Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

美湾

2017-12-23 11:43:49 | 日記

 『私には男性との良い思い出があるのよ。』

つまらない外国人のおばさんに見えるでしょうけれど、私にはもう異性とのよい思い出があるのよ。若い坊やにお付き合いしてもらわなくてもいいのよ。そんな事をにこやかな余裕の眼差しに乗せて、私は彼に伝えてみるのでした。

   現在、もう私はこの時の彼の様子をあまりよく覚えていません。彼は私の余裕たっぷりの様子に意外だったようです。が、私が見つめる彼の瞳の中には、どうやら彼にも何かしらの女性から受けた恩恵があるような柔和な優しい光がありました。私に限らず女性に対してよい意味での信頼感、好意、好感があり、その胸の内に親切心があるのだ、と伝わってくるような眼差しに彼の瞳が変わるのを私は感じたのでした。

 そこで私の方が意外な気がして、年若い子に思いやりの気配りをされた感じでした。私は一瞬彼に気を取られると、自分の足元がお留守になり乗っていた岩から足を滑らせてしまいました。無事に帰国するためには怪我をする訳にはいきません。何とかバランスを取って事なきを得ました。この時の私は案外放心状態に近かったかなと思います。

 思ったより確りしていた彼に、距離がありながらじぃーっとそのコバルトブルーの様な瞳を覗き込んでみました。顔も均衡のとれた容貌です。ハンサムです。若いし。…つまり見詰めているだけなら嫌いになる要素が全然無いという事です。

 この時、『彼は私を捕まえるわ。』そう感じました。何故なら、私は美しいものが好きだし、彼は非の打ち所が無い美だったからです。少なくともこの時の私にとってはそうでした。それで、またポンポンと彼が岩を叩いた時、仕様が無いなと私は思いました。私は微笑んで、兎に角彼は何か話があるのだろうと、分からないまでも聞くだけ聞こうかなと思いました。

 そこで最初の1歩を踏み出すタイミングで見知らぬ女性に進路を遮られたのでした。何だか間の悪い話です。私は彼から逃げ出すというよりも、この2人の間に入ってきた女性への嫌悪感から、この場にいて彼女と何かしらの関わり合いを全く持ちたく無いと考えると、せっせと後をも見ずに帰国の方への道を踏み出したのでした。

   


最新の画像もっと見る

コメントを投稿