*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第7章 メルトダウン再び」を複数回に分け紹介します。15回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介
(27)
新崎原発の格納容器の爆発で官邸のオペレーションルームが騒然とするなか、日村と小島が示し合わせたように部屋を出てきた。2人の家族は誰よりも早くフライトチケットを手配し、成田や羽田から海外に飛び立っている。あとは安心して仕事に専念できる、というものだ。
2人は官邸2階のホワイエの木のベンチに並んで座った。建物のなかでありながらも陽光が差し込む、普段であれば長閑な場所だ。いろんな人から見られるところだが、だからこそ、誰が見ても、まさかこれからの日本を左右する謀議が行われているとは思わない。意表を突いた密談場所であった。
「まずいことになりましたな・・・」
と小島が語りかける。
「でも、まずいといっていても仕方がないから、これからの対策を考える、ということでしょ」
日村はすぐに、小島のいわんとすることを言い当てる。経産省と関東電力、立ち位置が違うといえども、2人は、世の中の流れに付和雷同して流される側ではなく、積極的に流れを読み、手を打っていく人間だ。時代に流されるのではなく、時代の流れを作り出す側という点で共通している。
「ちょっと、お互いに講じていく対策を整理しておきましょう」と小島。危機の際には初動を誤らないことが大切なのだ。日村はそれに応える。
「まず、被曝限度を引き上げないとどうしようもない。速やかに住民の被爆限度を年20ミリシーベルトに、作業員は年50ミリシーベルトから年500ミリシーベルトに変更するよう、政府内で指示を出しますよ。省令事項だから、やる気になれば、即日でできる。非常事態ってことで、有識者に諮るのは後伺いだ」
小島が満足そうにうなずく。
「それは政府にしかできないから、日村さんにお任せいたします。500ミリシーベルトなら2時間半は作業できる。多少吐き気を感じるくらいですよ、どうってことないです。脱毛は300ミリシーベルト、皮膚やけどは5000ミリシーベルト、全身に浴びると死ぬのは7000ミリシーベルトくらいですから・・・事態が進行したら、もっともっと上げてもいいですよ」
小島は恐ろしい言葉を並べ立て、日村の対処方針を裏書する。
本当は、小島のいっていることは、急性の確定的影響のことである。事後的に、何年も経ってから生じる、甲状腺がんや白血病といった確率的な影響について、小島はまったく触れていない。
※続き「第7章 メルトダウン再び」は、4/27(月)22:00に投稿予定です。
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