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東京都情報公開審査会 答申第422号 マンション新築工事に関する給水計画のための事前協議資料

2008年09月05日 | 確認検査員の氏名/建築士の氏名
諮問第510号

答申


1 審査会の結論
 「(仮称)マンション新築工事に関する給水計画のための事前協議資料(平成19年○月○日)」の一部開示決定のうち、建築士の氏名及び登録番号については開示すべきである。

2 審査請求の趣旨
(1) 審査請求の趣旨
 本件審査請求の趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下「条例」という。)に基づき、審査請求人が行った「(仮称)○○マンション新築工事に伴う開発事業に関する文書一式(決裁文書を含む。)」の開示請求に対し、東京都水道局長が平成20年1月4日付けで行った一部開示決定について、その取消しを求めるというものである。

(2) 審査請求の理由
 審査請求人が審査請求書及び意見書で主張している審査請求の主な理由は、次のとおりである。

ア 建築士法等の一部を改正する法律により、建築士法第6条第2項に「国土交通大臣は一級建築士名簿を、都道府県知事は二級建築士名簿及び木造建築士名簿を、それぞれ一般の閲覧に供しなければならない。」という規定が追加され、公布後2年以内に施行される。建築行政共用データベースシステムを利用し、一級建築士名簿、二級建築士名簿及び木造建築士名簿の検索、閲覧ができるように整備がされている。したがって、建築士の氏名、資格登録番号、登録日などの情報は、条例第7条第2号ただし書イに該当し、開示されるべきである。

イ 審査請求人が、東京都知事(都市整備局市街地建築部建設業課)に建築士事務所の登録申請書を開示請求したところ、本件マンションの土地利用計画図を作成した建築士の氏名と資格登録番号、建築計画概要書を作成した一級建築士事務所所属のすべての建築士の氏名と資格登録番号が開示されている。

ウ 本件文書が、本件処分で開示されたものがすべてであるかどうか、再度、審査会から水道局に確かめてもらいたい。審査請求人は、他の文書の存在を主張するものではないが、以前の建築確認の際に協議がされている可能性も考えられるからである。

3 審査請求に対する実施機関の説明要旨
 実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、次のように要約される。

(1) 土地利用計画図(平成18年○月○日)内に記載された氏名は、個人に関する情報で、直接特定の個人を識別することができる情報であり、条例7条2号に該当する。

(2) 建築計画概要書(2007年○月○日)の設計責任者、設計部長、グループ長及び担当者氏名は、個人に関する情報で、直接特定の個人を識別することができる情報であり、条例7条2号に該当する。

(3) 建築計画概要書の建築士の氏名及び建築士登録番号は、個人に関する情報で、直接特定の個人を識別することができる情報であり、条例7条2号に該当する。
 なお、同情報は、次のとおり、条例7条2号ただし書イに該当しない。
 建築士の氏名及び建築士登録番号は建築計画概要書(建築基準法施行規則(昭和45年建設省令第27号)別記第3号様式)に記載することとされ、当該文書は建築確認申請時に提出し、特定行政庁は、当該文書に対し閲覧の請求があった場合は閲覧させなければならないこととされている(建築基準法(昭和25年法律第201号)第93条の2)。
 しかし、当該文書は、東京都給水条例4条1項に基づく給水装置新設工事の申込みに先立ち、事前調査の段階で任意に提出された参考資料であり、本件工事について、本件公文書開示請求のあった平成19年12月4日時点において建築確認申請は行われていないことから、建築基準法により閲覧させなければならないこととされている建築計画概要書とは異なるものである。
 このことから、建築士の氏名及び建築士登録番号は、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報であるとはいえない。

4 審査会の判断
(1) 審議の過程
 審査会は、本件審査請求について、以下のように審議した。
年月日審議過程
平成20年 3月21日諮問
平成20年 4月 9日実施機関から理由説明書収受
平成20年 4月22日審議(第88回第二部会)
平成20年 5月16日審査請求人から意見書収受
平成20年 5月22日審議(第89回第二部会)
平成20年 6月24日審議(第90回第二部会)
平成20年 7月25日審議(第91回第二部会)


(2) 審査会の判断
 審査会は、審査請求の対象となった公文書並びに実施機関及び審査請求人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。

