Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(77)

2018-05-22 09:38:03 | 日記

 『そうだ、金色を私の一番好きな色にしておこう。』

私はこの瞬間そう確りと決めると、うんとばかりにお日様を見詰めて頷きました。そして目を細めると太陽を指さし、自分の決意を表明する為に「お日様大好き!」「金色大好き!」と大きく口に出してにっこり笑いました。

 と、丁度その時です、湧いて来た疑問を確かめようとして、今年ガキ大将になった従兄が叫んでいる彼女に近付いて来ていました。そして、彼女の言葉を聞き取り、そのふやけたような幼い笑顔を見て取ると、片方の眉毛を吊り上げ含み笑いをしました。その後彼は、急に彼女の言葉に引き込まれたようにすいっと彼女に近付くと、

「…ちゃん、君もしかしたら、太陽を自分の物だと思ってない?」

と如何にも神妙な顔をして尋ねるのでした。

 勿論彼女はこっくりと頷きました。その後も彼女は夢見がちな瞳をしてその目に夕日を映すように見詰めながら、「お日様がね、」そう言うと、「私に味方してくれる、とても綺麗なものだと気が付いたから。」と嬉しそうに、たどたどしく自分の気持ちの変遷を従兄に説明するのでした。

 彼が如何にも年上らしい素振りでふんふんと頷き従妹の説明を聞き終えると、彼女はここで感極まったというようにほぅっと溜息を吐きました。

 「それでね、私、世界で一番太陽が好きなの。」

彼女はあどけなく幸福そうな笑顔を頬に浮かべて従兄の笑顔を見詰めると、彼の理解を得る為に口にしました。すると、従兄はふんふんと頷き、笑顔のまま訳知り顔で、さも意地悪そうに彼女に言いました。

「でも、太陽は君の物じゃないよ。」

君の味方でも無いし。それに、太陽は、奇麗は奇麗だけど…、と、彼はそこで言葉を切って一旦彼女から顔を背けました。この先彼を待ち受けている可笑しさを予想すると、彼は堪らなく可笑しくなり、胸に湧いてくる笑いを堪えながら、心の準備をする為に少し時間を置いたのでした。


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