:30 | Weblog
前のブログで、ゴールデンウィーク中の日本人旅行者が、メキシコやアメリカ、カナダで新型インフルに感染する確率を考えた。

今回は、日本に入国するメキシコ人やアメリカ人、カナダ人の中に、感染者が存在する確率を計算してみたい。

アメリカでは、250人ほどの感染者が確認されていて、これは、人口比で見ると100万分の1。訪日するアメリカ人は、月に8万人ほどらしいので、入国感染者数の期待値は、0.08人/月ということになる。

また、カナダでは、国内感染率が35万分の1くらいで、訪日人数は月に1万5千人ほど。従って、期待値は、0.04人/月となる。

この数字を見る限り、現在のような感染状況では、アメリカやカナダからの訪日者の中に、感染者がいる可能性はとても低いと言える。

一方、メキシコでは、感染者数がはっきりしない。ただ、感染による死者は、現時点で確認されているのが26人、最大でも100人程度と発表されている。

そこで、この新型インフルの致死率を、季節性インフルと大差ない0.1%と仮定して、死者数を30人から50人とおくと、総感染者数は、3万人から5万人と推定される。

メキシコの人口は1億人なので、感染者の人口比は、3千3百分の1から2千分の1となる。

メキシコへのアメリカ人旅行者の感染確率は、前回のブログで試算したように、2万分の1程度で、この数千分の1という数字は、国内感染率として妥当なものに思える。

そして、訪日メキシコ人は月3千人くらいだそうなので、結局、メキシコ人訪日者中の感染者数期待値は0.9-1.5人/月となる。

これらのデータは、すべて4月のインフル最盛期のものである。

つまり、先月、訪日したメキシコ人の中に、感染者が1人、いるかいないかという程度である。そして、幸いなことに、日本では、来日したメキシコ人の方も含めて、一人の感染者も確認されていない。

5月に入って、メキシコでの感染増加は明らかに鈍ってきている。おそらく、メキシコ国内の感染確率も減少し始めているだろう。

もし、今月の新たな感染者数が、3千人を下回れば、期待値は0.1人/月を切ってくるので、日本から見れば、感染者発生リスクはかなり低くなったと言えるだろう。

前回ブログの結果と併せて、予測リスクをまとめると

@GW中のアメリカ本土への日本人旅行者
感染者数の期待値 0.0032人

@GW中のカナダへの日本人旅行者
感染者数の期待値 0.0014人

@GW中のメキシコへの日本人旅行者 (1000人として)
感染者数の期待値 0.01人

@アメリカ人訪日者(月8万人として)
感染者数の期待値 0.08人/月

@カナダ人訪日者(月1万5千人として)
感染者数の期待値 0.04人/月
アメリカ・カナダ国内での感染者増加ペースは注視する必要あり

@メキシコ人訪日者(月3千人として)
感染者数の期待値 0.9-1.5人/4月
5月の新感染者が3千人を下回れば、期待値は0.1人/月より低くなる

もちろん、これらは幾つかの仮定に基づいた大まかな予測にすぎない。しかし、思ったほどには、世界的流行状態(パンデミック)というわけではなく、海外に行っても、さほどには感染しないという結論の方向性は、間違っていないと思う。

この新型インフルが、弱毒性であることと併せて考えれば、全便での機内検疫や、問診票による追跡調査、さらには、感染疑い者に公共交通機関を使わせない、などは明らかに行政の過剰対応である。

結局、新型ウイルスの感染そのもの以上に、麻生内閣や厚生労働省の柔軟さを欠いた対応の方が、国民にとってより脅威であり、ハイリスクかもしれない。


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機内検疫は過剰対応

2009-05-05 08:52:53 | Weblog
「インフルエンザA(H1N1)」の確認された感染者は、アメリカで245人になり、全世界では19ヶ国、千人以上に達した。

折しも、日本では、ゴールデンウィークが後半に入り、帰国ラッシュを迎えつつある。

新型インフルを「水際」で食い止めるべく、成田などの主要空港では、メキシコ・アメリカ本土・カナダからの到着便に、検疫官が乗り込み、乗客一人一人に対して、検温・問診などの機内検疫を実施している。

だが、一日4万人以上の帰国者である。

検疫官の数が足りず、臨時増員したものの、それでも、働きづめの状態で、乗客は1時間近く機内に留め置かれるらしい。

しかし、この機内検疫、現時点での各国感染状況を考えると、費用対効果を無視した、超過剰な対応と言わざるを得ない。

とくにアメリカ本土・カナダからの便については、間違いなく、税金の無駄遣いだ。

というのも、ほとんど空振りに終わるからである。

アメリカの感染者数は、現在のところ、数百人。人口比で見ると、100万人に1人の割合だ。5万人収容の野球スタジアムでも、感染者には、まず出会わない。

そして、一週間程度短期滞在の日本人旅行者が、これらの感染者に接触して、しかも、感染する確率は、さらに小さくなる。

その確率を1000万分の1とすれば、ゴールデンウィークのアメリカ本土への旅行者3万2千人の中で、運悪く、感染して帰ってくる人の数は0.0032人。ほぼゼロと言っていい。

