Jun日記(さと さとみの世界)

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梅雨空に思う 4

2019-06-15 17:00:22 | 日記

 すると2人は目をぱちくりとした感じに変わりました。彼等は心中何やら考えているような顔付になり、私がそのままじーっと2人を観察していると、上の子は曖昧で確信の持てない表情と状態になりました。振り返って下の子に話し掛けると、何やら事態を確認している様子です。

 それで私は、『事はこれで解決した。』そう確信したように感じました。私は笑顔になりました。

「ねぇ、私と直接約束の話をしたのじゃ無いんでしょう。」

してやったりという風に明るくなった私は、自分は彼等と約束して無いという確信を持って、晴れ晴れとした笑顔を彼等に向けました。すると、それ迄物静かだった年下の子の方が

「いや、さっちゃと直接約束したよ。」

と言い出したのです。それ迄のその子は上の子の陰に隠れて、物静かに笑顔を浮かべていただけだったのですが、何だか顔を曇らせて暗く淀んだ雰囲気に包まれてしまいました。そして私と直接話して約束したと言うと、上の子に向かって私が嘘を吐いているのだとさえ口にしている様子でした。そんな向こうの遣り取りの様子が私にも伝わって来るので、私の顔も曇ってしまいました。折角事は解決したと思ったのに、自体は益々混迷してしまいました。

 私は自身の考えが尽きて困り果ててしまいました。万策尽きるというような状態でした。しかも、私が嘘を吐き通す気だという様に下の子が上の子に言っている様子も酷く気に掛かりました。が、この時点になると、私の方でも相手が余りにも自分に対して理不尽な言いがかりをつけている様に感じられて来るのでした。

 『嘘をついて私を困らせたいのかな。』

意地悪しているんだろうか?そんな風に感じられるのでした。昨年まではあんなに仲良くやっていたのに、親戚の子なのにどうして訳の分らない言いがかりをつける様な事をするのだろうと、悲しく思うと同時に静かに怒りが湧いてきました。

 『約束か…。』

全ての事の起こりはこの2字の言葉から始まっているのだ、そう思い返すと、私は自身の心の内の約束ボックスを目の前に思い浮かべました。そして目の前にある現実の、振り返って私を見る親戚の子の猜疑に満ちた目と、その奥に沈んで暗くなった雰囲気の子の様子を暫しもう1度じーっと観察すると、

『親戚でさえこの体たらく、他人はもっとだろう。』

と考えました。『約束などしなければこんな事にはならないのだ。記憶違いや何かの誤解があったにしても、元々約束などしなければこういう事態にはならないのだ。』と考えると、この時点で私は、もう約束など決してしないわと決心しました。そして脳裏に浮かべた自分の約束ボックスをぺシャっと自らに押し潰したのでした。

 この時決心しただけに、私はこれ以降誰とも約束はして来なかったのでした。約束の言葉を口にする事無く来たのでした。人生に係る様な重大事では尚更の事約束などしないのですが、簡単な日常の上での約束事でさえ、「約束だよ。」と念押しするように口にした事が無かったのです。


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