Jun日記(さと さとみの世界)

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マルのじれんま 48

2020-06-16 09:20:36 | 日記
 そうだろうか、ドクター・マルは思いました。彼女と出会えた事は幸福だったんだろうか?彼女のものだった自分は幸福だったんだろうか?、自分の人生であの時代は幸福な時代だったのだろうか。確かに彼女は類い稀なる美貌の持ち主だった。自分の事を真実愛してくれた。そうには違いない、だけれども…。

 「今日はこのくらいにしましょうか?。」

深く考え込んでいたマルの耳に、紫苑さんの明るい声が響いてきました。今日はこのくらい?。はて、何の事だろう。マルは自分の目に映る紫煙さんの顔に、自身の気持ちを集中させると見直してみます。すると、不思議な事に紫苑さんの笑顔が幻のように揺らいで見えました。『これは、如何した事だ!。』、自分は疲れているらしい。そう思うマルは目を擦り、再び紫苑さんを見詰め直してみました。

 「あれっ!。」

マルは目の前の顔がシルに変わったので驚きました。彼は改めて集中してシルの顔を見詰めてみます。が、明るく微笑んでいる彼女の顔が、再び紫苑さんに変わる事は有りませんでした。

「シ、シル。君が?、君だったのか!。」

彼はシルの向こうの風景、その周囲、と、キョロキョロと室内の風景を見回してみます。見覚えのあるシルの診療室、その落ち着いた調度品や室内装飾。するとパッと照明が明るくなり、マルの目はその部屋を隅々まで隈なく照らす白光に目が眩みそうになりました。彼は思わず目を瞬きました。

 「おいおいこれは、」

私は君の治療中だったのかい⁉。一呼吸置くと、ソファーに座っていたマルは思わず目を丸くして驚き、放心したようにシルの顔を見上げました。

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