新JOOKOのふぉとエッセイ

     東海道53次探検ウォークや、四季折々の出来事
     そして仏像造顕所勢山社関連など、写真もお楽しみに♪

それぞれの鑿(のみ)入れ式

2008-12-13 | 勢山社特派員だより
2008年11月20日、八王子観栖寺さんの「千手観音像」「地蔵菩薩像」「毘沙門天像」の鑿入れ式が行われました。

観栖寺ご本尊の「釈迦三尊像」は、本堂落慶に伴い2003年に渡邊勢山さんにより造顕・奉安されています。その後5年の時を経て、古くは観音の寺としての観栖寺(八王子三十三観音二番札所)のご本尊ともいえる三尊像の復興が実現することになりました。

童謡「夕焼け小焼け」の舞台にもなっているという、八王子西部の丘陵地に位置する観栖寺から、これまでにも多くの仏像を彫像している勢山社舞子工房までは、片道7時間ほどの道のりです。
僧侶5名と壇信徒、総勢28名の方々はまだ暗い早朝5時に出発したそうなので、さぞお疲れ・・・と思っていたら、皆さん元気に到着されて一安心。空は秋晴れで琵琶湖もくっきり。慶びの日にふさわしい日よりが何よりでした。
 
準備が整い、いよいよ鑿入れ式が始まります。


初めて経験することに戸惑いはつきもの。儀式の前に、勢山さんが造顕の趣旨と鑿入れの仕方を説明すると、少しほっとしたような空気が流れたのは気のせいでしょうか。

会場や参加者、そしてご用材の清め祓いが行われお祝いの散華が撒かれ、読経が続きます。千手観音をはじめとする三尊像の無事完成と、参列者の安全を祈願する観栖寺ご住職の感慨深げな様子が印象的でした。

一連の法要の後は、待ちかねた鑿入れの儀式です。ご住職や副住職に続いて、鑿を手にした参列者の皆さんは少し緊張気味。それでも勢山さんの介助に安心したのか笑顔がこぼれるシーンもあり、とてもほほえましく、ファインダーを覗く私も嬉しくなってしまいました。削ったご用材の破片は、お守り袋に入れてそれぞれ大切そうにお持ち帰りに。これも勢山さんならではの配慮でしょう。
    

仏師が制作にとりかかる前に、関係する方々が用材に鑿を入れ、そのお姿を無事に顕していただけるよう、また造顕中の関係者一同の健康と安泰を願うのが鑿入れ式です。
「新たに誕生するお像に、より一層の親しみをもち見守って欲しい」と仏師の渡邊勢山さん。完成した新しいお像に出会うこと以上に、この儀式に参加する機会はめったにないからこそ、勢山さんは、この鑿入れ式をことのほか大切にしているそうです。

私自身、制作のための打ち合わせや、完成までの途中経過、また納入風景などの写真を撮ってはいても、これまで鑿入れ式に同席の機会がありませんでした。ところが今年はなんと3度も!

ご先祖様の菩提を弔うことをはじめ、感謝を込めて今後の発展を願うなど、新しい像が生まれる背景は様々でしょう。それぞれの関係者の方々は鑿入れ式に参加することで、材や制作過程の事などを知り、直接手に触れることができます。だからこそ、新たなお像を身近に感じることができるに違いないと、3度の鑿入れ式に参加して強く感じました。

準備は儀式の前日から始まります。
紅白の幕や五色の幕を張ると制作の場である工房は儀式会場に変身。ビロードの布で覆われた原木壇の上に像の姿が描かれた材が安置され、実物大の図面が貼られました。

また祭壇の中央に紅白のお餅を、磨きこまれた漆塗りの三方には季節の果物や野菜などを供え、左右に花が飾られると準備は完了です。加えて、お客様のために制作途中や修理中のお像がお出ましになりました。
 
鑿入れ式終了後、そんなお像たちの前での勢山さんの解説に熱がはいり、皆さんも熱心に耳を傾けていました。

瞬く間に2時間が過ぎ名残を惜しみながら帰路に。それぞれがどんなお土産話を持ち帰られたのでしょうか。三尊像の完成は2年後の秋です。
    

コメントを投稿