新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

修理仏の調査に同行して

2019-07-24 | 勢山社特派員だより

お仏像の状況調査をするために訪れたお寺さんは、まるで山奥のような環境でした。

今回はお像たちの状態を見極め、修理の方法を模索するための重要な調査であるとの事なので、こういう場を初めて経験する私は作業が始まる前から緊張気味です。

お寺に到着すると、さっそく境内の一角にあるお堂へ。
調査に必要な道具を運び込み準備が完了です。

お弟子さんと一緒に勢山さんの手助けをしながら、調査の様子を記録し撮影するのが私の役割。
1日頑張らなくては!と自分に言い聞かせました。

まずお仏像たちのお住まいであるお厨子の現状を把握するために、傷み具合を確認しながら細部の寸法を測った後、いよいよお仏像たちの調査が始まります。

お厨子の扉を開けると中央に弁財天像が鎮座されており、その周りには毘沙門天像と大黒天像、そして15童子像などが配されていました。
毘沙門天と大黒天は弁財天の化身で、童子は様々な弁天様の福徳を表現しているそうです。
 

お厨子との一体化を図ったような立体的な岩座に載ったお像もあれば、独立した台座に載っているお像もあり、様々な工夫で弁財天の世界を表現していました。

制作年代が不明とは言え江戸期なのは確かとの事。
一目見ただけでも像の傷みは激しく、壊れる事無く厨子から取り出せるのか・・・と、ちょっと心配でしたが、経験豊かな大仏師の渡邊勢山さんによって1体ずつ丁寧に取り出す事に成功しました。 



取り出されたお像は、正面・斜め・横など、様々な角度から写真を撮った後、損傷の現状や修理箇所・寸法を記録し作業が進みます。



間近でお像を観察すると、お身体の一部が欠けていたり持物が無くなっていたり、そっと触れただけで彩色部分が剥がれ落ちてしまったりと、やはり作業は緊張の連続です。

作業の中でも記録は思ったより大変で、専門用語の多さに困惑しスムースにいかない場面もありましたが、後で確認する時にわかりやすいようにと、丁寧に書くことを心がけました。

最後に残った弁財天像は台座が崩れ落ちそうでヒヤヒヤしましたが、無事作業が終わり気付くと、すでに6時間程が経過していてビックリでした 



時折雨音をたてて降っていた雨がいつの間にか止み、辺りが明るくなり、ウグイスの鳴き声と川のせせらぎが涼を運んでくれて、そんな環境に癒されました。

ほっとしている間もなく、再度お厨子の中に戻す大事な作業の始まりです。
これまで取り外した20体のお像たちを元の位置に戻さなければならない・・・と思ったら、また緊張してしまいました。

接合の膠(ニカワ)が切れ、バラバラ状態になった弁財天像の台座や岩座をどういうふうに元に戻すのか・・・。
私の心配をよそに、勢山さんの工夫で無事元通りの位置に戻られた時には、姿や形を次世代に繋げ続ける事の大変さをつくづく感じました。

ご自分の代でできることをしておきたいという、ご住職の思いに応えるような修理方法を探るための今回の調査でした。
実際の損傷状態から文化財的修理の現状維持に徹するか、仏像として次の世代に繋げるかで修理方法も大きく変化するそうで、悩みは当分尽きないようです。

修理前の状況調査は初めての経験で緊張の連続でしたが、労を惜しまない勢山さんの姿勢が多くのお像を救い、また新たなお像の誕生につながっているのだな~と、実感した1日でした。
 
弁天堂の20体のお仏像たちは、どのように生まれ変わるのでしょうか。
楽しみです。


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