また、カナダでは感染者の人口比は35万分の1程度。旅行者の感染確率を、350万分の1とすれば、日本人旅行者5000人の中での感染者数期待値は0.0014人。低すぎて話にならない。

つまり、検疫官が、アメリカ本土あるいはカナダからの便内で、感染者に遭遇する可能性は、限りなくゼロに近い。

もちろん、旅行者の滞在地域や行動パターンによっては、感染者が現れないとは、断言出来ない。しかし、これほど低確率で、まず存在しない感染者を探すために、膨大な税金と、人的労力を投入して、全便の機内検疫を続けるのは、どう考えても馬鹿げている。

一方、メキシコからの便は、どうだろう?

その妥当性を見極めるには、アメリカ人旅行者のデータが参考になる。

米国からメキシコへは、月平均200万人ほどが旅行するそうだが、滞在中に感染したアメリカ人の数は100人ほど。

つまり、旅行者の感染確率は、2万分の1程度である。

ただ、現在のメキシコでは、レストランなど公共施設は、軒並み閉鎖状態にある。旅行者の感染確率は、これよりさらに低いと見積もって良いはずだ。

そこで、感染確率を10万分の1とすると、この連休中、メキシコへの日本人旅行者は1000人もいないだろうから、感染人数の期待値は高々0.01人である。

アメリカの場合よりは、高確率であるが、感染者はまず見つからないという点では同じ。メキシコからの便についても、機内検疫を行う必要性は感じない。

数十万の乗客に大きな不便を掛け、多額の税金を使い、多くの検疫官を長時間酷使して、発見出来る感染者の期待人数が、メキシコ便では0.01人、アメリカ便に至っては0.0032人。

そして、万一、感染者が入国したとしても、せいぜい数人。決して、数十人、数百人という数ではなく、国内での発症後にすぐ手を打てば、感染拡大は十分に防げる範囲だ。

しかも、そのウイルスは弱毒性で、発症しても軽症で済む場合がほとんどである。

症状が出ている乗客が居なくても、全便、とにかく強制的に機内検疫というのは、どう考えても、やり過ぎである。

おそらく強毒性の新型鳥インフルエンザを想定した行動計画の一環なのだろうが、我々が直面している状況は、それとは異なるものだ。

このまま、意味の薄い全便機内検疫を続けて、限られた予算と人的資源を、だらだらと浪費するのは、日本政府に、柔軟な危機管理能力が欠けていることを、世界に見せつけているようなものである。

どうやら、麻生首相や舛添大臣、そして厚労相の官僚は、「実効性を科学的に検討する」という視点を、ほとんど持ってないようだ。


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感染力より重症度

2009-05-01 16:29:45 | Weblog
新型インフルエンザの感染者が、米国で、100人を突破した。世界的な感染拡大の一方で、メキシコを除く地域では、ほとんどが軽症患者であり、過剰な反応を戒める声も多い。

日本では、成田空港に到着したロサンゼルス発の航空機内で、乗客を何時間も待機させて検疫したり、カナダから帰国した高校生を、「感染疑い」で、事実上の隔離状態に置いている。

国内へのウイルス侵入と感染拡大を、何としても阻止しようという決意の表れである。

しかし、これらの措置が、「物々しすぎる」という印象を与えるのは、政府が想定していた「新型ウイルス」が、極めて致死率の高い鳥インフルエンザであり、「感染拡大=社会的パニック」という前提に基づいて、行動計画が作成されているからである。

実際には、今回発生した「H1N1 A」は、「感染=命の危険」というほどではない。

では、この新型インフルエンザは、どのくらいの毒性を持っているのだろうか?

