Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

マルのじれんま 49

2020-06-16 09:58:34 | 日記
 やれやれ、マルは自身の部屋に戻る途中溜息を吐いていました。が、その顔は穏やかに微笑んでいました。久しぶりに昔の愛妻、スーの顔を思い浮かべたのです。一時は思い出したくもない、誰からも触れられたくない彼の記憶でした。

『こんな風に心療されるんだなぁ。』

マルには何だか意外に思えました。シルの治療ファイルを、彼当てに送信されて来た物を彼は何度も見てはいました、が、結果として現れた事のみ、彼が必要な個所のみの端的な報告でしたから、それぞれの個々に行われた具体的な治療、その主だった内容に付いては殆ど知らないマルでした。また、これ迄心療の現場という物に居合わせる機会無く来たマルでもありました。

 所謂、『彼女の企業秘密』という物なのだろうと、彼は思いました。感応者の彼女独特の治療法なのだろう。艦隊の相談員が皆同様の心療方法を施している訳ではないはずだ。彼は推論しました。

 してやられたなぁ。『彼女のシュミレーションにまんまと上手く填まった訳だ、私は。』。マルは苦笑いしました。なかなかのやり手だなぁ、彼女は。そう感心してから、自分の部屋に戻ったマルは、現実に約束していた地球人の紫苑さん、彼との釣りに出かけるべく準備に取り掛かり始めました。

 『本番はボロ等出さないように念入りに学習しておかないとな。』

彼は地球上の「釣り」の項目について、自身が取り零していたデータを確認し始めました。

「美味しい魚と料理法について、細部に至るまできちんと調べて置こう。」

こう呟くマルの母星では、水辺の生き物は高級食材、大層なご馳走に当たる物でした。彼自身も幼い頃から漁をして、それらを自ら料理して宴の共とすると、皆で愉快に食したものです。

 「差し詰め、あのシュミレーションの中の私はシル自身だったんだな。」

ふふふ…と、彼は含み笑いすると悪戯っぽい色をその明るい緑色の瞳に浮かべました。如何やら彼は何か思い付いた様子です。

 一方その頃シルは、彼女の仕事部屋で自身のドクター・マルに対するカルテをまとめていました。そして一瞬、シュミレーション上の釣りの場面を思い浮かべて身震いしました。

『やはり、当分は地球上に降りない方が身の為ね。』

赴任してからまだ短期間でしたが、彼女は地球上の任務でダメージを受けたこの船のクルーの、各々に違う問題を心療で解決しながら、しばしばこの様に身震いすると同じ文句を呟いているのでした。

マルのじれんま 48

2020-06-16 09:20:36 | 日記
 そうだろうか、ドクター・マルは思いました。彼女と出会えた事は幸福だったんだろうか?彼女のものだった自分は幸福だったんだろうか?、自分の人生であの時代は幸福な時代だったのだろうか。確かに彼女は類い稀なる美貌の持ち主だった。自分の事を真実愛してくれた。そうには違いない、だけれども…。

 「今日はこのくらいにしましょうか?。」

深く考え込んでいたマルの耳に、紫苑さんの明るい声が響いてきました。今日はこのくらい?。はて、何の事だろう。マルは自分の目に映る紫煙さんの顔に、自身の気持ちを集中させると見直してみます。すると、不思議な事に紫苑さんの笑顔が幻のように揺らいで見えました。『これは、如何した事だ!。』、自分は疲れているらしい。そう思うマルは目を擦り、再び紫苑さんを見詰め直してみました。

 「あれっ!。」

マルは目の前の顔がシルに変わったので驚きました。彼は改めて集中してシルの顔を見詰めてみます。が、明るく微笑んでいる彼女の顔が、再び紫苑さんに変わる事は有りませんでした。

「シ、シル。君が?、君だったのか!。」

彼はシルの向こうの風景、その周囲、と、キョロキョロと室内の風景を見回してみます。見覚えのあるシルの診療室、その落ち着いた調度品や室内装飾。するとパッと照明が明るくなり、マルの目はその部屋を隅々まで隈なく照らす白光に目が眩みそうになりました。彼は思わず目を瞬きました。

 「おいおいこれは、」

私は君の治療中だったのかい⁉。一呼吸置くと、ソファーに座っていたマルは思わず目を丸くして驚き、放心したようにシルの顔を見上げました。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-06-16 09:14:15 | 日記

梅雨空に思う 4

 すると2人は目をぱちくりとした感じに変わりました。彼等は心中何やら考えているような顔付になり、私がそのままじーっと2人を観察していると、上の子は曖昧で確信の持てない表情と状態にな......

 良いお天気です、空気もカラッとしているようで、窓から入ってくる風も爽やかです。何だか清々しい気分です。1つ問題が解決すると、さっぱりとした気分になりました。