新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

久しぶりの勢山社だより

2020-06-30 | 勢山社特派員だより

仏師の渡邊勢山さんが手がけられた、修理像の脱衣婆(だつえば)と新作像の懸衣翁(けんねおう)のお納め日は喜びの日にふさわしい五月晴れとなりました。

美しい緑に囲まれた九品仏浄真寺の境内は、まさに都会のオアシスです。
若葉色のモミジに覆われた総門近くの閻魔堂では、閻魔大王が奪衣婆と懸衣翁のお帰りをお待ちでした。

閻魔堂までの参道は新緑の重みで大きく枝がしなり車が入れません。
何往復もしてお像や台座などを運び、ご住職により胎内銘札が納められ所定の場所へ。
      

新型コロナウィルス対策のため拝観中止となっていた閻魔堂はこの奉安作業のため臨時に開堂し、その場に居合わせた参拝の方々はめったに無い良いご縁に恵まれたと感動ひとしおのようでした。

閻魔大王の両脇にそれぞれのお像が無事安置され、見守るご住職をはじめ関係者の方々も安堵されたご様子でした。


閻魔大王といえば「嘘をつくと閻魔さんに舌を抜かれるよ!」が定番でしょう。
幼い頃、叱られた時のこの言葉には震え上がるほどの効果がありました。

でも、閻魔大王の配下である奪衣婆と懸衣翁の役割については知らない方が多いかもしれません。

脱衣婆は三途の川で亡者の衣服を剥ぎ取る老婆で、剥ぎ取った衣服を懸衣翁が大樹に掛け、その枝のしなり具合により罪の重さをみきわめ死後の処遇を決めるとの事。
やはり怖い存在は時代や世代に関係なく必要なのかもしれません。

閻魔堂では、お賽銭を入れると閻魔大王の10種類の教えが流れます。 
どんなメッセージが流れるのか興味津々で、何度かお賽銭を入れ手を合わせました。

ところで、浄真寺といえば九品仏の愛称でお馴染みです。
本堂と対面した3つの大きなお堂(阿弥陀堂)にはそれぞれ三体の阿弥陀如来像が安置されていますが、残念ながら新型コロナウィルス感染症対策で扉は閉められていました。

3年に1度、5月5日に行われている二十五菩薩来迎会(おめんかぶり)も来年に延期されたとのこと。
早く元どおりの生活に戻れるよう願わずにいられません。

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また、2月23日には神奈川県藤沢市の浄土宗善然寺で半跏観音菩薩像の開眼法要が執り行われました。 

この御像は中学2年生で亡くなられた勢山さんの妹さんのために、ご両親が勢山さんに彫像を託されていた観音菩薩様です。

平成28年10月29日に舞子工房でノミ入れ式が行われ、この時元気にノミを振るわれたお母様でしたが、一安心し妹さんやお父様に報告に行きたくなったのか、帰路に体調を崩されこの年の暮れに他界されてしまいました。

ご親族による法事の後、知人関係者(勢山さんの応援団?)の方々が集まり、観音菩薩像の開眼法要が行われお像がお披露目されました。



像高1200ミリ、ヒノキの一木から彫り進められた観世音菩薩像は彩色と截金(キリガネ)が施され「明量観音」と名付けられ、渡邊家の菩提寺である善然寺庫裡玄関に奉拝の場所が設けられ、訪れる方々をお出迎えするそうです。



緊急事態宣言が解除され一カ月が経っても、三密を避けなければいけない生活はしばらく続きそうです。
よほどの用事でなければ外出しないという日常にもだいぶ慣れました。

人の気持ちは外へ向きがちですが、こんな時だからこそ自心を見つめることが必要なのかもしれません。

心を満たしてくれるものは、身近なところにもあるはずです。
もし思い通りにならない事があっても、大切なことを見失わないようにしなければと今更ながら思っています。

現状を受け入れもう少し用心して、秋になったら閻魔さんのメッセージを聞きに紅葉が美しい九品仏浄真寺へ。
そして明量観音さんにも会いに行ければと思っています。