新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

お仏像誕生! 勢山社ノミ入れ式

2016-07-31 | 勢山社特派員だより

私の手元にある小さな3つのお守り袋の中には、良い香りがする檜の木片が入っています。
この木片は、仏像造顕所勢山社舞子工房で6月から7月にかけて行われたノミ入れ式での、これから誕生するお仏像の大切な御分身です。

ノミ入れ式にはこれまでも何度か参加していますが、今年のように短期間に集中することは初めての経験でした。

ノミ入れ式は、建物で言えば「地鎮祭」に相当するそうで、これから仏像になる御用材を鎮め、彫造期間や設置作業の安全等を祈願する儀式との事。
関係者が御用材にノミを入れ、ご自身で削り取った木片を御分身として大事にして頂く事で、誕生する「仏像」と強いご縁をもって頂く・・・。これが勢山さんの考えであり、勢山社のノミ入れ式です。

もちろん、宗教儀式ですからそれぞれの宗派で様々な約束毎があり、4月以降4回ほど続いた舞子工房でのノミ入れ式も毎回様子が異なり、準備をするお弟子さん達も気が抜けない様子でした。

平成28年、7月28日午前11時より、豊島区南池袋の日蓮宗仙行寺様が発願された「釈迦如来像」のノミ入れ式が始まりました。

新たに造顕される坐像釈迦如来像の大きさは呼び寸二丈像。 床面からの大きさは5メートル近くにもなるとの事。通常一丈六尺(丈六仏)より大きな仏像になると“大仏様”と尊称されますので、池袋に大仏様が誕生する事になります。

いつものように祭壇前に完成予想図が貼られていましたが、平面図でも大迫力なのにこれが立体になったらと思うと、そのお姿に圧倒されてしまいました。

これほど大きなお仏像なのに、仙行寺様と大仏師である渡邊勢山さんの出会いはつい一ヶ月ほど前との事。必然があっての出会いなのか、波長が合ったのか、像容の決定など全てにおいての打ち合わせがスムースに進み、この日を迎えたようです。
勢山さんによると、ノミ入れ式までの最短時間を記録したとの事でした。

参加されたのは、仙行寺様3名と勢山社関係者のみでしたが、儀式の内容は厳かで大仏造顕への想いが伝わるものでした。

儀式後の御挨拶では、「池袋の大仏として親しまれ、誰もが自然に手を合わせられるお釈迦様になっていただきたい」と、仙行寺ご住職様。
又、勢山さんは「師から受け継いだ技を駆使し、歴史に残る像を誕生させると共に、次世代に仏師の心と技をつなげて行きたい」と抱負を語っていました。


大きなお像を造顕するためには、技術的な知識や技法が重要な事は当然です。でも、それらを生かせる設備や素材がなければ実現する事はできません。

初めての訪問でしたが、ご住職様や副ご住職様は舞子工房に満足されたようで、これから目指すそれぞれの夢について旧知の友のように勢山さんとの会話が弾み、その様子に私まで嬉しくなってしまいました。

新築される南池袋仙行寺本堂ビルの一階で、雲上に安座される大仏様にお目にかかれる日が待ち遠しいです。


ところで、ノミ入れ式は彫造の際に必ず行うものではありませんが、勢山社では今年に入り、4月上旬に福井の曹洞宗勝福寺 「涅槃像」、6月上旬に港区曹洞宗常林寺「閻魔大王像」、6月末には岡山市日蓮宗妙勝寺「釈迦如来四菩薩像」のノミ入れ式が行われ、10月には、藤沢市の浄土宗善然寺の半迦観音像のノミ入れ式も行われるそうです。

新しいお像をお迎えする理由は様々でも、共通していることは発願される方々の篤い想いと、数々の不思議なご縁が続くことでしょうか。

6月末に行われた、岡山の妙勝寺様ノミ入れ式もご家族でのご参加でした。
儀式中の祈願文に、「宗祖800年記念事業として客殿を一新し、釈迦四菩薩像をお迎えする事になった。渡邊勢山師にご縁を頂いた事に感謝し、安全な作業と無事の完成を祈念・・・」というような内容の言葉が耳に飛び込んで来た時には、胸が熱くなり涙がこぼれそうになってしまいました。

何度経験してもその都度緊張の連続で、特に写真撮影に関しては反省することも多くあまり余裕がないのですが、これから誕生するお像たちの出発の場に立ち会えることの幸せを実感する瞬間です。



どのような場面でも、ご縁を頂くには色々なパターンがあると思いますが、最近はインターネットでの情報収集が当たり前なのはいうまでもありません。

新しいお仏像制作工程やお納め・開眼法要の様子など、また修理のお仏像の工程などをまとめた「勢山社特派員だより」や「社寺めぐり」などが、情報提供のお役にたっていることもあるようなので、これからも頑張らなくてはと思っています。

ちなみに、勝福寺「涅槃像」は今秋、常林寺「閻魔大王像」と妙勝寺「釈迦如来四菩薩像」は2017年に、仙行寺大仏様「釈迦如来像」は2018年に完成予定です。