ア 本件対象公文書について
 東京都給水条例(昭和33年条例第41号)4条1項は、給水装置の新設等をしようとする者は、あらかじめ東京都水道事業管理者に申し込み、その承認を受けなければならないと規定しており、申込みを受け付けた時点から、正式な設計審査が行われることとなっている。一方、この条例に定める手続に関連して、実施機関では水道管管理図を自由に閲覧させるとともに、水道管敷設状況、又は正式な手続の進め方などについて、事業者等からの事前相談に応じているが、本給水条例には、事前相談に関する直接の定めはなく、また、事業者からあらかじめ所定の資料の提出を求めることも承認の要件とはされていない。
 本件審査請求に係る対象公文書は、「(仮称)○○マンション新築工事に関する給水計画のための事前協議資料(平成19年○月○日時点)」(以下「本件対象公文書」という。)であり、事前相談の段階で、事業者が任意に実施機関に提出したものである。そのため、表紙や目次、資料全体の作成責任者の表示は一切なく、市販されている地図のコピー、土地利用計画図、建築計画概要書、配置図、地下一階平面図、一階平面図、立面図、断面図で構成されている。
 審査請求人は、建築士の氏名及び登録番号の開示と、開示された文書が本件対象公文書のすべてであるかどうかを再確認すべきであると主張しているので、当審査会は、請求人の上記主張について審査する。

イ 条例7条2号該当性について
 条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定しており、同号ただし書において、「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。
 これを本件対象公文書について見ると、本件対象公文書のうち建築計画概要書に記載されている一級建築士の氏名及び登録番号は、いずれも個人に関する情報で特定の個人を識別することができるものであることから、条例7条2号本文に該当するものと認められる。
 そこで、条例7条2号ただし書該当性について検討すると、審査請求人は、建築士法等の改正により、一級建築士等の名簿の検索、閲覧ができるよう整備されていることから、建築士の氏名、資格登録番号は開示されるべきであると主張する。
 これに対し、実施機関は、本件対象公文書は、水道給水事業の事前相談の段階で事業者から任意に提出されたもので、建築基準法により閲覧させなければならない正式な建築計画概要書とは異なるものであり、今後提出された資料どおり建築がなされるかどうかも定かではなく、開示請求のあった時点では、建築確認申請は行われていないことを確認して、非開示としたものであると説明する。
 審査会で見分したところ、確かに、実施機関が取得した本件対象公文書は、事前相談の段階で、事業者が任意に提出したものであり、建築計画概要書という名称とはなっているが、建築基準法等に基づく正式な建築確認申請とは異なるものであること、開示請求の段階では建築確認申請が行われていなかったことは実施機関の主張どおりと認められる。
 しかしながら、建築確認申請がなされていない段階であることを前提として、本件対象公文書のうち、市販されている地図のコピー、土地利用計画図、建築計画概要書、配置図、地下一階平面図、一階平面図、立面図、断面図が一部開示されていること、また、一級建築士という国家試験に基づく有資格者としての情報については、建築士制度に対する国民の信頼を回復するという観点から建築士法が改正され、建築士名簿の閲覧がなされることになったことを勘案すると、改正法の施行前ではあるが、本件対象公文書のうち建築計画概要書という名称の資料に記載されている一級建築士の氏名及び登録番号については、法令等により公にすることが予定されている情報であると解するのが相当であり、条例7条2号ただし書イに該当すると認められ、開示すべきである。

ウ 審査請求人の主張について
 審査請求人は、審査請求書及び意見書において、他の文書の存在を主張するものではないが、以前の建築確認の際に協議がされている可能性も考えられるので、本件処分により特定されたものが本件対象公文書のすべてであるかどうか確認すべきであると主張する。
 この点について審査会が実施機関に説明を求めたところ、審査請求人の主張を受けて再度調査したが、本件処分で特定した対象公文書以外に文書は存在しないとのことである。
 前述したとおり、実施機関では給水装置の工事を行う際、条例上、事前の相談を義務付けておらず、相談の有無及び相談内容が、条例に基づく承認手続に何ら影響しないものであること、実施機関による再度の調査によっても文書の存在が認められなかったこと、他の公文書の存在を示す事実もないことを勘案すると、本件対象公文書の特定は妥当なものであると認められる。

 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員)
 瀬田悌三郎、中村晶子、乳井昌史、山田洋

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