新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

奈良・信貴山へ

2008-03-20 | 勢山社特派員だより
ポカポカ陽気に恵まれた3月中旬、勢山さんと、二人のお弟子さんと共に信貴山(しぎさん)を訪ねた。
今回は、信貴山成福院さんのお堂に、勢山社で制作された欄間を取り付けることが目的だ。

聖徳太子が西暦587年に開山した信貴山(標高437m)は、大阪と奈良を隔てる生駒山地の南端にあり、本堂の朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)をはじめ、3つの塔頭寺院など多くの堂塔が整然と立ち並んでいる。
山内は多くの木々に覆われ、舞台づくりの本堂からの眺めも素晴らしい。


天女が浮き彫りにされた欄間の材は木曾檜で、彩色と截金が施され思ったとおり美しい仕上がりだ。
浮き彫りを熱心に見つめ、勢山さんの説明に耳を傾ける前管長さんと奥様の姿が、この日を待ち焦がれていたいたことを物語っていた。
    

いよいよお堂への取り付けだ。

ノミや、のこぎり・ドライバーなどの工具が出され彩色や截金の道具も用意し、まるで臨時工房のよう。
3枚の欄間は、取り付けられる場所によってそれぞれ微調整が行われた。

その作業の一つ一つが私には珍しく、ついシャッターを押すのに夢中になってしまう。

一枚目が正面に取り付けられた時、言葉にこそ出さなかったけれど、私は何んともいえない想いで胸がいっぱいになってしまった。
欄間が納まるべきところに落ちついた瞬間、「帰ってきた」とさえ感じたのは何故だろう。とても不思議な感覚だった。

最後に彩色と截金の調整を行ない、全ての作業が無事完了だ。
緊張感がありながら、小春日和に包まれた穏やかな時間は喜びの空間へと変化した。
    

実は初めて信貴山を訪れたのは6年ほど前。
もとはといえば、NHKドラマの「聖徳太子」を見た後、信貴山が太子ゆかりの地であること、また勢山さんにとっても深いご縁があることを知り、その彫像も見たくて奈良への小旅行を計画したのだ。

宿坊に泊まったのはその時が初めてで、たくさんの灯篭の灯がことのほか美しかったのと、ゆったりとした気分が忘れられない。翌朝早起きをして参加した本堂での厳粛な朝のお勤めや、舞台から臨んだ朝陽もはっきり憶えている。

でもその時は、まさかこの日のような経験ができるとは思ってもいなかった。

それぞれの喜びを表しているかのような青空の下、いつまでも見送ってくださった奥様の姿が印象的だったし嬉しかった。
             

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