Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

マルのじれんま 39

2020-06-02 11:02:41 | 日記
 実際、パネル操作だけで後は手間無しコンピューター任せ、シルはここでもすぐに1コースの地球人、日本人仕様のおもてなし料理を完成させました。

 パチパチパチ、彼女は拍手喝采!します。キャッキャとはしゃぐと自画自賛して、彼女はお盆の上に彩りよく仕上がった川魚料理を見詰め、目を細めて眺め渡すとその出来栄えを堪能しました。

 さて、湯殿の2人は如何したでしょう。彼女は2人が風呂から上がるのを待つ間、客間の準備具合を再確認する事にしました。万事抜かりは無いかしら?、何しろ地球上に降りて来たのはこれが初めて、彼女は机上の知識だけでこれ迄を準備したのです。何か落ち度がありなしないかと心配で居ても立っても居られない状態といってよいのでした。

 「早くミルが来てくれないかしら。」

地球上の事では経験豊富な同僚、ミルに今迄の彼女の準備を確認してもらい、その上で太鼓判を貰いたいシルなのでした。

 「良い湯加減でしたなぁ。」

紫苑さんが言い出せば、「全く、内の姪は何でも抜かりが無いですからなぁ。」と、ドクター・マルこと円萬さんが返しました。『本とに、私に取っても良い湯加減だった。』とマルは内心思います。地球人と自分の間隔が似ているなんてちょっと意外に思うマルでした。いやしかし、これも何かのプログラミングの結果なのかもしれない、そう考え直しながら、彼は如何にも喜々として嬉しそうだったシルの笑顔を思い浮かべました。今度彼女を一緒に、ここへ入浴に誘ってみようかな、そんな事を考えるマルでした。が、そうすると、宇宙船の副長、チルの押しの強い笑顔が彼の瞼に浮かんでくるのでした。

 『ま、いいさ、これで。彼女も喜んでいたし…。』

ここでこの一見気のよさそうな野蛮な星人と、共に湯浴みするのも何かの縁なんだろう。彼はそう思うと、弟のエンや姪達の顔が次々に彼の瞼に浮かんできました。そうして次には姪の顔に面影の重なる彼女達の母親、ウーの顔が浮かんで来て、その顔がにっこりと笑うとマルは身震いしました。

「おや、これはいけない。」

紫苑さんが言いました。円萬さんは確か、お風邪を召しておいでのようでしたね。そう言ってから、彼は徐に頭に畳んで載せていた白い手拭いを手に取り、それを開いて彼の口と鼻を覆うと、

「私はこれで、十分に温まらせていただきました。では、御先に上がらせていただきます。」

目だけにっと笑うと、彼は上がり湯をして脱衣室の扉の向こうへと姿を消すのでした。

 そんな紫苑さんの仕草に、マルはふと太古の感染予防か何かか、そんな知識を学んだことが合ったような気がするなと、おいおい、人をそんな黴菌みたいにと、妙にむくれてみたりするのでした。

『まっ、洒脱な人なんだよな、彼も。』

そう思うマルは、やはり紫苑さんという地球人を気に入ってはいるのでした。

マルのじれんま 38

2020-06-02 10:17:17 | 日記
 来た来た、シルは笑顔になりました。ここランドリー室になっている1室で、彼女はそこに有るシューターの出口から、紫苑さんの衣類が洗浄され整えられて出て来るのを待っていたのです。

 先程彼女と別れたドクター・マルが、風呂場の脱衣室に着いて、そこに置かれていた紫苑さんの濡れた衣類をその場所に有るシュータ入口に入れると、こちらの部屋のシュータ出口にその衣類が達するまでに、それらは洗浄され滅菌乾燥されるときちんと整理整頓された後に此処へとつつが無く出て来るのでした。

 この様に、シルにすると全く手間いらずで1つの任務が完了する訳ですから、彼女は待ってましたとばかりに浮き浮きした笑顔で荷物を受け取ったのです。

「これで一仕事終了!。」

こう口にすると、彼女は清潔に仕上がった荷物以上に真っ新な輝く笑顔になりました。そうして、彼女は紫苑さん用の荷物をひょいと抱きかかえると、それらを同じ室内にある白いアイロン台の上に置きました。この様にこの部屋には如何にもという様にアイロン台や物干し竿など配置してあります。それ等は皆このランドリー室の室内用インテリアになっているのでした。

「次はおもてなしね。」

シルは続いて、客のもてなし料理に取り掛かるべくこの基地の厨房へと向かいました。

 一見寺の造りのこの基地で、しかし厨房の造り勝手は普通に宇宙船と同じ形、同じ仕様になっていました。彼等に地球人と同じ料理や調理の仕方が出来る訳が無かったからです。