新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

榧(カヤ)の木の製材に立ち会って

2007-10-05 | 勢山社特派員だより
「木曽の池田木材さんに行くので一緒にどう?」と、声をかけてくれたのは仏師の渡邊勢山さん。“榧”(カヤ)の検分が目的の一つとの事でした。

榧はイチイ科の常緑針葉樹で、古くから願いが叶う木として社寺の境内などで大切にされているそうです。成長がとても遅いため堅く緻密な木肌を持っており、彫刻用材としても珍重されていますが入手がとても困難。そんな貴重な材の事のせいか、電話の声がこころもち弾んでいるようでした。
 
勢山さんが彫像に使う材のほとんどが木曽檜。仏像にふさわしい材が入ると、真っ先に声をかけてくれる池田木材さんは本来は木曽檜のエキスパートで、勢山さんにとってとても頼りになる良きパートナーです。

“納入社寺めぐり”取材のため、新作像や修理像などを見る機会はあっても、材を選ぶ場面に立ち会うのは初めてです。チャンス!とばかりに、元新聞記者のTさんと共に同行させてもらうことにしました。

木曽・上松(あげまつ)はあいにくの小雨模様でしたが、「早く対面したい」という勢山さんの希望でさっそく土場(どば=木材を一時的に集積するところ)へ。長さ4m、根元で1mを少し越す太さの榧はさすがに大きく、すごい迫力です。

色々な角度から観察し、一部を削って木質や色を確認している勢山さんは満足げでした。
    

大きなフォークリフトの後輪が浮いてしまうほどの重さの榧は、そのままでは製材機に乗せることができず、仕方なく半分に切ることになりました。
榧は材質が堅いためチェーンソーでの作業も一苦労。最後には斧が大きく振り上げられたのにはびっくりです。
    
 
檜の製材がほとんどの池田木材さん。これほど大きな材を扱う事は珍しいのか、他の場所で作業していた職人さんも応援に来てくれました。
 
二等分にされた榧の切り口は予想どおりとても良い状態で、クリーム色の美しい木肌に一安心。あたりには榧独特の甘い香りが漂っています。
私も嬉しくなってしまいました。

榧は檜に比べ収縮が激しくて割れやすく、彫像の際寄木には適さないので、一木として使われることを念頭において製材することになりました。
いったいどういうふうに?製材とは丸太を角材などに加工するということぐらいは解るのですが、具体的には何一つ想像できません。

いよいよ製材が始まります。
原木の移動や製材機へのセットはほぼ自動化されていますが、木の癖を正確に読み取り精密な鋸の操作をするのはベテランの職人さん達。勢山さんの目も真剣そのもの、工程ごとの入念な確認と細かな指示がリズム良くハンドルマン(製材機の運転手さん)に伝えられていました。
    

5時を過ぎ、自分の仕事を終えた職人さんたちが集まってきました。真剣な表情で作業を見守る中、光沢のある美しい木肌が現れると全員が満面の笑顔になり、我が事のように喜んでいたのがとても印象的でした。
    

いつのまにか日が暮れ、製材開始から5時間が経過。
作業を最後まで見届け、「おつかれさま!」とニコニコ顔で別れを告げた池田木材の皆さんに感謝です。

大割(おおわり)に製材された榧は、勢山社でしばらく雨に打たれ風を通し十分な乾燥を経た後、御仏像に生まれ変わるそうです。

樹齢400~600年の木に、勢山さんによって新たな命が吹き込まれ、さらに長い年月に亘り人々を見守っていく・・・。そんな像が生まれる前の大切な場面に立ち会え、私とTさんは興奮気味。勢山さんもとても嬉しそうでした。

どんな姿の御仏像に出会えるのでしょう。その日がとても楽しみです。

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