この判定こそが、今後の対策の鍵を握っている。

5月1日付朝日新聞朝刊によると、米国では、現在109人の感染者が確認されていて、その内、1人が亡くなっている。ただ、この死亡例は、メキシコで感染した幼児なので、今のところは、108人感染で死亡ゼロと考えていい。

もし、致死率が1%であれば、この100人程度の感染者と、その背後の、病院に行っていない軽症患者を考えれば、そろそろ死亡例が出てもおかしくない。実際、重症の患者が出ているという情報も、未確認だが、あるようだ。

季節性インフルエンザの致死率は、0.1%以下らしいので、もし数日内に、アメリカで死亡例が出たとすれば、かなり危険なインフルエンザであるという可能性が出てくる。

一方、メキシコでは、感染が確定した死者は12人で、疑いを持たれている死亡例は、200人に迫っている。

しかし、かりに感染による死者が200人であっても、軽症者も含めた、メキシコでの全感染者数が20万人であれば、致死率0.1%で、季節性インフルエンザと大差ない。

メキシコの人口は、日本と同じくらいなので、20万人感染という数字は、決して多いということはない。実際、日本では、季節性インフルに1000万人が感染して、1万人が死亡すると言われている。

もちろん、今から、メキシコでの全感染者数を把握するのは、不可能なので、米国内の感染者数と重症例・死亡例の割合が、重要になってくる。

もし、米国での感染者が500人を越えて、それでも重症例・死亡例が出ないようであれば、比較的軽症で済むウイルスと見ていいかもしれない。

その場合は、日本での対策も、大規模イベントの中止といった、強い措置は必要ないだろう。

だが、重症例・死亡例が、今後頻繁に出てくるようであれば、考えなければならない。

いずれにしても、現時点では、この新型ウイルスが、どの程度危険なのか分からない。

派手な記者会見を打って、「水際」や「隔離」に血眼になるのも結構だが、政府は、海外での症例推移をしっかりと分析するべきだ。それは、地味ではあるが、本当に必要な努力である。

それにしても、舛添厚労相は、夜は寝た方がいいと思うな(笑)。

このウイルスとの闘いは、始まったばかりだ。十分な睡眠を取って、健全な判断力を維持するのが、一番大事である。

一人の患者も確認されていないのに、寝不足でカリカリして、横浜市長と喧嘩しているようでは、先が思いやられる。


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パンデミックとは限らない

2009-04-28 18:24:46 | Weblog
メキシコで発生した豚インフルに対して、WHOは警戒レベルを、Phase4に引き上げた。人から人への感染が増加傾向にあるとの判断だ。

しかし、今回のインフルエンザには、まだ未知の部分が多い。

メキシコ国内では、感染を疑われている死者が100人以上、感染者数は1600人を越えていて、発症者には、重い肺炎が見られる。ただ、検査によって豚インフルの感染が確認されている例はまだ少なく、現在調査中のようだ。

一方、アメリカなど、海外に広がった感染者は、検査で確認されているが、いずれも比較的軽症で済んでいる。

海外感染者の総数は、まだ五十人にも満たないが、メキシコ国内での感染者と海外感染者の間に、症状の重篤性に関して、大きな隔たりがあるように見えることが、状況把握を難しくしている。

あくまで一つの推測であるが、もともと弱毒性の豚インフルに、メキシコ人の多くが近年経験したことのない変異が一部分入っていて、そのためメキシコで大流行している可能性がある。

私は、数年前に、ひどいインフルエンザに罹ったことがある。まるまる三日間、39度以上の熱が続いて、バファリンを飲んでも、数時間熱が下がるだけで、すぐに上がってしまう。

しんどいとか、だるいとかを通り越して、「死ぬんじゃないか」と本気で思ったほどだった。

あれほど風邪で苦しんだのは、大人になってからは、初めての経験だった。

勿論、このとき日本で、強毒性の新型インフルエンザが流行したという話は、全くない。恐らく、ウイルスの型から言うと、ありふれたタイプだったと思う。

しかし、大まかな分類で見ると、ありふれたウイルスでも、遺伝子の変異が自分にとって未知、あるいは、何十年も前に出会ったものであれば、それに対する免疫は非常に弱いわけで、特定の人にとって、毒性の強い「新型」インフルになってしまう。

もう一つ例を挙げると、これも数年前、若者の間に「はしか」が流行して、問題になったことがあった。

はしかウイルスが少なくなって、幼児期にはしかに罹らない子供が増え、さらに、ワクチンの接種も受けていない若者には、このありふれた伝染病も、「新型」と同じ意味を持ってしまう。

今回の豚インフル流行に、メキシコ人の免疫状況が関わっている可能性は、検討すべき有力な説の一つである。

とくに、メキシコでの発症者が、二十代から四十代という一定の年齢層に偏っているのは、この説と矛盾しない情報である。

いずれにしても、強毒性新型インフルのパンデミック(世界的大流行)一歩手前と捉えるには、まだ情報が少なすぎる。WHOも、世界に注意を促しつつ、この病気の本質を見極めることに、全力を挙げているようだ。

つい先日、メキシコを訪問したオバマ大統領曰く、

「警戒しなければならないが、必要以上に恐れることはない」

同感である。

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