*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第7章 メルトダウン再び」を複数回に分け紹介します。16回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介
「あとは、どうやって原発への逆風を防ぐかですな。とにかく、せっかく再稼働させた原発を止められないようにしないと・・・新崎の問題にとどめておく、ということです。フクシマよりも今回の新崎の事故のほうが酷そうですが、そうやって持ちこたえれば、所詮は程度論ですから、フクシマ後と、手順は同じでしょう」
そう日村は淡々と語る。
小島も満足そうに日村の言葉に続いた。
「状況によっては、またすぐに計画停電で、電力が足りないというキャンペーンを打ちますよ。さすがに、新崎が事故を起こしても電力が十分に足りてるってわけにもいかないですから」
「そうですね」と、日村も相槌を打つ。
「それから、附則の規定を足掛かりに、発送電分離は当面、先延ばしってことでお願いしますよ。こんな状況じゃ、国民の原発事故の記憶が薄れないと、原発推進策はとても実施できないでしょ」
そう小島は日村に要求する。
発送電分離の法案は、相次ぐ再稼働のなかで、すんなり可決、成立していた。そして附則の規定だけが、発送電分離を阻止する電力の足掛かりだった。
「まあ、状況次第ですけどね・・・」このときばかりは日村が口を濁す。「それよりも、心配は選挙でしょ」
この夏は、少なくとも参議院の改選が来る。
「とにかく、候補者へのテコ入れをしてもらわないと。大泉元総理が一気に勢いづいてくるでしょうから」
「さすがに、こんな感じじゃ『原発推進』なんていったんじゃ、とても勝てないですよね」と小島は嘆く。
「大泉対策は進んでいるんですよね」と、日村が確認する。
「ええ、仕込みは進んでいますけどね、ふふっ」
小島は余裕の表情を見せた。
「とにかく肉を斬らせて骨を断つ、ってことじゃないですかね。2度目の事故が起きた以上『脱原発』といわないと候補者は勝てない。でも『即ゼロ』とだけはいわせない。チラチラ計画停電をかまして、いま動かしている原発を止めると計画停電になりますよ、と脅すんです」
そう日村が知恵を付けた。
「候補者に、恩着せがましく、『脱原発といっていい』と割り切るんですな。許すんですな。『でも、即ゼロとだけは約束しないでください』ということですか?」
と、小島が日村の方針を確認する。
「その通りですよ」
日村はニヤリと微笑んだ。
「・・・そして、当選後には、『脱原発』のタイムスパンの問題にすり替える」
日村は自信満々だ。
「それなら、いまの政権だって脱原発依存ですから、抽象的には、ほとんど同じラインにまで戻せますね、選挙後は・・・」
小島は安堵の表情を見せ、そして続けた。
※続き「第7章 メルトダウン再び」は、4/28(火)22:00に投稿予定です。
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