原発問題

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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45)

2014-06-10 22:49:38 | 【原発ホワイトアウト】

**『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。**  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45)

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 から紹介

(45)

 年の瀬は典型的な冬型の気圧配置となった。爆弾低気圧ともいわれる急激な天候の変化が日本列島を襲った。

 12月28日の仕事納めから3日連続で激しい降雪が続き、日本海側の山沿いでは、一気に5メートル超の積雪となった。海沿いは積雪量が少ないと一般的には言われるが、平野部でも積雪は2メートル、海岸線沿いでも積雪は50センチメートルを超えた。

 仕事納めが終わり、発電所の人員も最小限の態勢となった。大晦日の31日、昼時は一時暖かくなり、雪が雨に変わったが、夕方に再び冷え込みが厳しくなると、積雪の上に降った雨の水分が雪を凍らせていった。

・・新崎原発の高台にある、非常用電源者の車庫棟の入り口も、50センチメートルの積雪で埋まり、夕刻からの厳しい冷え込みで、表面が硬化していた。 

 普段であれば、構内で除雪車を稼動させるところだが、正月休みなので、業者は帰してしまっていた。発電所では、東栄会に所属する地元業者と除雪車の稼動を契約しているのだが、当該業者は正月に当たり態勢を縮小させていた。


 この業者は、幹線道路の除雪作業も地元自治体から請け負っていたため、新年を迎えるに当たり、原発の周辺の住民が無事に初詣に行けるよう、幹線道路の除籍を優先していた。

 それでも積雪は、態勢を縮小させた業者の除雪能力を超えていたため、新崎原発周辺の幹線道路は、通行する自動車のスタッドレス・タイヤにより、圧雪路面が磨き上げられ、鏡面のようにツルツルになっていた。

 スパイク・タイヤやチェーンを付けた車が一定程度走っていれば、路面はツルツルに鏡面化したりしないが、新崎県でももう、ほとんどの車が、冬にはスタッドレス・タイヤを使用していた。

 大晦日の夕方は、交通量自体は多くなかったものの、年末年始が故郷や自宅で過ごすために慌ただしく移動する車が多く、路面の状況と相まって、幹線道路や高速道路も軒並みノロノロ運転となっていた。


 新しく公表された規制基準は、テロ対策として、原発そのものを24時間武装した警官で警備することや、いざという場合には自衛隊が出動することなどが定められていたが、原発の敷地外の対策に関しては、一切定めていなかった。

 原発は膨大なエネルギーを発生させるので、つくられた電気を送電線で送り出さなければ、エネルギーが蓄積されることになる。

 仮に、送電線に支障を来し、発電した電気を送り出せないことになれば、原発自体をスクラム(緊急停止)したとしても、外部電源か非常用電源かで冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする・・・・。

 その送電塔は、電気事業法の定める施設基準に適合するように建てられていたが、送電線などの電線路の基準自体は1964年に法律が制定された当時から大きな見直しはなされていない。特段の技術の進歩もないローテクの分野だからだ。

 東日本大震災の際ににも鉄塔が倒れるといった事故はあったが、電線路の規制基準の見直しという話にはならなかった。あれだけの大地震でも倒れたのは数本だったから、という理屈である。

 仮に見直すということになれば、カネを新たに生み出さない電線路への投資でコストアップということになるし、その影響は全国に波及する。ただでさえ原発の稼動停止で石油・LNG購入のコストアップを迫られていた電力会社としては、できるだけ避けたい投資であった。

 さらに、そういう電線路の施設基準の厳格化といった提案を言い出すインセンティブが、そもそも原子力規制委員会にはなかった。

 なぜならば、原子力の安全規制の部分は、フクシマ事故で経済産業省から独立したが、原子力と関係ない電気工作物については、相変わらず経済産業省の所管のままだったからである。自分の所掌でない事項に対して、行性は常に無策だ。役人が自分の縄張りしか守らないことも、万人が承知している通りだ。

 このように、民間施設としては考えられるすべての防備を施している新崎原発だが、そこから送り出される電気が通る送電塔は、無防備に、むき出しにされたまま、大雪のなかで寒々と立っていた。

 一応、鉄条網で足元には囲いが施され、「立入禁止 高圧電線 危険」との表示はあるが、誰が監視しているわけでもない。

 フクシイマの三度のメルトダウン以降、保安上の観点から、国土地理院の最新電子国土基本図データには送電線の情報が提供されなくなってはいた。しかし、それ以前に発行されていた2万5000分の1の地図には、送電線の位置が正確に記載されていたし、国土地理院も利用者サービスの維持の観点から、引き続き旧式の2万5000分の1の地図をインターネットで提供し、世界中の誰もが、どこからでも、無料で閲覧することが可能となっていた。


 新崎原発で発電された電気は、北新崎幹線と南新崎幹線という二系統の50万ボルトの高圧電線で、それぞれ約200基の鉄塔を介して、関東電力のエリアに送られていた。

 自然災害であれば、二系統のどちらも支障を来すという可能性は著しく低いと評価されていたが、自然災害以外の災害はおこらないという「性善説」に立った考え方であった・・・・。

続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(46) ※2回目の紹介

 


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