新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

書写山円教寺の鬼追い会式(えしき)

2008-01-25 | 勢山社特派員だより

ロープウェイで4分ほどの書写山は標高371メートル。山の上は自然があふれていた。
常緑樹があるせいか、冬でも寂しい感じがしないのが嬉しい。

山上にある円教寺は西国霊場第27番目の札所で、西の比叡山ともいわれている。
広大な境内にあるお堂の一つ摩尼殿(まにでん)では、年頭の初観音の日に修生会(しゅしょうえ)=鬼追い会式(おにおいえしき)が行われる。
資料には、入場に制限はないが午後1時より2時間閉堂する、とあるのでその間は出入りが出来ないようだ。いったいどんなふうに行われるのだろうか。

ロープウェイを降り進むとすぐに鐘楼があった。時々聞こえていた鐘だ。自由に突いてよいらしいので、私も打ち鳴らしたが「ご~ん」と響き良い音色。音の出るものは何でも鳴らしたい性分(?)なのでまたしても嬉しい。

仁王門までの参道の両脇には西国札所の33観音(ブロンズ)像が立ち並び、木立の中の観音さまは気持ち良さそう。しっかり癒されてしまい、私はしばしシャッターを押すのに夢中になった。
    

いつの間にか見晴らしの良い場所に出た。眼下には姫路の街並が広がっていてスッキリ晴れていれば淡路島までもが見渡せるらしい。

仁王門をくぐりさらに進むと摩尼殿が見えてきた。
摩尼殿は、京都の清水寺と同じ舞台造りで下から見上げるとかなりの迫力だ。荘厳なお堂に5色の幕が華やかさを添えている。

12時を過ぎた頃から急に人出が多くなり、おそろいの帽子をかぶった園児(?)らしき子たちや、小学生連れのお母さんたちの姿が目立つ。
    

あれ?金曜日なのに?と思い近くにいた人に聞いてみたら、なんと書写山の校区の小学校はこの日2時間で授業が終わるとのこと。「下から1時間かけて子どもたちと歩いて来たんですよ~」とお母さん。そして「鬼さん怖いの?」に「ぜんぜん怖くない!前にも来たし」と子どもたち。

地域に密着したお寺の行事!こういうのって良いな~!
ほのぼのとした雰囲気に、昔はこうだったな~、と自分の子どもの頃を思い出してしまう。

午後1時を少し過ぎ儀式がはじまった。
大勢の僧侶が入場し、読経などが続き散華が巻かれたが、子どもたちが多いのに堂内は意外と静かだ。
だが、断ち割り削って箸にして使うと健康になる、との言い伝えがある「鬼の箸」が配られた時はさすがに賑やかだった。誰もが縁起物の箸を手にいれたいのだろう。

1時間ほどの儀式が済みいよいよ鬼の入場だ。修生会はもともとは夜に行われていたとのことで、ここで全ての扉が閉められ堂内は闇に包まれた。

半鐘にあわせ、左手に松明を右手に鈴を持った赤鬼が入ってきた。松明には赤々と炎が上がり、右手の鈴は一定のリズムを刻んでいる。続く青鬼は剣を持ち、共に力強く足を振り下ろしながら舞い堂内を何度も巡った。

よく見ると床には汗でか足跡が付き、少しだが湯気さえ出ていたのが、この動作がかなりの体力を必要とする事を物語っていた。

この鬼の役は、円教寺を開いた性空上人と円教寺に対し、千年を超え代々世話をしてきた梅津家の仕事になっているとのこと。
千年・・・すごい!過去と未来を繋げている人の力のエネルギーを感じる。

堂内に煙が立ち込めた。時々炎が燃え上がるのは松明を上に向けるからのようだ。暗闇の中の煙と炎と、時たま灯る撮影のためのライトが交じり合い、幻想的な雰囲気をかもし出している。

子どもたちは相変わらす静かだ。真っ暗で様子は見えないが、その集中振りには感心させられる。
    

天下泰平や五穀豊穣を祈り、悪鬼を追い春を呼ぶのが修生会だ。
赤鬼は毘沙門天の化身、青鬼は不動明王の化身で、「鬼」といわれてはいても実は鬼ではなく、山の守護神と資料に書かれていた。

秘仏の如意輪観世音菩薩像と、国重文四天王像の開扉が同時に行われた摩尼殿において、年の初めの儀式が終わって堂内からは大勢の参加者がいなくなり、いつの間にか静寂が戻っていた。

「どうだった?」と、もう一度子どもたちに聞いてみたかった。
    


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