*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。10回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介
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2月の仙内原発再稼働、それに続く3月の電力自由化法案の附則で示された原発推進路線で、統一地方選挙のある4月第一週のNHKの世論調査では、加部政権の支持率は10ポイント下がり、33%となった。一般的に政権の支持率は2割を切ると危険水域といわれる。
特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認、原発再稼働、原発推進で、もともと加部政権と親和的ではない、いわゆる進歩派は、ほとんど政権支持から離れてしまっている。大規模な金融緩和をテコにデフレ脱却を狙う、「カベノミクス」という経済政策の成果に陰りが見えてきたことも、それに追い打ちをかけた。
しかし、この国民の3分の1という支持は根雪のように固い支持層であり、日本経済が大幅に暗転しない限りは、これ以上大きく離れないだろう・・・NHKから密かに生データを入手した官邸は、そう分析していた。
大泉元総理が顧問を務める再生可能エネルギー推進会議は、独自に候補者を立てての選挙活動はやらないとしていたものの、全国の統一地方選の候補者のなかから脱原発を公約に掲げる候補に対し、独自に、推薦を発表していた。希望する候補者には、お日様と大泉らしき似顔絵が書かれたシールを交付し、選挙ポスターに貼って宣伝することを許していたのだ。
こうした動きに対して官房長官は、会見で大泉の動きについての所感を問われ、
「エネルギー政策は地方選の争点にはなり得ないですから」
と、冷たく言い放っていた。
会長が政権によって政治任用されたNHKも、この統一地方選挙に際し、政党の党首でもない1NPOの動きであるとして、大泉元総理の言動をまったくといっていいほど報じなかった。
たしかに、地方議員にも首長にも、エネルギー政策に影響を与えるようなツールがないことは事実である。しかし本当は、地域の住民にエネルギー選択の自由を与えず、地方自治体の関与を認めない国のエネルギー関係の法律の、その規定自体がおかしいのである。地域のことは地域で決めるという地方分権の理念が正しいのであれば、地域で消費するエネルギーは、地域で決められるはずだ。
日本人は与えられたルールを疑うよりも、与えられたルールの範囲内で考える性癖があるといえよう。
選挙結果はどうだったか? 投票行動において政策を考慮する投票者は全体の1割・・・大泉元総理率いる再生可能エネルギー推進会議の活動も大きなうねりとなることはなく、シールが付されたポスターの候補者に一定の票の上積みをしただけで終わった。
特筆すべきは難波であった。4年前は、改新の党と公命党が選挙協力を行い、府市ともに難波改新の会が圧倒的な第一党となっていたが、今回は保守党と公命党の選挙協力で、難波改新の会の候補者の当選数はいずれも1桁と、ほぼ壊滅した。
これを見て浮足立ったのは改新の党の国会議員である。このまま国政選挙を迎えれば、難波改新の会の二の舞だ。党代表の越本が原発について相変わらず明確な立場を表明しないことも、改新の党の国会議員を苛立たせていた。
もともと越本は、難波府市エネルギー戦略会議を立ち上げ、大井原発再稼働の直前までは、政府の原発再稼働に最も懐疑的な立場を表明していた。それなのに、多い原発再稼働の直前に急遽、再稼働容認に転じ、それ以降、党の迷走が始まっていた。
原発推進の老年の党といったん合流し、分裂・・・結びの党と合流した改新の党であるが、統一地方選での壊滅を前に、党所属国会議員は「やっぱり原発即ゼロ派」と「中長期的脱原発派」に割れていた。
※続き「第6章 再稼働に隠された裏取引」は、4/2(木)22:00に投稿予定です。
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