Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 162

2021-05-26 14:04:13 | 日記
 しかし敢えて彼女は内心の怒りを言葉に出すと言う事をしなかった。あくまで理性的にと思う彼女は、ひたすら自分の気持ちを沈めに掛かった。

 彼女は唇をきっと結んだ。そうやって自分の気持ちを引き締めると、彼女は物事に集中する様にキリリとした端正な顔付きになった。自分は分を弁えている、だからこうやって口を閉ざしているのだ。彼女は口を閉ざす事で舅にその事を無言で示していたが、それでもと、自分は起きている事の全てはちゃんと把握しているのだと、その事は周囲に示して置こうと思うのだった。彼女は眉間に皺だけを寄せると、舅と店主、彼等の顔に彼女の不愉快に思う面を確りと合わせて置くのだった。

 「嫁姑、あんた達は良く似ているなぁ。」

そんな彼女の顔を認めた舅が徐に言葉を発した。

「事に対してする事が同じだよ、あんた達2人は。」

彼はそれから、その表情をやや硬らせると、次には厳しい表情で嫁を見返した。「似た物同士は気が合わない。」そう口にすると、彼はこの話はまた何、とその後の言葉を濁した。

 今はそれ処では無いのでね。あんたもそうだろう。舅は言うと、自分の懐を探って小振の帳面を取り出した。「これは私の用向きに、つい家から持ち出して来た物だが。」彼は言った。「あんたの方の用向きに使うといいよ。」そう言って彼は、目の前にいる彼の息子の嫁に小切手帳を手渡した。

「見れば分かるが、それはあれの名義になっている。」

彼女が舅に言われた通りその紙綴りの表面を見ると、そこには彼女の夫の名が記されていた。

「小切手帳だよ。使い方は分かるだろう。」

私が貯めた物だが、舅は続けた。家の跡取り用に、もしもの時の為に避けて有った分だよ。元々はあの子の為の物だったのだよと言うと彼は、「今回つい持ち出して来てしまった。」「今の内にお前さんの方に渡しておくよ。」と言葉少なになった。

 嫁はじいっと手の中にある帳面の表を見詰めていた。そんな彼女に舅は細々と言った。

「今から家の裏手に回れば必要になるんじゃ無いのかい。」

いいんだよ使ってしまっても。あの子の物はお前さんの物だ。良い様にしなさい。舅はそう言うと嫁の顔から彼の視線を外した。店内は静まり返るとコトリとした物音もしなかった。

 「手切金でさぁ。」

店内の重い沈黙を破る様に食堂の店主が声を出した。「お暇が出たんでさぁ、奥さん。」奥さんにも皆にもね、と、最後に小さく彼は彼の客の母娘連れに言った。

うの華3 161

2021-05-26 13:13:12 | 日記
 彼女は実は義弟の事で悩んでいたのだ。先程彼女は夫の実家の裏で義弟の激昂する声を聞いた。その時、彼女はそんな興奮状態の義弟と、自分や自分の子供達が顔を合わせる事を酷く厭ったのだった。世の中に、尋常で無い人に相対するのを憂く思わない人はい無いだろう。ましてやその人物が自分の身内であり、血の繋がる人間であれば尚更にその憂鬱度は増すという物だ。

『義理の繋がりの自分より、』

と彼女はここで、義弟と血の繋がりのある彼女の娘達の事を考えた。彼女達が興奮状態の叔父と顔を合わせたならば、きっと子等は嫌な思いをする事だろう。それは陰鬱な感情だ。そんな子供達の心中の負担を想像し、彼女達の母で有る彼女は咄嗟に身を翻したのだ。

 横道に出て、半ばおろおろと茫然自失の体で子等の先を歩く彼女だったが、次に如何と考えると、彼女は自分は子の母親だと思い立った。そこで透かさず彼女は子へと振り返った。

『食堂へ行こう、一先ずそこで落ち着こう。』

彼女はコーヒーを口実にする事にした。そうして彼女は彼女共々、自分の娘達と共にここまで引き返して来たのだ。謂わば母娘は食堂へと避難して来たと言えた。

 しかし『でも、』、と、食堂に落ち着いた彼女は考えた。三郎の家の子供と直接話をした件もある。彼女はその件の事を考えると、自分達はあの家に行き、そこで四郎と顔を合わせる事が必定になるだろう、と感じた。

『そう、それは避けられない。』

ここで自分達が少し間を置いている間に、彼、義弟四郎の気分が少しは収まっていれば善いのだが…。『しかしそうはならず、彼の怒りが益々募っていたら如何しよう。』彼女はこうも煩悶した。そうこう思う内に、食堂のテーブルでのコーヒーを目の前に、彼女は段々と意気消沈し元気が無くなっていたのだった。にっちもさっちも、と、思案に迷ったその瞬間に、こうも間合い良く舅は現れたのだ。

 『もう、』と嫁は思った。人の困った様子を話しの種にして…。彼女は目の前の舅共々にこの店の主に対しても、自身の内心にむらむらと急激に湧いてくる怒りを感じていた。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-05-26 05:47:30 | 日記

お休みのお知らせ

風邪を引いたようです。2、3日お休みします。...

    今日は黄砂も収まるのでしょうか、先日洗車してきたのに、また洗いに行かないといけないのかなと、一寸うんざりです。洗車したら傷が目立っていたので、傷の理由が分からず、原因不明なのが嫌ですね。
    ところで、昨年もこの時期風邪だったのかと驚き、体調が悪くなる時期なのだと感じました。(言い訳のよう😅)
    皆様も気を付けてくださいね。よく聞くように季節の変わり目が堪える歳なんでしょうか、梅雨前です、こちらはね。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-05-22 09:27:23 | 日記

マルのじれんま 34

 マルはミルから紫苑さんの事を頼まれた時、細君を失くした彼の寂寥感漂わせる悲壮な状態について、何とかならないだろうかと相談されていました。それ以外でも、彼は直接紫苑さんから彼等夫妻......

    今日のお天気は、ぱっとしませんね。雨も降るのでしょうか。
    風邪の具合は大部良くなりました。今日は予定が有りましたが、既にキャンセルしました。具合の悪い時は、こちらも出掛けないようにしないと、向こうでも迷惑ですよね。こちらのコロナも拡大傾向ですしね。😌

今日の思い出を振り返ってみる

2021-05-21 05:08:26 | 日記

マルのじれんま 33

 「私は僧侶の身ですから…、」マルは内心緊張しながら表面澄まして答えました。「女人の事については私の口からは何とも。」こう言ってから、彼はここで漸く上手く答えられたと、ほっと胸を撫......

    今日は早起きでした。昨日ゆっくり寝たせいでしょう。体調も少し楽になりました。
    思い出を振り返ってみる、今日の分が既に来ていたので、今朝早々とアップです。今年の本編、うの華3の続きの方は、やはり今週はこれでお休みの予定でいます。😌